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早川忠孝氏の7/1付けBLOGOS記事「ここに来てオリンピック開催反対を大声で叫ぶ人は、やはりセンスがないな」へのコメント

早川忠孝氏の7/1付けBLOGOS記事「ここに来てオリンピック開催反対を大声で叫ぶ人は、やはりセンスがないな」にコメントしました。


左翼には左翼の美学があるのですよ。

ひとたび反対を叫んだ以上、事態がいかに変化しようとも、その立場を変えてはいけない。それが左翼の美学なのですね。

村上春樹の昔の小説『海辺のカフカ』の基調和音は「想像力を欠いた狭量さ、ひとり歩きするテーゼ、空疎な用語、簒奪された理想、硬直したシステム」に対する闘いでしたけど、その具体的な『敵』なり『忌避すべき相手』は、旧日本軍であり、左翼であったのですね。

このような考え方というか、潔さというのは、日本古来の伝統にのっとった美学であり、情緒的に多くの日本人が賛同してしまう。朝日新聞などが、真っ先に持ち上げるのは、こういう人たちなのですね。これ、ある意味日本の伝統で、歌舞伎的美学といいますか、『白浪五人男』や『切られ与三』が、その生きざま故にヒーローになってしまう。普通に考えたら、どーしよーもない男どもなのですけど。

まあだから、共産党や立憲民主党の方々は、この国を彩る装飾的存在。実用的な役割は何もないけど、美的観点から存在意義が認められる人々で、影響が他に及ぶと多くの人が迷惑するから、限定的な存在であるべき人たちだと割り切ればよろしい。まあ、いろいろあって、良いのではないでしょうか。ダイバーシティの確保、絶滅危惧種の保護、重要(無形)文化財の類だと思えばよいのではないかな?


返信がついております。

花の ヤン

<まあだから、共産党や立憲民主党の方々は、この国を彩る装飾的存在。実用的な役割は何もないけど、美的観点から存在意義が認められる人々で、影響が他に及ぶと多くの人が迷惑するから、限定的な存在であるべき人たちだと割り切ればよろしい。>

それはどうでしょうね。
自民党政権の横柄な国政運営の象徴がオリンピックであるという解釈があれば、「オリンピック開催反対」をスローガンに掲げることにより国政への不満票を都議選で取り込む戦略は成り立つのではないでしょうか。

そう考えると「実用的な役割は何もないけど、美的観点から存在意義が認められる」という理解は妥当ではないと思います。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

美的観点に価値があるものは、美的であるがゆえにその効果が使われれば実用的でもある。装飾とか、心を癒すとか、ですね。でもそれが腹の足しにはならないし、暑さ寒さを防ぐこともできない。その手の物理的作用は期待できない、というわけです。で、

> 「オリンピック開催反対」をスローガンに掲げることにより国政への不満票を都議選で取り込む戦略は成り立つのではないでしょうか。

これですけど、たしかに、不満票を取り込む役には立つ。その手の主張を掲げた候補者がいなければ、不満のやり場がどこにもない。だから、この手の反対政党には、不満のある人々のガス抜きという効果はあるのですね。

でも、それは人間国宝の芸を見て心を豊かにするのと同列の効果であって、あくまで情緒的、気分的効果にとどまるのですね。つまり、この主張が実現されるわけでもなく、実物への効果はまず生じない。そういう意味で、美的観点からの存在意義だけを認めているわけです。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<美的観点に価値があるものは、美的であるがゆえにその効果が使われれば実用的でもある。>

おや、私の先の投稿の主旨は美的観点ではない目論見と効果があることですよ。
知的レベルの高い人から見れば共産党や立憲民主党の底の浅さが気になるのはわかりますが、瀬尾さんの諧謔が正しく理解できるにはそれなりのレベルが要求されると思います。

<でも、それは人間国宝の芸を見て心を豊かにするのと同列の効果であって、あくまで情緒的、気分的効果にとどまるのですね。>

それを言えば、ここ20年くらいの自民党の政治手法こそ印象に訴えるパターンが多いですね。
小泉構造改革は典型的なワンフレーズアピールでしたし、「美しい国」「日本を取り戻す」という恥ずかしいフレーズを唱えた自民党の総理大臣もいました。

むしろ、いわゆる左派の弱点は印象に訴える手法が稚拙だと言えます。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

> いわゆる左派の弱点は印象に訴える手法が稚拙 これは、政治家に必要な、一つの技術能力が不足しているというだけの話だと思います。右左、関係なしに、ですね。

普通の科学技術は、研究者なり技術者なりが一人でコツコツと研究すればそれに応じた成果が得られる。でも一人では何もできない分野もある。それが政治の世界で、同じような分野に経営学(MBA教育)もあるのですね。だから、経営学のカリキュラムの一つの重要な課題が「プレゼンテーション」で、結局のところMBAでございといったところで、その得た結論を経営幹部に説明してこれを動かさなくては何の役にも立たないという事情があるからなのですね。

