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ベーシックインカムの優れた点

以前のこのブログでMechaAG氏のブログに批判を加えたところ、MechaAG氏からの反論が出ております。この反論は多岐にわたるのですが、今回はベーシックインカムの生活保護に対して優れた点についてご紹介いたします。

生活保護とベーシックインカム

基本的に誤解されていると思われる点は、以下の認識なのですね。

ベーシックインカムを導入すると結果的にベーシックインカム以下の賃金で働く人はいなくなる。少なくとも大幅に減るはず。

となると賃金上昇に結び付く。賃金上昇は企業にとってコストアップだから商品やサービスの価格上昇につながり、結果的に物価上昇をもたらすはず。

下の図に、生活保護とベーシックインカムの違いを示します。

ベーシックインカムと生活保護の違い

生活保護の基本思想は、最低限の生活に必要な手取り収入を保証するというもので、給与などの収入が少しでもあればこれに相当する額だけ支給額が減少してしまいます。

ベーシックインカムの思想は、すべての人に一定額を支給するというもので、給与などの収入があればこれとベーシックインカムを合わせた額が手取り収入となります。

この処理を税務署がおこなう場合は、給与などの収入に対しては税金がかかりますので、所得税がベーシックインカムを超える場合に税金を課し、税金がベーシックインカム以下の場合は負の所得税を課す、つまり、差額の現金を支給する形を取ります。

勤労意欲を増すベーシックインカム

今日の生活保護の問題は、すべての資産を失った状態で初めて生活保護が受けられることから、保護を受ける段階ではほとんど再起不能になってしまう点と、生活保護を受けている状態で所得を得ても支給が減額になるため手取りが増えない、という問題があります。

ベーシックインカムは、無条件に支給するため、貯金があろうと、自宅や自動車などを保有していようと、支給が受けられる。だから、これらの資産を使って経済活動を再開する可能性が残されているのですね。

もう一点は、所得があればその分手取りも増えること。この結果、少額の所得でも意味があり、労働しようという意欲を損ねないという点で優れております。

全体経済に及ぼす影響

MechaAG氏はベーシックインカムを導入すると結果的にベーシックインカム以下の賃金で働く人はいなくなる。少なくとも大幅に減るはずとしておりますが、これは生活保護の場合に言えることであって、ベーシックインカムにはあてはまりません。

生活保護を受けている人は、生活保護の受給額以下の給与は、収入を増やす効果がゼロであるため、勤労意欲がわかないのに対し、ベーシックインカムの場合は、得た収入の大部分が手取りになるため、少額の給与であっても、これを得る価値は多分にあるのですね。

つまり、生活保護を廃止して、ベーシックインカムに切り替えた場合は、今日では生活保護の対象者も働こうとするはずで、労働力の供給は増加するはずなのですね。

確かに、ベーシックインカムは生活保護のような条件を付けずに支給がなされるため、最低の生活でも良いと思うならば、働かなくても生きていける。つまり、働くことが嫌である人が多い場合には、MechaAG氏の言うように、働かない人間が増えてしまうかもしれません。

でも、人間にとって、暇も一つの苦痛であり、自分が好きなことで収入が得られるなら、働きたいと考えるのではないでしょうか。特に、自分が好きな仕事が給与が低くても、ベーシックインカムがあれば、それでやっていける。

そういう形で、趣味的な仕事をする人が増加することは、先進国にとって意義深いことであるのかもしれません。少なくとも、我が国が他国に対して進んでいる、漫画、アニメ、ゲームの世界では、これらを作り出した人々は相当に好き者であった様子であり、ベーシックインカムは、これらの動きを後押しする効果がありそうです。

まとめ

と、言うわけで、ベーシックインカムは生活保護に比べて、国民の勤労意欲を高め、経済の活性化に効果がある可能性を多分に秘めております。

もちろんこれは、余裕のある国民が有意義なことを始めるという、ある種の性善説が前提となっており、最低限喰えればそれ以上の仕事はしたくない、というような怠惰な人間が多い場合には、この制度は失敗に終わるはずです。

