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堀江貴文著「99%の会社はいらない」を読む

本日は、堀江貴文著「99%の会社はいらない」を読むことといたします。堀江貴文氏といえば、ご存知ライブドアで一世を風靡した方ですが、証券取引法などの罪に問われて収監後は、大きな会社を興すことはなく、宇宙開発やサロンなどさまざまなプロジェクトを立ち上げておられます。本日は、同書からいくつかのポイントを取り上げ、コメントを加えたいと思います。

1. 日本からイノベーションが生まれない理由

以前、Blogosに次のようなコメントを付けたのですが、日本と米国の経済がその成長という面で大きく異なることに注意しなくてはいけません。

日経平均とDJIの長期チャートを見ると、愕然とする人が多いのではないかと思いますよ。米国の株価が右肩上がりに上昇を続けているのに対し、日経平均は、変動はあるものの、長期的には横ばいなのですね。

だから、株式をひたすら買い続けるというような投資法では、日本株では儲けられません。長期投資に際しても、高いところで売り、安いところで買うというやり方が必須、ということになります。これ、言うは易く、行うは難し、なのですね。
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もっと考えなくてはいけない問題は、なぜ米国の株価が右肩上がりであるのに対して、日本の株価の長期トレンドが横ばいになってしまうか、ということ。

新しい産業に、人・モノ・金が移動する米国に対し、我が国の産業構造が固定的であることが最大の問題でしょう。

この変化を促進するためには、新しい産業に対する政策的な援助も必要だと思いますが、雇用制度を流動的にすることも必要だし、古い産業を必要以上に保護してしまう、天下りという悪癖も根絶しなくてはいけません。

なぜ日本からイノベーションが生まれないのか。堀江氏は、同書43ページで以下のように述べています。

一つは日本の会社には、異端の技術者や経営者が能力を発揮できる環境がないからだろう。会社の中で出世するのは、どちらかと言うと新しいことに挑戦する人間ではなく、無難な選択をする人間だ。

だからこそ、イノベーションは個人が運営しているようなベンチャー企業から生まれることが多い。破壊的とまでは言わないまでも、それなりのイノベーションを起こした会社の方が、新しいことに踏み出せない会社よりも成長する。

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起業家という選択肢は日本でもかなり認知されてきたが、それでもまだまだ「一般から外れた変わった道」という風潮が残っている。

しかしアメリカでは、教育の段階で「人とは違うこと」が推奨される。言ってみれば、人と違うものを作り出す起業家がカッコいい職業として認知されるのだ。

このブログでも以前、「イケハヤ師絶賛:ちきりん*梅原大悟対談「悩みどころと逃げどころ」を読む」という記事で、以下のように書いたのですが、全くその通りだと思います。

今日我が国の学校で教えていることは、みんな同じにしましょう、ということなのですね。これでは、多くの学生をムリゲ―の世界に導いてしまいます。つまり、みんなが同じ事を始めたら、彼らの人生は、激しい競合のなかを生き抜くしかない、厳しいものになってしまいます。

堀江氏のこの記述が正しければ、これは、学生に限らず、我が国の企業もムリゲ―の世界を指向している、ということでしょう。だから日本の経済は成長せず、株価指数も上がらない。米国との差は大きくついております。この先途上国からの追い上げが厳しくなった時、果たして日本は生き残っていけるか、大いに心配になるところです。

2. 人を雇うリスク

前節の記述の少し後、49ページから「雇った社員の違法行為は防げない」と題して、人を雇うリスクと面倒くささについて記述されています。そして堀江氏が提示する解は「人を雇わないこと」なのですが、これはどうでしょうか。

確かに、人を雇わない形でのビジネスについて、堀江氏はHIUの例をあげて解説されています。そのような事業形態もないわけではない、と私も思います。しかし、「人を雇わない」という縛りを課してしまいますと、ビジネスの幅は非常に狭くなってしまうのではないか、と私には思われるのですね。

米国で成功しているITビジネスも、そのほとんどは、人を雇う形で事業展開しています。幅広い分野で新しいビジネスを起こすためには、人を雇うことは避けられないことであるように私には思われます。

ではなぜ、堀江氏はこんなことを書くのか、その理由はなんとなくわかるような気がいたします。

堀江氏がかつて経営した会社で、社員に不正が横行していた、ということは事実なのでしょう。そして、どんな会社でも、社員の不正を完全に防ぐことは困難です。でも、不正を見つけ出すシステムを社内に作り上げることは不可能ではないし、大きな問題を起こさないような運用は、どんな会社でも行っていることです。