政治学も事情はおなじで、曲がりなりにも民主主義が成立した古代ギリシャの時代には政治家のために弁論術が発達し、これがギリシャ哲学となって結実しましたし、卑近なところでは政治家を目指す若者が早稲田の弁論部で弁論術を磨くなんてこともあったのですね。これはこれで、政治家には必要な能力といえるでしょう。

でも、私の注目しているのはそれとは別の着眼点でして、自民党は曲がりなりにも国政で結果を出しているのですね。民主党政権だった時代に比べて、経済は回復したし、コロナ対応でも犠牲者が少ない点は世界に誇れます。管は管でも直人氏みたいに頭から湯気を出して東電本社に怒鳴り込みに行くようなやり方とは全然違う。後者も、原発事故に怒る国民に訴えて、気分をすっきりさせる効果はあったのだけど、実質的には、糞の役にも立たなかったのですね。つまりは、歌舞伎に喝采しているような話、だと。政治には、実質が伴わなくてはいけません。国民は、日々、食べていかなくてはいけない。サーカスだけでは飢え死にしてしまいますから。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<<いわゆる左派の弱点は印象に訴える手法が稚拙>>
<でも、私の注目しているのはそれとは別の着眼点でして、自民党は曲がりなりにも国政で結果を出しているのですね。民主党政権だった時代に比べて、経済は回復したし、コロナ対応でも犠牲者が少ない点は世界に誇れます。>

自民党と旧民主党を比較しても意味がありませんよ。
改憲論者やタカ派外交論者ばかりの松下政経塾出身者が多い旧民主党は保守系政党に分類すべきだと思います。

また、失われた30年のほとんどで与党だった自民党の実績がそう威張れるものではありません。
自民党には「日本経済の凋落期の政権党」という実績がありますし、その原因は円高と小泉構造改革などの間違った政治改革に帰結することは明白ですし、その片棒を担いだ点で日本新党や民主党などの改革志向野党も同罪であると私は考えています。

<菅は菅でも直人氏みたいに頭から湯気を出して東電本社に怒鳴り込みに行くようなやり方とは全然違う。後者も、原発事故に怒る国民に訴えて、気分をすっきりさせる効果はあったのだけど、実質的には、糞の役にも立たなかったのですね。>

いいえ、反原発は潜在的には今でも国民の多数派を占めていると思いますよ。
「実質的には、糞の役にも立たなかった」という見解は、大スポンサーである電力会社の影響下にあるマスコミの中だけで成立しているだけではないでしょうか。
その点では、二酸化炭素削減を名目に原発再稼働に舵を切った菅義偉内閣と自民党は、次の衆院選では反原発世論による離反が議席を減らす要因の一つになりかねません。

まあ、反原発世論に反しているのは立憲民主党の支持母体である連合も同じですから、衆院選の際に連合がどう動くのかも楽しみな観点の一つですね。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん:ご指摘の点はいろいろと複雑な要素を含みますので、簡単に書いておきますね。なお、今回は敬称略で書かせていただきます。

まず、失われた30年ですけど、1990年以来の総理大臣の顔ぶれをみますと、なかなかに見ごたえがあります。つまり、91年から、宮澤、細川、羽田、村山とくるのですね。そして、橋下、小渕、森と来て、2001年に小泉長期政権に引き継がれる。その後が、2006年から1年ごとに、安倍、福田、麻生、鳩山、菅直人、野田ときて、2012年から安倍長期政権、そして2020年の菅内閣と続きます。

この中で、まともな政治(特に経済の運用)ができたのは、小泉政権と安倍政権くらいで、小泉政権が金融危機の後始末をし、安倍政権がリーマンショックと民主党政権の後始末をしたのが最大の功績で、本来しなくてはいけない大改革、つまりは、情報革命という、第二の産業革命に我が国を適応させるには至っておりません。まあ、小泉改革くらいで反対の大合唱が起こりますから、この改革は、相当な困難が伴うことは当然でしょう。

その他、原発に関しては、それが安全なら動かせばよいのですが、現時点では危険極まりない。特に、運転にあたっている人たちとこれを規制すべき行政サイドの人たちが、その危険性を正しく認識していない点が大問題であると考えております。これに関しては、BLOGOSのコメント欄でも、何度かやり合ったのですが、、、

ただし、菅直人流のやり方は駄目ですよ。こういう問題は、きちんと技術を把握した専門家による、科学的技術的議論の下で、きちんと決着をつけなくちゃいけない。反原発の人たちも、原子力村と似たり寄ったりのカルト集団なのですね。だから逆に、推進派に付け込まれる。そこにあるものは、不毛な対立しかありません。そういう意味では、菅直人も、最悪です。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<この中で、まともな政治(特に経済の運用)ができたのは、小泉政権と安倍政権くらいで、小泉政権が金融危機の後始末をし、安倍政権がリーマンショックと民主党政権の後始末をしたのが最大の功績で、>

