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インターネットの匿名性

インターネットの匿名性って、2種類の意味があります.

ホームページの「悲しきネットワーク」の所に置いた文書で、「インターネットとコミュニティ」で使っている『匿名性』と、「匿名投稿の実態」で使っている『匿名』って、かなり意味が違います.混乱されたらごめんなさい.

日常的な『匿名』の意味は、名前が隠されていること、インターネットではハンドル(自分で設定したニックネーム)を使う人が多く、ホームページを作ったり、掲示板のメッセージを書いている人が実際にはどんな人か、ネットにアクセスしただけではわかりません.これが匿名性の第一の意味です.

社会学でいう『匿名性』は、人間の一面、限定された機能でのみ他者とかかわるという意味で、例えば、シュッツの『鉄道員』と『客』との関係のように、『切符を切る』、『金を払う』といった、人の僅かな一面でのみ他者とかかわるという意味です.この時、鉄道員が名札を付けていれば、本名だってわかるんですが、誰もそんなことなど気に掛けません.これが匿名性の第二の意味です.

匿名的な人間関係では、パーソナリティを確立することが難しいといわれています.この時の匿名性は、どちらの『匿名性』でしょうか?

ちょっと考えると、第一の意味だと思われがちですが、本名が隠されていても、一定のハンドルを用いてネット上の人間関係を続ければ、そのハンドルの上に、パーソナリティが確立されることだってあります.ハンドルをころころ変えたり、一人二役をやるなど、不安定な関係を続けると、そうはいかないでしょうけど.

第二の意味での匿名的人間関係の中にパーソナリティを確立することは困難です.

ネットをビジネス目的でのみ使うのであれば、ネットはパーソナリティの確立には役立たないかも知れません.一般に、ビジネスは、人格の一面のみを使って行なわれますので、第二の意味での匿名的関係しか作れませんので.しかし、ビジネスの中にも、暖かい人間関係がないわけではありません.昔の商売、例えば八百屋さんと客との関係は、商売を超えた繋がりだってあったでしょう.ネットのビジネス利用で、そんなことがあり得るのか? これは一つの謎として、残して置きましょう.

匿名的ではない人間関係を確立する要因は、次の3つではないかと考えています.
・ 情報量の多さ:コミュニティの要件である『近接性』ですね。情報量が少なくては、全人格的関係は作り得ません
・ 双方向の伝達:シュッツの言う『彼等関係』を『汝』関係にするってことです
・ 理解と共感:相手の意識を自らの意識の中に呼び起こせなくてはいけません

最後の項目は、文化の違いが問題となります.でも、メッセージが普遍的であれば、文化の壁を超えて、共感を得ることもあるはずです.この日記とホームページでは、そちらの方向を目指すことにしましょう.