問題は、堀江氏が経営した会社で特にこれが問題となった、という点ではないかと思います。私が考えておりますその理由は、トップの人徳、つまりは堀江氏の倫理観に問題があったのではないか、と疑っているのですね。

企業を経営する以上、トップは倫理的でなくてはいけません。そうでない場合は、部下もこれをまねてしまいます。つまりは、倫理に背く行為に走る社員が続出してしまうのですね。

このあたりは、堀江氏も普通の人間であって、自らに問題があったことはなかなか認めがたい、ということではないでしょうか。でもその結果、人を雇わない、などという縛りを自らに課してしまいますと、将来の可能性の幅を狭めてしまう、非常に残念なことであるように、私には思われました。

3. 成功への道

同書120ページ以下には傑作な記述があります。あまりにも面白いので、以下ちょっと引用しておきます。

確かに、夏野さんや成毛さん、佐渡島君を真似するのはハードルが高いかもしれない。それでもイケダハヤトさんやはあちゅうさんのような普通の人をパクるのはそんなに難しくない。

ここで語られている夏野さんはiモードの生みの親である夏野剛氏、成毛さんは元マイクロソフト日本代表の成毛眞氏、佐渡島君は敏腕編集者でコルク代表の佐渡島庸平氏で、確かに皆さん異能の方です。一方のイケダハヤト氏やはあちゅう氏は、特別な才能があるわけでもない普通のブロガーですから、真似をするのはさほど難しくはない。

普通の人にとって、彼らの真似をするなどという行為にはなかなか踏み切れないのは事実なのでしょうが、でも、さしあたりイケハヤ師みたいなことは誰でもできるわけで、高知以外の僻地で似たようなことをする手だってあるだろう、と堀江氏は書きます。そして、話題はあの寿司アカデミーを巡る炎上事件へと発展してまいります。このお話に関しましては、ポピュラーな話題でもあり、ここでは省略いたします。

要は、これまで常識とされていたやり方以外にだって、よく考えれば色々な道がある、要はそれに踏み切ることであって、失敗を恐れずに試行の数を増やせば成功する可能性はそれだけ高まるのだ、ということです。

この堀江氏の言が正しいなら、イケハヤ師の「まだ東京で消耗しているの?」「早くこっちにおいで」といった煽りは全く正しいということになるのですが、この堀江氏の言を真に受けて北海道の稚内などに移住することは、よく考えたほうが良いように私には思われます。無計画にこんなことをしてしまいますと、下手をすると命にかかわりますので。

全てを読み切らなければことが始められない、などという考えはどうかしておりますが、何をするにも、一応の計画というものは必要でしょう。そして、行けそうであるなら、100%の見通しがなくともまずは一歩を踏み出すこと、これが成功の秘訣というものなのでしょう。

今の時代、パソコンも安くなりましたし、ネット接続も安価に容易におこなえるようになりました。多額の借金を背負ってやるのでなければ、失敗してもいくらでもやり直しができます。この手の試みであれば、大いにやったらよいのではないでしょうか。

4. 勝てるゲームを自分で作る

第5章「会社に属しているあなたへ」は、イケハヤ師の主張と似たような内容ですが、こちらは少々奥が深い内容となっております。自分が面白いと思うことをやること、他人に迷惑をかけることをいとわないこと、自分を嫌う人間が多くても気にせず、自分を好んでくれる人間を相手にすればよいこと、相手の心理を読むのではなく、自らをさらけ出すこと、などなど。

確かに、他人の土俵で戦うことは、そうそう簡単なことではないのですが、自分の土俵で戦えば、勝てるチャンスもそれだけ多いということでしょう。

そして最後に、飼い犬を目指すのも悪いとはいわないが、どうせなら野生のオオカミを目指してほしい、として稿を閉じております。このあたりは、イケハヤ師の主張と同じであるといえるでしょう。

5. 私の場合

同書を読みましての私の感想は、まことにごもっとも、というのが正直なところですが、日本企業に全く可能性がないかといえばそんなこともなく、日本企業を再生する道は引き続き探るべきであると思いますし、一部の企業はそうした道を必死に探していると理解しています。

その一方で、既存の企業以外から、新しい産業を興す道も探るべきだし、それができる能力のある人はそうすべきであると考えております。

私も、じつは大企業に勤務しながら、こんなことでは駄目だとの思いが強く、これを改善すべく、社会人コースに通って、経営学修士や学位を取るなどということをやっておりました。その時の狙いは、第一に研究管理のあり方を探ることで、今日では技術経営(Management On Technology: MOT)と呼ばれる分野を目指しました。第二は、ちょうどその時起こってまいりましたコンピュータネットワークの利用であり、これは今日ではインターネットとして、多くの新しいビジネスを生み出す原型となりました。