そこは意見が分かれますね。
私の認識では、小泉政権の金融危機の後始末は明らかな失策であり、不要な貸し渋りや貸し剥がしを誘発して恐慌級の企業倒産を引き起こしただけでなく、その後も企業融資を低迷させる悪影響を残しました。
しかも、既に1996年頃の時点で金融機関の不良債権処理がだいたい終わっていたとも言われていますから、わざわざ小泉政権が不良債権処理を行う必要性がなかった可能性すらあります。
ここまで酷い苛政はなかなかありませんよ。

次に、第1次安倍政権は何も良いところがなく下痢で終わりましたね。
二回目の安倍政権ではアベノミクスでかなりの支持を得ることができましたが、結局は黒田金融緩和だけしか功績のない政権だったと言えます。
経済政策的には、二度にわたる消費税増税というマイナス要素がありますし、最後まで賃金不十分であったのは安倍政権の特性によるものと考えるべきでしょう。

黒田金融緩和は日本経済の転換点と言うべき快挙でしたが、それを安倍政権は十分に活用できたのかは疑問です。
せっかく黒田金融緩和というお膳立てがありながら、7年経ってもこの程度だったのは賃金上昇について法制度整備などの対処に安倍政権が消極的だったからだと私は考えています。

なお、小泉政権と安倍政権の共通点としてマスコミの支援があったことが挙げられます。
もっとも、2回目の安倍政権は意図的にマスコミに介入し支配したわけですが、いずれにせよ実績以上に政権が評価されているというのが私の見解です。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<その他、原発に関しては、それが安全なら動かせばよいのですが、現時点では危険極まりない。特に、運転にあたっている人たちとこれを規制すべき行政サイドの人たちが、その危険性を正しく認識していない点が大問題であると考えております。>

この点に関しては、私も同意します。
特に、老朽化した原発の耐用年数を延長して使うような話には何の正当性がありません。
電力会社の都合しかないのではないでしょうか。

もっとも、私の考えは「安全なら動かせばよい」ではなく「全ての原発を廃棄せよ」ですが。
こんな危なっかしい施設は全て廃棄すべきだと思いますよ。

私の原発政策案として、現在の原発は全て燃料が燃え尽きるまで稼働せず維持するに留め、燃料が燃え尽きた原発施設から廃棄していくこととし、政府は電力会社に対し原発維持費と廃炉費用を支給すべきと考えています。
電力会社が「原発は必要」キャンペーンをやる気がなくなる程度の原発維持費を用意すればスムーズに事が運ぶと思います。

<ただし、菅直人流のやり方は駄目ですよ。>

私もそう思います。
といいますか、菅直人氏は政治家どころか人間としても最低の部類の人物だと私は思っています。
おそらく彼はサイコパスでしょう。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

小泉改革のキモは時価会計制度の導入なのですね。これで、実質価値を失っていたけど簿価だけはしっかりついていたバブルの負の遺産を清算できた。その結果経営が困難となる銀行には、巨額の融資とメガバンクへの統合をさせることで、我が国の金融システムを守り抜いた。これが、竹中氏の功績であったわけです。この時点で我が国の金融システムが破壊されていたら、欧米の金融会社にやりたい放題やられる現在も、あったかもしれません。

そして、傷付いた国内産業の立て直しのためには、雇用制度に手を付ける必要もあったのですね。立ち行かないゾンビ企業は清算するしかないけれど、その結果大量の失業者が巷をさまよう事態は避けなくてはいけませんから。

ただし竹中氏の問題は、その後人材派遣会社に行ってしまったこと。はたからみておりますと、いかにもグレーにみえる。まあ、真っ黒にみえるという人がいてもおかしくはないのですね。やはり、改革をしようという人間は、まずクリーンであり、人格高潔である必要があります。

小泉改革のもう一つの問題は、情報革命に舵が切れなかった点で、何のことはない、これが失われた30年の最大の原因であるわけです。情報革命の最大の障害は、国内各所に残る既得権にしがみついた人や組織であったことは事実で、「XXをぶっ壊す」というスローガンは良いのですが、結局ぶっ壊せたのは郵便局くらい、不徹底な破壊と再生に終わってしまいました。