私のみたところでは、生活に困っていない人も、何らかの有意義なこと(その結果所得も得られること)をやろうとしている人が大部分であり、だから、この性善説が成り立つのではないかと考えております。

もちろん、私の視野には生活に困っている人があまり見えておらず、生活に困っていない人がそうである理由に、生活上の必要性がなくとも有意義なことをしたいという積極的な人であったから生活に困らないのだ、という因果関係が成り立っているのかもしれません。

確かに最初から怠惰な人間が多い場合、この制度は成り立たない。だから、真に怠惰な人間には、何らかのペナルティを与えておく必要がある。そのためには、ベーシックインカムの支給額は、苦痛なく最低生活を送ることができる額よりも、多少低めにしておく、などの措置が必要であるかもしれません。

もう一つの行き方は、ベーシックインカムを生活保護と併用する形で導入し、運用状態をみながら徐々にベーシックインカムの比率を増加させるといった手法もあり得るでしょう。このやり方の一つの利点は、お役人の抵抗が緩そうであり、混乱のリスクも低い点が挙げられます。

(10/26追記:通常はベーシックインカムで対処し、資産を完全に失った人には生活保護で対処する、というやり方もありそうですね。)

いずれにせよ、能力主義や適材適所の人事制度を導入するためには、セーフティネットの整備も必要であり、今日の生活保護制度が一度受けてしまうと再起困難となる制度であるだけに、この部分に何らかの改善が必要なところです。

ベーシックインカムや給付付き税額控除制度は、このための一つの可能性となるのではないか、と私は考えております。


以下、10/16追加分です。

最低賃金制度の廃止

ベーシックインカムで最低限の生活が保障されるならば、最低賃金は、極めて低いか、あるいはゼロでも良いはずです。賃金ゼロで人々が仕事をする理由は、それが面白いか、あるいは賃金以外のインセンティブがあるから。

これは、ほとんど採算の合わない産業も我が国では可能ということになり、スタートアップがしやすくなります。

この場合、優秀な人間をスタートアップに集める仕組みが必要になりますが、給与はゼロで、ベーシックインカムで生活してもらうこととして、その代わりに株式を支給して、上場ないし企業売却の際に巨額の利益を得るようにすればよいのではないかと思います。

保税口座という考え方

貿易に際して、関税を掛けられる前の品物を保管する「保税倉庫」というものがあります。この真似をして、収入に関しても、所得税を課せられる前の「保税口座」というものを作るとよいかもしれません。

能力主義もそうですが、職場を替わることが日常的になったり、株式上場で巨額の利益を得るけれどそのあとはずっと無収入になるなど、今後のあるべき働き方の副作用として、収入が不安定になることが予想されます。

こうした収入変化に制度として対応するために、保税口座という考え方は有効であるかもしれません。つまり、保税口座に入金される収入には税金が課せられず、保税口座から出金する際に所得税を課すようにすればよいのですね。

所得税は累進課税ですから、少額ずつ一定の金額を下すようにすれば、収入が変動しても、払う税金は生活レベルに見合った額で済むことになります。

この場合、給与や株式売却代金など、およそ個人の収入になるものはすべて保税口座に振り込む。給与所得控除や売却した株式の取得費用は、それぞれの振り込みに際して送られた情報に基づき、保税口座から通常の口座に戻す。また、ベーシックインカムに対しては税金はかかりませんので、最初から通常の口座に振り込むようにすればよい。

以前、芸能人やプロのスポーツプレイヤーが、稼ぎは一時的なのに、その時の高収入に対して高い税率が課せられることに不満を述べているのを耳にしたことがあります。このような人にも保税口座という制度は有効になるはずです。

そもそも、社員であることが権利のごとくに一定の収入を得られるという現在の制度がおかしいのであって、これが働きに応じた所得を得るような、よりダイナミックな制度に移行すれば、普通の給与所得者も芸能人のような大幅な所得変化が生じても不思議ではない。

