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虚数時間の物理学、さて、量子力学は?

先週まで、時間は虚数的に振舞う、という前提を置くと、相対性理論はどのようになるか、ということを議論してまいりました。まあ、我田引水的に言いますれば、時間は虚数的に振舞うという考え方は、なかなか筋が良さそうである、ということなのですね。

で、そうなりますと、もう一つの現代物理学の柱であります量子力学はどういうことになるのだろう、という疑問が生じるのは時間の問題です。なかでも、シュレディンガーの波動方程式を、時間が虚数的に振舞うとの前提を置いた場合どのようになるか、という点が注目されるのですね。

というわけで、波動関数などちんぷんかんぷんの私ですが、怖いもの知らず、あるいは怖いものみたさで、シュレディンガーの波動方程式に挑戦することといたします。まあ、相当に間違いを書くであろうことは覚悟の上であることを、あらかじめお断りしておきます。

まあ、そんなわけですから、この先書きましたことを無批判に信じ込んだりされないようにお願いいたしますと共に、誤りに気づかれた方がおられましたら、ご指摘のコメントを入れていただければ、非常にありがたいと思います。

参考にいたしました本は仲滋文(なか・しげふみ)著「シュレディンガー方程式」です。この本、薄くて安くて、判り易いか、と思ったのですが、それほど判りやすくもありません。私の愛読書でありますファインマン物理学(5)は、厚いし定価も少々お高いのですが、こちらの方が判り易いような気がいたします。

その他の読みやすい本といたしましては、ポーリングとウィルソンの「量子力学序論および化学への応用」があるのですが、こちらは絶版となっております。これ、文庫版になりませんでしょうかね。

ネット上ではこのページが判り易くて参考になります。まあ、ここにかかれたやり方は、実は、相対論的ではない波動方程式なのですが、普通にシュレディンガーの波動方程式といえばこの形ですし、原子の電子軌道などを議論している限りでは、これで充分であるようです。(こちらも充実していますね)

と、いうわけで、非相対論的波動方程式に限って、ここでは議論することといたします。

まず、シュレディンガーの波動方程式といいますものは、普通の書き方をいたしますと次のようになります。

(1)    i h' (∂Ψ/∂t) = -(h'2 / 2 m) (∂2Ψ/∂x2) + V(x) Ψ

h'はプランク定数を2πで割り返した値であることといたします。普通はhに斜線を入れて表示するのですが、適当なフォントが見当たりませんので、斜線は省略することといたします。(h'と書くことにします)

この式に出てまいりますΨが波動関数と呼ばれるもので、さしあたりこれを求めるのが「波動方程式を解く」こととなります。左辺は波動関数の1次の時間微分にプランク定数と虚数単位を掛けたもの、右辺は、波動関数の2次の空間微分にプランク定数の二乗を掛けて質量で割ったものと、場所ごとに定義されているポテンシャルV(x)と波動関数の積の和、となっております。

この式は空間的に1次元の場合を示したものですが、3次元空間の場合は、2次の空間微分をそれぞれの方向の2次の偏微分の和とする形となります。

波動関数の一つの解は次式で与えられます。ここでexp(x)はexの意味です。

(2)    Ψ(x, t) = exp(i (px - E t) / h')

ここで、波動関数が複素数の形で与えられることから、波動関数は現実の自然界に対応するものではない、と考えられております。そして、波動関数Ψをその共役複素数Ψ*(虚数部分の符号を変えたもの)と掛け合わせた値ΨΨ*は実数となるのですが、これがそれぞれの場所における粒子の存在確率を与える、と考えられております。

先にご紹介したページでは、(2)式は力の作用していない孤立粒子に対する波動関数である、というのですが、これはどうでしょうか。これは、(px - E t) / h' = θとまとめて書きますと、オイラーの公式により、Ψ = exp(iθ) = cosθ + i sinθとなりまして、これと共役の複素数との積は常に1となってしまいます。

実際のところ、この式は、空間の内部に波が充満した状態を示しているのではないでしょうか。孤立状態の粒子であれば、この前にガウス分布などのウインドウが掛かってくるのではないか、と思います。


2018.12.28追記:この波動関数は、粒子上の点における波動関数ということのようです。つまり、そこに粒子があるのだから、存在確率は1で問題ないわけです。追記ここまでです。


さて、次に、時間は虚数的に振舞う、と考えた場合、どのようなことになるでしょうか。この場合は、虚数が出てきてもぜんぜん困らない、ということはあるのですが、それが時間となんらかの関係を持ってくれなければ困るのですね。

で、まずは(2)式の波動関数ですが、運動量は速度と質量の積であり、速度は時間のマイナス1次の次元を持ちますので、時間が虚数的に振舞うといたしますと、この部分には [1/i = -i] が掛かることになります。また、時間tには言うまでもなく [i] が掛かります。となりますと(2)式は次の形に変形されます。

(3)    Ψ(x) = exp(-(px) / h')