まあ、狙いは悪くなかったのですが、当時の勤務先は全く動くことなく、結局転職する羽目に。でも、いろいろやったことは、転職に際して有利に作用いたしましたし、その後自力で起業する上でも大いに役に立ちました。結果オーライ、ということですね。

イケハヤ師は、少し前のブログ記事「時間をかけずに大金を得る」アプローチと実例を次のように語ってます。

「時間をかけずに大金を得る」アプローチと実例を整理しましょう。ギャンブルとか宝くじは論外で。

    1. ベンチャー企業を立ち上げて、売却/IPO(ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ)
    2. 金融資産を保有し、そこから収益を得る(ウォーレン・バフェット、ドナルド・トランプ)
    3. 音楽や映画、マンガなどを発表し、印税収入を得る(ウォルト・ディズニー、鳥山明)
    4. 影響力を獲得し、商品やブランドの宣伝をする(キム・カーダシアン、セレーナ・ゴメス)
    5. ネット上にコンテンツをばらまき、アクセスを収益に変える(ヒカキン、ピコ太郎)

と、こんなところでしょうか。

私の場合は、(1)か(2)かな。イケハヤ師の立ち上げた企業は、とても売却できるとも思えませんが、私の立ち上げております企業は、もしかすると売れるかもしれない。もちろん、売らずに大企業まで育て上げることが、私の当面の目標なのですけどね。

これがどうなるかは、もはや私の実力を超えた世界です。世界が私を必要としているなら、私は、(もしかすると)大儲けできる。

ま、夢は大きく持ちましょうね。

6. 自ら価値を生み出すには

もう一つは、日本経済などという大げさなことを考えずとも、自ら価値を生み出せる人間を目指すということは、多くの人にとって有意義なことですし、今日では比較的簡単にそれができる時代となっております。

会社勤めをしている方なら、個人的な趣味を生かしてブログを立ち上げるというのが一つの手でしょう。ページビューは一日にして成らずですから、会社勤めをしている間はそうそうアフェリエイト収入などを狙わず、まずは、読者の満足感の高い、人気ブログに仕立てていくことが当面の目標となります。そうしてある程度アクセスが稼げておれば、一朝事ある際、つまりは勤務先の企業が傾いて希望退職を募集するなどといった非常事態に際して、育ったブログのマネタイズに注力すればよい。具体的には、宣伝をばんばん入れてアフェリエイト収入を追及するということになります。

現在勤めていない方なら、堀江氏のいうような、さまざまな新事業をいくつもトライしてみるのもよいですし、ブログをやるなら本気でページビューを稼ぎに行けばよい。時間はたっぷりありますので、毎日数本の2,000文字以上の記事(この記事で5,000文字超です)を書く。SEOにも気を配り、短時間でページビューを立ち上げるというのが当面の目標になるでしょう。

現在会社勤めをしていない、でもそれほど困ってもいない、ということであれば、さしあたりは食えているはずで、ニートの方なら扶養されていたり、定年退職して年金暮らしという結構な身分の場合もあるでしょう。いずれにしても、これらの場合であれば、そうそう高額の稼ぎは必要なく、月数万円の収入増でも、それなりに意義があるはずです。趣味や専門知識があれば、これを生かしたやり方もいろいろと考えられるのではないでしょうか。

そして、堀江氏が可能性を指摘しておりますイケダハヤト氏のレベルまでキャッチアップできれば、年収2千万などという世界もあり得ないではない。まあ、実際のところは、まずは月数万のレベルを目指して、稼げることがわかってから、ビジネスとして本腰を入れるなりゲーム感覚なりで、種々のノウハウを仕込んで収入アップを目指す、というのが現実的な道ではないかと思います。

やらないで後悔するよりやって後悔したほうが良いなどという言葉もあります(ひょっとして、これは何かのギャグかな? アニメでよく聞くのですが、、、そしてしばしばやって後悔する、と)。堀江氏の書いていることはまさにこの言葉でして、やって失敗してもすぐに忘れてしまえばなんということはない、というのですね。

もちろんその失敗が巨額の損失を招くようなことになりますと、忘れて済ますわけにもいきません。ここは、パソコンとネットでできるような仕事、ブログもそうですがそのほかにソフトウエアやウェブビジネスなど、初期投資の軽いビジネス、をトライすることがお薦めということになります。

失敗を恐れて小さくなっていても何も始まらない。まずは何かを始めること、これを意識して心がけてみるのも、悪くないのではないでしょうか。