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【修正版】電流の作る磁場

前回のこのブログで、電流の作る磁場につきご説明しましたが、少々曖昧な点がありますので、もう少しきちんとした形で書き直しておきます。


前回のこのブログでは、電磁場の4元ベクトル表示についてご説明いたしました。まあ、これ、別に虚数時間でなくても成立する話なのでして、本日のお話も、時間が実数であろうと虚数であろうと成立する話である、ということを事前にお断りしておきます。

まず、前回、ベクトルポテンシャルAというものを定義いたしまして、その時間成分が電気的ポテンシャルφ、つまり、∇φ = E(時間変化のないの場合)で電場が与えられ、空間成分が磁気ベクトルポテンシャルA、つまり、∇×A = Bで磁場が与えられる、というお話をいたしました。

本日は、この部分を、もう少し突っ込んでみたいと思います。つまり、移動する電荷が、何故に磁場を生じるのか、という謎に迫ろう、というわけですね。

まず、単位長さあたりqの電荷を持つ直線状の物体がx方向に延びている状況を考えます。まあ、電線がx方向に延びているわけですね。

で、これが作ります電場は、電線に直角の半径方向を向いており、電線からrだけ離れたところでは
(1) Er = q / (2π r ε0)
で与えられます。

電場は電位(スカラーポテンシャル)φの勾配で与えられます。電線からrだけ離れたところの電場の半径方向の微係数は次式のようになります。
(2) ∂φ/∂r = q / (2π r ε0)

さて、実はこれが速度vで移動していると考えましょう。電荷と同じ速度で移動している座標系から見れば、電場しか存在しません。しかし、静止している座標系からみる場合は、静止座標系に、このポテンシャル場を座標変換しないといけません。

速度vで移動している座標系から見たベクトルポテンシャルは(0,0,0,φ)です。これを静止座標系からみると、そのx成分は
(3) Ax = vx φ/√(1 + v^2)
このr方向の微係数は、(2)式より次のようになります。
(4) ∂Ax/∂r = q vx / (2π r ε0√(1 + v^2))

さて、磁場B = rot Aなる関係がありました。rotという演算は、渦の強さを求める演算で、ベクトル場をある点の周囲に沿って積分した値をその積分経路が囲む面積で割った値の、その面積をゼロにしたときの極限値、に相当します。

まあ、極限値ですとなかなか想像しにくいので、電流の流れる線からrだけ離れた領域の、Δx、Δrの幅で囲まれる長方形部分での積分を求めてみます。そうすると、rの異なる辺の部分だけが積分に寄与し、結局これは、
(5) (Ax + (∂Ax/∂r)(Δr / 2)) Δx - (Ax - (∂Ax/∂r)(Δr / 2)) Δx
= (∂Ax/∂r)ΔrΔx
となります。

で、(4)式を参照しますと、この極限値は次式で与えられ、これが電流q vxの流れる線からrだけ離れた地点での磁場、ということになります。
(6) Bn = q vx / (2π r ε0√(1 + v^2))
ここで、Bnは渦を求めた面に垂直方向の磁束で、電線を中心とする円環状の磁束が生じていることになります。

以上の議論は光速cを1として行っていますので、(6)式は電流 j = q vx の作る磁場の式と、vの絶対値が小さい場合は一致し、まずは、めでたしめでたし、というわけですね。

磁場が生じる原因は、私は、上に示しましたように、4元電磁ポテンシャルの座標変換によるもの、と説明するのがもっとも理解しやすいのではないかと思っております。

でも、物理学の教科書を読みますと、荷電した物体の移動に伴う伸び縮みで説明する記述が多いのですね。

まあ、確かにそのような説明も、嘘ではありません。でも、空間の伸び縮み、というのは、実は見かけ上の効果でして、実際の(と、見てきたようなことをいいますが)4次元空間は伸びもしなければ縮みもしません。

まあ、ここでいたしましたような説明が、磁場の発生原因として、おそらくは、もっとも妥当な説明ではないかと、私は、思っております。


前回のこのブログで、渦を求めるrotが、4元ベクトルの場ではややこしくなる、というお話をいたしましたが、実はこれは簡単なことであることに気がつきました。

渦とは、面内で定義されるものですから、便宜的に書きましたrotXYなどの記法が、実は、本質的に正しいものである、ということですね。これをもう一度書いておきますと、XY平面に対する4元ベクトルの渦の定義は次式で与えられます。(この定義は、いかなる次元の空間であっても成り立ちます。)
rotXY A = ∂Ay/∂x - ∂Ax/∂y

3次元の世界から4元ベクトルの渦を解釈する際、これを3次元空間の特定の方向に関連付けることができます。すなわち空間的な渦、たとえばrotXYであれば、これに含まれない空間成分はZだけですので、rotXYはZ方向に関連付けることができます。また、時空的な渦、たとえばrotXTであれば、これに含まれる空間成分はXだけですので、rotXTはX方向に関連付けることができます。

こういう形で、空間的な渦がBの3つの空間成分に、時空的な渦がEの3つの空間成分に対応する、というわけです。

なお、4つの方向を持つ4元空間に定義できる面の数は、4つのものから2つを選び出す組み合わせが6であって、時間軸を含むものが3、含まないものが3と、ちょうど、磁場と電場の空間成分の数に対応しております。


虚数時間の物理学、まとめはこちらです。