これは、先の見えない不安な人生となるかもしれませんけど、よりドラマチックな人生を送るという意味で、面白い世の中になるのではないでしょうか。

(10/26追記:実は、今日の企業年金その他の年金的制度は、保税口座に近い制度となっています。つまり、年金の積み立て分は所得税のかかる収入から控除され、年金に対して所得税が課せられるのですね。

保税口座を導入した際には、このような年金制度を個々に作る必要はなく、さまざまな資金運用口座を保税口座とすることが可能かもしれません。

たとえば、証券会社の口座を保税口座とすれば、所得税がかかる以前の資金で株式取引やFXを行い、これを引き出す際に税金が課せられる。このような資金運用は、一般に、預貯金よりも高い利回りが期待できますので、多くの利用者が証券口座を選ぶ可能性は高いと思います。

これ、貯蓄から投資へ、という流れにも合致しそうです。もちろん、株式や外貨投資は証券会社の専売特許でもなく、銀行もできるわけで、証券会社の独り勝ちということにもならないはずです。)


以下、MechaAG氏の新たなご批判に応えていくつかの追加説明をしておきます。

まず、以下の部分です。

一番の問題は、社会経験のない大学卒業者。誰でも大きな不安を抱えてるはず。就職氷河期では就活に苦労した人も多いし、非正規雇用で働いている人もいる。さらにはそれこそ大学を卒業しても夢見がちな某界隈の連中のような人もいる。

そういう人たちにとってベーシックインカムは悪魔の誘惑なのですよ。とりあえずベーシックインカムで食いつないで好きなことをやろう、と。んで俺が界隈の連中を批判している一番の理由は、適切な年齢でないと学ぶことができないことは多い。20代に新卒社会人として多くの人が会社で身に着けることは、そのタイミングを逃してしまうと、30代で身に着けるのは非常に困難。

もし20代の人間がとりあえずベーシックインカムで食いつないで、好きなことをしよう、どうしようもなくなったら働こうと考え、30代まで会社で働いた経験がないと、30代で勤務経験のない人間を雇用してくれる会社が多くあるとは思えない。

このあたりは、今日の日本の雇用システムを良しとするか、問題ありとするかで全然逆の見方になるのでしょう。

この見解の相違は、イケハヤ師の行動に対する態度にも表れるのであって、普通に正社員として就職する生き方を良しとする人々から見ると、好きなことにトライする人々は怪しげに見えるのでしょうが、会社員生活で好きなことができないと不満を持つ人々にしてみれば、イケハヤ師らの生き方が理想に思えるのでしょう。

実はまだこのブログでご紹介していないのですが、リンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の書かれた「LIFE SHIFT(ライフ・シフト) /100年時代の人生戦略」を私は高く評価しておりまして、これからは、人生を何度もやり直す時代である、と確信しているのですね。

そもそもこの私がそうしておりまして、実に有意義な人生を送っているという実感がありますから。まあ、100まで生きるかどうかは神のみぞ知る、ではあるのですが、、、

で、人生100年時代の戦略というのは、30代でも50代でも、新たなことにトライすればよい、というものなのですね。なにぶん、世の中は恐ろしいスピードで変化し、人の人生はその波を何度も経験することになるのですから。

だから、上のMechaAG氏の書かれた「とりあえずベーシックインカムで食いつないで好きなことをやろう」などという若者がもしも現れるのなら、ベーシックインカムという制度は大成功だと思うのですね。

