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池田信夫氏の12/16付けアゴラ記事「『ファクターX』は幻想か」へのコメント

池田信夫氏の12/16付けアゴラ記事「『ファクターX』は幻想か」にコメントを付けておきます。


基本的に、池田氏の論法は、未知の問題に無理やり原因を求める論法で、病気や災害が起こると、物の怪や怨霊にその原因を求める(あるいはその存在を証明したつもりになる)のと同じなのですね。

たとえば、次の言葉も面白い。

医療環境が最悪のアフリカで平均死亡率がイギリスの1/50程度だという事実は、この差が医療や衛生環境では説明できないことを示す。

なぜ、医療環境が最悪のアフリカでコロナの死亡率が低いかといえば、コロナで死ぬのは高齢者であること、アフリカでは平均寿命が短く、高齢者が少ないことによるという考え方もあり得るのですね。

ただしこれだけでは説明がつかないのが、日本のような、アジアの先進国でヨーロッパよりも感染者、死亡者ともに少ないという点です。その一つの説明に、マスク着用に代表される、アジアの衛生思想、衛生習慣があったのではないかと思うのですね。

コロナが流行する前は、欧米では健康な人にマスクを付ける習慣はなく、アジア人がマスクをする姿を見て、人種的な偏見も抱かれたものです。なぜマスクなしで済んでいたかといえば、衛生環境が良好であったからでしょう。

衛生環境が悪い地域では、人々はそれだけ衛生面に気を払う。これが、感染力の強い新型コロナの広がりを抑制する方向に働いたのでしょう。逆に、感染症に対する警戒が緩い欧米では、この警戒心のなさが、新型コロナが猛威を振るう原因になったとも考えられるわけですね。

その他、気温や湿度といった気象環境の違いや、人口密度、人々の活動が屋外中心か室内中心かといった違いについても考えておかなくてはいけません。これらの因子は概して、アフリカはヨーロッパよりもコロナ感染防止に有利です。この裏には、環境の厳しさが文明の発達を促進する、というメカニズムもあるのですね。

その他、私がひょっとして、と考えておりますプラスアルファに、農耕民族と狩猟民族の違いがあるのですね。麻生氏はこれを「民度の高さ」といってえばるのですが、これはえばるようなものでは全然ない。

日本を含む農耕民族は、長い歴史の中で、集団への同調を重要なものとする価値観を身に着けているのですね。これは、感染症対応などのような、社会で一律の対応が求められる際には大いに効果を発揮します。

つまり、マスクをせよと政府が言えば、みんなマスクをし、外出を控えよといえば、みんなが外出を控える。これは、麻生氏に言わせれば「民度が高い」ということですが、欧米的にはその逆、普通に考えれば、日本人は同調性が高くお上に従順で、欧米は独立心が旺盛で個人主義的だ、ということでしょう。

アジアが農耕民族である一方、欧米は「狩猟民族」でして、個々の狩人が獲物を狩る。ここには、全体としての統一的な動きなど、あまり要求されないのですね。むしろ、他人の行かないところに行く。そうして、おいしい獲物をゲットしたりするわけです。

コロナのような感染症で効果を発揮するのが、農耕民族的同調性。逆に、個々人が勝手に動く狩猟民族型では、誰かがどこかでウイルスをもらってくることを避けられません。

まあ、農耕民族的行動様式をファクターXといたしますと、これは確かに、これまでの我が国の感染者の少ないことを説明するかもしれません。でもこれは、大した助けにもなりませんよね。

池田信夫氏の論説には、結構科学的な記述であるような雰囲気があり、ころりと騙されてしまうのですが、よく読みますと、いろいろと粗がある。このエントリーもその一つということで、ここでご紹介&批判させていただきました次第です。


12/25追記:こちらに「民度」に関する上と同様の解説がありました。

1 thoughts on “池田信夫氏の12/16付けアゴラ記事「『ファクターX』は幻想か」へのコメント

  1. mi.mino

    このままいけば東京は千人に乗るだろう。
    つまり全国で5千はいくだろう。
    すなわち、ファクターX等は幻なのだ。
    マスクをきちんと付け、不要な外出をしない日本の習慣こそがいままで陽性者を低く抑えたにすぎないのだ。

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