ここで、pxは、時間が虚数的に振舞うという前提で書き下した4元ベクトルを意味します。(3)式の驚くべきところは、式の上には虚数単位 [i] が現れてまいりません。

次にシュレディンガーの(非相対論的)波動方程式は、といいますと、左辺の分母に時間が入っておりますことから左辺に [-i] を乗じることとなります。右辺は時間とは関係ありませんのでそのままです。そういたしますと、左辺の虚数単位が消えまして、次のような形となります。

(4)     h' (∂Ψ/∂t) = -(h'2 / 2 m) (∂2Ψ/∂x2) + V(x) Ψ

これまた驚くべきことに、式の上からは虚数単位が消えてしまいました。さて、これを一体どう解釈すれば良いのでしょうか。

以下、つらつらと考えましたことをとりとめもなく書いてみますが、全くの与太話という可能性も大いにありますので、ご注意ください。

まず、シュレディンガーの方程式のほうは、ポテンシャル場に拘束された粒子のあるべき姿を叙述するものである、と解釈すれば良いのでしょうが、そのあるべき姿である波動関数Ψとは一体なんであるのか、という点が問題となります。

波動関数の形といたしまして、(2)式ないし(3)式がシュレディンガー方程式のひとつの解であることは確かなようでして、微分方程式の解というものは積分定数が任意に選べる関係で、とりえる解を線形結合(スカラー倍して加算したもの)がすべて解の候補となります。

で、(2)式の指数関数の中身であります(px) / h'というのは意味深な形をしております。といいますのは、Δp Δx < h'/2というのがハイゼンベルグの不確定性原理でして、これが自然界に対する人間の知識の限界を与えるのですが、指数関数の中身は、運動量と位置の積が不確定性理論が要請する限界に対して何倍あるかを示しているのですね。まあ、情報量、といいますか、、、

電磁波(光子)の場合、波動関数の実数部分が電場であるといたしますと、虚数部分は磁場に相当します。磁場は、普通は電流によって生じるのですが、電場の変化(変位電流)によっても生じます。電場のエネルギーも、磁場のエネルギーも、場の強さの二乗に比例しますので、実数部分と虚数部分をそれぞれ二乗して和をとれば電磁場のエネルギーということになります。

また、時間が虚数的に振舞う、という原理を認めていただけるなら、磁場が虚数部分に現れる、ということも説明されます。磁場といいますものは電場の変化なり電流すなわち電荷の移動によって生じるものです。したがって、磁場の単位は電場の単位に時間の逆数が掛かった次元をもつはずであり、時間が虚数的に振舞うのであれば、電場と磁場は虚実が入れ替わった関係である、ということになります。

では、光子以外の粒子の場合はどうか、ということなのですが、光子(電磁波)のアナロジーで考えますと、二種類の実在のあり方の間を振動している、と解釈されるのではないでしょうか。

熱い紅茶をスプーンにすくって、滴を紅茶の表面にたらしますと、滴が表面を滑って動く現象が観察されます。この現象は、一見したところ、紅茶のしずくが表面に浮かんでいるように見えるのですが、もちろん重力がありますのでそんなことはありえません。

実はこの現象は、紅茶表面で局部的な振動が生じており、一番盛り上がったときに表面から飛び出した滴が見えているのですね。トイレでまれに起こる不快な現象「おつり」と同じ原理であるわけです。

(2)式なり(3)式なりは、速度がゼロの場合も時間方向に波打っておりまして、静止した物体も時間方向の振動を伴います。つまり、物体は、紅茶表面上の滴と同様、実数部分では点いたり消えたりしており、消えたときには虚数として存在するということになります。で、この虚数の意味するところは時間の次元を含むはずであり、変化の速度に対応した何らかのエネルギーとして存在する、ということではないでしょうか。

さらに想像を逞(たくま)しゅうするなら、この変化は場の変化であり、電磁波におけます電場に相当する場は、エネルギー、すなわち質量に対しては重力場であり、一般相対性理論によれば、重力場とはこの空間そのものの歪である、ということにもなりそうです。

(2)、(3)式から、静止している物体の点滅周波数はエネルギー、つまり質量に比例し、粒子質量の観測限界に対する倍率で規定されます。これは、逆の言い方もできるわけであって、点滅しているのだから質量が正確に測定できない、という言い方もできそうです。

ふうむ、以上は、書いている本人もあまり自信がない、与太話の一種ではあるのですが、一応の筋は通っているように思えます。で、これが正しいといたしますと、量子力学を、アインシュタインの求めた完全な理論として記述できる可能性もあるように思えるのですね。

その前提となりますものが、「時間は虚数的に振舞う」という原理だけである、というところが凄いような気もいたします。これは、もう少し検討してみる価値がありそうです。まあ、量子力学を全部書き直す、というのは、途方もない作業ではあるのですが、、、


虚数時間の物理学、まとめはこちらです。最新のまとめ「虚数時間とファインマン氏の憂鬱」も、ぜひどうぞ。