そもそも我が国が情報技術で後れを取ってしまったのは、その手の若者に活躍の機会を与えなかったから。

米国西海岸では、親のすねをかじりながら、自宅ガレージで怪しげな電子回路を組み立てた若者がいた。それが、今でいう「マイコン」。あ、これはもう死語でしょうかね。

いずれにせよ、この手の怪しげな若者が新しい時代を切り開いてきたのですね。我が国にもそういう人たちを生み出す仕掛けを作らなければいけません。

もちろん、これにトライする人がみな幸せになるわけではない。多くの人は、失意のうちに夢をあきらめるのでしょう。でも、何千人ものうちのごくわずかな人が夢をかなえれば、それは日本経済を発展させるばねになる。こういう人を大事にしなくてはいけません。

ベーシックインカムの財源は所得税や消費税などで、実際にそれを払ってるのは労働者なわけで、税金として取られる分を考えれば、左の図と同じになるわけですよ。

ベーシックインカム支持者は「いや、○○の財源を使えば増税しなくて実現できる!」というが、無より有を生み出す打ち出の小づちではないのだから、そんなことできるわけがないでしょ。

仮に現在政府が支出してる補助金などを削ってベーシックインカムの財源にした場合、補助金がなくなるのだからそれは結局は商品やサービスの価格上昇につながる。

100歩譲って「現時点」で財源がうまくやりくりできたとしても、今後なんやかやと政府の支出は増えていく。「やれ、○○をやれ」と必ずいろいろな要求が出てくる。ベーシックインカムと引き換えにカットした補助金も、「やっぱ補助が必要」となる。

結局は増税せざるを得ず、左の図になる。

まず、ベーシックインカムは増税が必要ですよ。

給付付き税額控除は所得税制の一種ですから給与所得者に対しては、所得税率をいじって、支払う税金と給付金の合計をプラスマイナスゼロにすることはできるでしょう。でも、所得を得ていない人々に支給される給付分はマイナスになります。

もちろん、国民年金の基礎年金部分や、生活保護の一部は、ベーシックインカムないしこれと同等な制度に置き換わり、この部分の経費は新制度に振りむけることができる。

しかし、ベーシックインカムの重要なポイントは、これまでの社会福祉制度から漏れてしまっていた人々を救済することなのですから、当然、経費の総額は増加する。

この経費を賄うには増税が必要であり、消費税増税が最も簡単な解決策でしょう。そのほかに、利子配当収入への課税を総合課税とすることで、富裕層の税率を妥当な水準に引き上げることも必要でしょうし、そもそもマイナンバー制度のキモはそこにあったはずなのですね。

ここで大事なポイントは、増税しても、それが国民への支給に回るなら、景気は悪化しない、ということですね。むしろ、富裕層に対する増税を貧困層への給付に回すなら、消費に回る金額が増加して、景気にはプラスの影響があるはずなのですね。

あと、MechaAG氏に見えていないのは、私の掲げた右の図と左の図の根本的な違いで、左の図は、少額の収入があっても手取りは増えない。仕事をしても、するだけ無駄なのですね。

社会福祉制度は「セーフティネット」として期待されているのですが、これは、いろいろとトライする人がその意に反して失敗した時、再起可能な状態を保つことを主目的としなくてはいけません。

ところが、生活保護を受けるためには、個人資産を保有することが許されない。これでは、新たなチャレンジはできないのですね。そして、小さく事業を始めても、手に入れた利益に対して生活保護が減額され、事業の拡大につなげていくことはできない。

これでは、生活保護は、再挑戦を容易にするセーフティネットにはなり得ない。それを可能とするのは、今のところでは、ベーシックインカムか給付付き税額控除(この二つは、実質的には同等なのですが)以外に見当たらないのですね。

MechaAG氏も、反対の立場を固めると、なかなか事実が見えにくくなってしまう様子です。

私の掲げた二つの図、これ、増税すると左の図になるというのはどうしてでしょう。普通に考えれば、右の図の税金の部分が拡大していくだけですよね。Mecha氏のご主張は、大いに参考となる意見も含まれているのですが、エントリーの終わりのあたりで意味不明なことを述べられてしまいますと、全体がぼやけてしまうのではないでしょうか。

まあ、私の側からは、余計な心配であるような気もするのですが、、、

MechaAG氏のご批判に応える(その2)

