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「涼宮ハルヒの驚愕」を読む

前回前々回に引き続き、「涼宮ハルヒの驚愕」を読み続けることといたします。前回はα側に焦点を絞って読みましたので、本日はβ側のストーリーを少々展開していくことといたしましょう。

以下はネタバレ全開であることにご注意ください。つまり、万が一、これをお読みの方がまだ「涼宮ハルヒの驚愕」を読んでおらず、同書を読む前に内容を知りたくない、と考えておられるのなら、ここでお別れ、ということにしてください。なお、お話の都合上、前々回の繰り返しも多少含まれておりますことをご容赦ください。

念のために、改行を少々入れておきましょう。

もういいでしょうか?

さて、熱に冒されました長門を見舞ったSOS団の面々は、ハルヒと別れたあと、マンション前に集合いたします。キョンが、(さて、持久戦、かな)などと考えておりますと、古泉がキーを操作し、自動ドアが開きます。

キョン:古泉、暗証番号を知っていたのか?
古泉:喜緑さんに開けていただきました。部屋番号を押して、住人に開けてもらう、しごく一般的なシステムですよ

喜緑さんの部屋で、朝比奈さんの淹れたお茶を飲むSOS団の面々。キョンはなぜかのんきな思いにかられます。

キョン:(こうして朝比奈さんの入れてくれたお茶を飲んでいると、SOS団の部室での、あのまったりとした日常となんら変らないように思えるのだが、そういうわけにもいかんのだな。一番頼りになる長門は寝込んでしまったし、俺は全くの普通人だし、古泉に朝比奈さんも、あまり頼りになりそうにもない)
古泉:そんなことはありませんよ。敵ははっきりしているじゃないですか。我々の組織だって、少なくとも、朝比奈みちる誘拐事件のときには、勝利をおさめたこともあるのですよ。未来人と超能力者の連合チームを相手に、ですね
喜緑:長門さんが戦力外となってしまいましたので、私がバックアップを務めます。長門さんには及ばないと思いますけど
古泉:利害の一致する我々、ここは一つ、手を組むことにいたしましょう
キョン:(なるほどー。確かに長門がぶっ倒れて泡を食ったが、良く考えてみれば、それほど悲観すべき状況ではないんだな。こちらの態勢は、さほど損なわれていない。それに、佐々木さんは乗り気ではないし、あの未来人や宇宙人のインターフェースも、全然やる気がなく、チームワーク最悪、だしなあ)
古泉:まあ、そうそう安心していられる状況ではないのですよ。現に長門さんは倒れてしまいましたし、あの天蓋領域がどのような能力を持っているのか、我々にはわかっていないのですから。しかし、一つだけ我々には有利な点があります。それは、キョン、あなたの存在です
キョン:おいおい古泉。お前までその名で俺を呼ぶのか。しかし、俺は一般人だぞ。お前らとは違う
古泉:いえいえ、今回はあなたが鍵です。あなたの責任は重大ですよ
キョン:こらっ、顔近いぞ。息が掛かる。でも、なんで、俺の責任なんだ?
古泉:それはもう、佐々木さんはあなたの友人ですからね。敵対する組織の首領があなたの友人であるということは、ある意味、好都合、といえるでしょう
キョン:う~ん、、、(びんぼうゆすり)それで、俺になにを期待しているんだ?
古泉:佐々木さんに頼んではいかがでしょう。こういうことをしないように。簡単な話じゃないですか
キョン:それがそう、簡単でもないようなのだな、、、
古泉:簡単なことではないくらい、僕にもわかります。ですから、機関は総力をあげて、あなたをバックアップしますよ
キョン:(おい、簡単なのか、簡単じゃないのか)まあ、こうなれば、そうするしかない、か
喜緑:あなたが鍵である、ということは、あのグループの人達も良くわかっているはずです。次に危険が迫るとすれば、あなた
古泉:彼か、彼の弱みとなる人物ですね。妹さんとか、朝比奈さんとかを誘拐して、佐々木さんが首領を務めるよう説得することを強要する、というのは、なかなか良い作戦だと思いますよ
キョン:しかし奴等の狙いはなんなんだ。俺たちはハルヒに振り回されてこんなことをやっているんだが、佐々木さんには何をしようという気もなさそうなんだな
古泉:橘さんが何を考えているかは僕にもわかります。あちらの組織はそういう論理で動いているのでしょう。世界の安定を保つ、そういう意味ではこちらの組織と目的は同じですが、方法論が違うのですね
喜緑:そして天蓋領域の目的は、おそらく、情報の収集
古泉:未来人の目的は、良くはわかりませんが、組織のお偉方は、彼は歴史の改変を狙っているのではないか、という仮説を持っています
みくる:え~! そんなことをされたら、私は未来に帰れなくなってしまいます。でも、それは藤原さん(未来人)も同じですよね。そんなことをして、困らないのでしょうか?
古泉:彼のあの性格のゆがみは、かれの日常がすさんでいることの結果でしょう。そんなすさんだ日常は捨ててしまいたいと、そう考えていても不思議ではありません。そういえば、朝比奈さんは自由にタイムマシンを使えるのですか?
みくる:いいえ、許可が要ります。もう少しレベルが上がれば、自由に使えるのですけど
古泉:ではこう考えたらどうでしょう。あの藤原という男は、自由にタイムマシンが使えるレベルに達している、と。そして、過去を改変して、タイムマシンが発明されない歴史を作り出したら、タイムマシンを使えるのは藤原氏だけ。あらゆることが自由にできることになります。絶対的権力の掌握、これは、何かをなそうという理由に、充分になるのではないでしょうか
みくる:そんなぁ、そんなことになったら、私はこの時代に取り残されてしまいます。そんなの嫌です
キョン:俺も願い下げだな。そんなシチュエーションは。あんな性格の悪い奴に権力など握らせたら、ろくなことにはならんだろう
古泉:大丈夫ですよ。物理攻撃に対しては、我々の組織がプロテクトいたします。実力は実証済みでしょう
喜緑:環境情報操作に関しては、既に、監視と防衛を統合情報思念体に申請しました。自律進化の可能性は統合情報思念体の最大の関心事。これからは、長門さんに加えられたような攻撃は、ブロックされるはずです
キョン:そして俺が佐々木さんを説得する、と。作戦はそれなりに完璧だな。まあ、どうなるかわからんが、やるしかないだろう
古泉:はい、その通りです
喜緑:はいっ、そうです
みくる:よ、よろしくお願いしま~す