前節に対するMechaAG氏の改めてのご批判が寄せられておりますので、これについて簡単に述べておきます。

日本にもGAFAが欲しいということ

まず第一に言えることは、我が国の経済は、少子高齢化や情報分野への出遅れといった問題を抱え、先行きに不安がある一方で、世界第三位の経済大国の地位をキープしており、多くの人が豊かに暮らしている。

そして、アニメやゲームの分野では世界的に定評を博しており、ノーベル賞受賞者を輩出していることを見ても、それほどひどいことにはなっていないようにも見えるのですね。

でも、GAFAがけん引する米国経済が好調である一方で、この先発展途上国の追い上げが韓国・中国以外の世界全域に広がってまいりますと、日本経済の先行きには、少なくとも中・長期的なスパンでは相当な注意信号がともる。

ではどうするかとなりますと、新しいことにチャレンジ可能な社会制度を整備して、若い人たちが積極的に新しい技術を利用したビジネスを起こせるようにすること、産業構造の変化に合わせた人材の流動化を促進すること、などが避けては通れない道ということになります。

全員がそれをするのかという問題

もちろんこれは、日本人の全員が全員しなくちゃならないことではない。

現時点で好調な経済活動が成り立っている分野は、これをそのまま維持すればよい。そういう分野では、従業員に十分な処遇を与えることもできるわけで、新しい分野にチャレンジできるようになったからといって、従業員がどんどんやめてしまうといったことは考えにくいでしょう。

逆に、もしも好調分野からも従業員が流出するような事態になるなら、これは新しい制度の薬が効きすぎたか、実は現在好調な分野というのが、従業員に犠牲を強いる、従業員には不満のある形で運用されているのかもしれません。

また、現在好調な分野であっても、いつ風向きが変わって、未来がなくなるかもしれない。そういう時に、再チャレンジが可能な社会制度が整備されていることは、さしあたりの必要性がなくとも、心強い話だと思われるのではないでしょうか。

私は「みんながジョブズのまねごとを始めなさい」などといったたぐいの話をしているのではなく、「そういうこともしやすいような社会制度にしたらよいでしょ」、「そういうことをしだす人間を大いに応援したらよいでしょ」、と言っているだけです。

社会福祉の問題

働かない人も一定の収入が得られるベーシックインカムは、社会福祉の一つであることは確かです。そして、行き過ぎた社会福祉制度は、勤労に対するインセンティブを失わせ、一国の経済を傾ける、これも事実です。

だから、ベーシックインカムには、一定の歯止めを設ける必要があるでしょう。

生活保護制度の問題の一つは、個人資産を持つ人は給付が受けられないという問題で、個人資産がゼロになってしまったら再起は極めて難しくなる。逆に、ベーシックインカムがこういう縛りを掛けないのであれば、個人資産による生活水準の確保も、ある程度は前提とすることもできるのですね。

つまり、ベーシックインカムは、生活に必要な資金の全額を支給する必要はない。むしろそうしないことによって再起を強制するような形にすることも望ましいのではないかと思います。

その他、MechaAG氏の書かれたグラフは、何を言いたいのかよくわかりません。

私が掲げているグラフは、それぞれの個人にとって、個人の収入と社会制度を含めた総合的な収入がどのような関係にあるかを示すもので、これが一定以上の正の傾きをもっていることが、個人に仕事をしようというモチベーションを与えることになる。

これに、収入の分布を重ねることは、社会福祉給付を含めた総収入の分布を予測するという意味はあるかもしれませんけど、それと個々人のモチベーションとは直接の結びつきはないのですね。

個々人のモチベーションは、自分自身の手にするキャッシュがどうなるか、という点で決まりますので。

なお、個々の人が稼いで得た所得に対する所得税率は、稼ぎが少額の場合は非常に低い値でなければいけません。このグラフの傾きの45度からの解離は限界所得税率に相当するわけで、左端の部分は低所得者に対応しておりますので、左端付近での傾きは45度に近くあるべきです。

MechaAG氏が書かれたグラフでは、この傾きが左側でほぼ水平になっていますが、この傾きが水平であることは限界所得税率が100%であることを意味し、少ない稼ぎのすべてを税金として召し上げることを意味します。低所得者に対してこんなことをするのは、社会正義上認められるものではありません。

MechaAG氏のご批判に応える(その3)

前節に対してMechaAG氏のかなり長文の反論が寄せられています。あまり時間がありませんので、手短に説明を追加しておきます。

この反論のポイントは端的に言えば「 ベーシックインカムを導入すれば、現状の国民の大多数を占める中流の労働者の大半にとっては負担増になるだけ」ということでしょう。

ベーシックインカムが何らかの効果を発生するなら、それは新たに受給する人がいるからに他ならない、だから税金からの支出が増えることは否定できない。でも、ひろゆき氏が、税金の負担は増えないというのも、完全に間違った話、ではないのですね。

これは、矛盾した話に聞こえるかもしれないけれど、現実の世界は小さな部分を無視して議論される。

ベーシックインカムなり給付付き税額控除は、【給付額×人口】で議論するから巨額の資金が必要と思われてしまうのですが、この社会の多くの集団についてはプラスマイナスゼロとなるように設計することができるのですね。

つまり、今日の給与所得者に関しては、支給分に見合う所得税率の増加をおこなえば、【所得税-支給額】を合計した額の変化をプラスマイナスゼロにすることができる。

年金受給者と生活保護世帯に関しては、ベーシックインカムの分だけ、これらの支給額を減じればよい。ベーシックインカムの額が現状の支給額以下であるならば、誰にも変化を生じないようにすることもできるのですね。他にも、失業保険の受給者など、さまざまな部分でキャンセルができるはずなのですね。

そうなると、税金から新たに支給すべきベーシックインカムは、現行の社会福祉制度でカバーしきれていない層に限定されるわけで、これは、現在でも支援が必要な人々であるはずだから、さほど大きくもないはずと推定されるわけですね。(必要な支援を受けていない人が膨大な数存在するならば、それは大きな社会問題になっているはずですから。)

つまりこの額は【給付額×人口】で計算される額に比べれば無視できるほど小さい。そういう意味でひろゆき氏がゼロといっても、それはそれほど間違った話ではありません。

まあ、小学生的には、これは間違いであるのですが、、、

では実際の額はどうか、となりますと、これは簡単には計算できない。しかるべき行政機関が種々のシミュレーションをしなくては決められないでしょう。そういうことをきちんとやって、日本経済に対する悪影響がないような形で制度を設計するというのは、当然の話だと思いますよ。

まあ、かつての民主党政権みたいに、無理くりやってしまうという人たちがいないでもないのが怖いところですが、これはきちんとやるのが大前提です。

10/18追記:MechaAG氏の批判は続いていますが、基本的に同じ主張の繰り返しとなっておりますので、あまり同じことを指摘する必要性を感じません。

ただ一点追加しておいた方がよさそうな点は、最初に述べておりますように、ベーシックインカムなり給付付き税額控除という制度が、人材の流動性を高めるためのセーフティネットという意義があり、新しいビジネスへのチャレンジを容易にするための制度であることを忘れてはいけません。

つまりこの制度は、福祉制度である半面、人材のより効率的な活用や新しい事業の創出につながる制度でもあるということなのですね。だから、税金の支出を伴う制度である一方で、経済活動の活性化に伴う税収の増加も期待される制度であるということ。

これがプラスに作用するか、マイナスに作用するかは、制度の組み方次第であり、一概に語ることはできないのですが、このあたりをうまくやるのが行政サイドの腕の見せ所といったところだと思います。

なお、ひろゆき氏のお名前を間違えて記述した個所がありました。お詫びの上修正いたします。


い、いつのまに、、、