と、いうわけで、作戦会議の終った俺たちは喜緑さんのマンションをあとにした。古泉と朝比奈さんも、なぜか俺と一緒に歩き、気づいたときは俺の家の前だ。

キョン:あれ、どうして古泉や朝比奈さんまで、ここに来たんだ? 寄ってくか? ちょっと遅いが
古泉:護衛をしたのですよ。最も効率的に、ね
キョン:護衛?

あたりを見回すと、電信柱の影に、デカのような男が二人、張り込みをしている。中年の男と若い奴。良くみれば多丸兄弟ではないか。そして、俺たちが歩いてきた方向を見ると、タクシーがゆっくりと接近している。助手席に座っているのは、森さん。心強い! 運転しているのは、執事(?)の新川さんではないか。古泉の組織には他に人材はおらんのか、などという突込みは、この際だから遠慮しておこう。このとき、正直俺は、なんとなく頼もしいものを感じたのさ。

キョン:そういうことか。俺と、俺の妹を守っていてくれたのか
古泉;当然です。これは、もちろんこの世界を守るという、純然たる任務からであって、あなたに対する個人的な好意から、というわけではないのですが

で、古泉と朝比奈さんは、新川が運転するタクシーに乗って去っていく、というわけです。

まあ、本日はこのくらいにしておきましょう。まだスペースがあるようでしたら、明日以降もちょこまかと追加することといたします。


この考察は、最終的に『「涼宮ハルヒの驚愕」を推理する』なる文書にまとめました。