その他、消費税増税は、安倍内閣時代に行ったのですけど、これを決めたのは野田政権時代ですよ。安倍氏は野田氏が解散する条件に、消費税増税と選挙改革を約束させられた。これらの不人気政策の実行を解散の条件に付けたことは、安倍氏の足を引っ張ろうという野田氏の作戦だったのかもしれませんけど、結局は、マニフェストにない消費税増税をした野田氏といわれることになっただけの話でした。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<その結果経営が困難となる銀行には、巨額の融資とメガバンクへの統合をさせることで、我が国の金融システムを守り抜いた。これが、竹中氏の功績であったわけです。>

完全に金融庁主導の恐慌じゃないですか。
小泉政権発足からの3年間での倒産件数55,000と初の失業率5%突破を成し遂げた最低政権が小泉政権です。

<そして、傷付いた国内産業の立て直しのためには、雇用制度に手を付ける必要もあったのですね。立ち行かないゾンビ企業は生産するしかないけれど、その結果大量の失業者が巷をさまよう事態は避けなくてはいけませんから。>

何を言っているのですか。
小泉政権4年目に為替介入による円安シフトが起こるまで失業率は高止まりでしたよ。 しかも、小泉構造改革により低賃金労働が定着したというオマケまでついています。

おそらく瀬尾さんは、敬愛する菅義偉首相が竹中平蔵人脈の人物であるため小泉構造改革を称賛するのでしょうが、この小泉政権は日本経済に大ダメージを与え、その悪影響は今でも作用しています。

<小泉改革のもう一つの問題は、情報革命に舵が切れなかった点で、何のことはない、これが失われた30年の最大の原因であるわけです。>

これはデジタル化に幻想を抱き過ぎですよ。
インダストリー4.0や5.0がもてはやされていますが、最終的な目的は生産量の拡大であって開発投資や設備投資が目的にするべきではないと思います。
スローガン的には開発投資や設備投資を謳うのはいいとして、ローテクであっても生産拡大や事業継続を推奨するなどの政策が必要だと思います。

<その他、消費税増税は、安倍内閣時代に行ったのですけど、これを決めたのは野田政権時代ですよ。>

おや、このときの議決では自民党も賛成したはずですよ。
自民党も同罪と考えるのが筋というものでしょう。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん:小泉改革のキモは、会計原則に関わる見えにくい部分で、ここがわからなければ悪の権化みたいに見えるのも当然でしょう。

時価会計というのは、値下がりした資産は値下がりした価額で帳簿にのせるという、ある意味あたり前のやり方なのですが、小泉改革以前は原価主義、つまり取得価額で帳簿にのせていた。だからバブル崩壊で大幅に値下がりした株式や不動産も、帳簿上はバブル時代の高値で計上されているなどということが普通に行われていたのですね。そしてこれが合法だった。

こうなりますと、値下がりした資産を大量に抱えた、実態は債務超過になっている企業も、帳簿上は立派な会社で、役員にも高額の給与・賞与や退職金を支払うことができた。銀行も、資金を引き揚げて倒産されなければ貸し倒れにもならないため、返済の当てもない貸し出しを継続し続けていたのですね。

で、小泉・竹中改革で時価会計を導入した。その結果、多くの企業が倒産したわけだし、貸しはがしも発生したし、銀行経営も傾いたわけだけど、これが元々の時価会計のねらいであったわけで、文句を言っても始まりません。駄目な会社は清算する。救うべき企業(メガバンクね)は救う。ゾンビ企業が抱えていた経営資源は放出させる。不動産にせよ、人的資源にせよ、実質破綻した企業はこれを手放すようにさせる。そうしてはじめて、ちゃんとした会社がまともに事業できるというわけです。

なお、小泉政権が成果を出すまでには相当の年月を要したのですが、これが普通の姿。恐ろしいばかりの無能な前政権を引き継いだ安倍内閣が特別に有利だっただけです。消費増税にしたって、変な約束がなければ、さっさと見送っていたと思いますよ。現に二度目は見送ったですしね。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<で、小泉・竹中改革で時価会計を導入した。その結果、多くの企業が倒産したわけだし、貸しはがしも発生したし、銀行経営も傾いたわけだけど、これが元々の時価会計のねらいであったわけで、文句を言っても始まりません。>

この解釈には同意しかねます。
私が思うに、時価会計導入の狙いは米国方式に近づけるためのもので、最終的な目的は米国投資機関に対して日本投機市場に参入しやすくすることだと解釈しています。

つまり、創造的破壊という名目はあっても、実際は対米追随でしかなかったわけです。 といいますか、破壊だけあっても創造的な効果が全く無かった点でも、瀬尾さんの主張は破綻しています。

たとえば、貸し剥がしや貸し渋りで壊滅的ダメージを受けたのは、自転車操業的に資金をやりくりしてきた中小零細製造業だったわけですが、これら企業の多くは瀬尾さんが主張するような淘汰すべき企業ではなく、むしろ日本の工業製品の品質向上に貢献してきた企業が多かったわけです。
しかも、小泉政権の日本の金融市場自由化により強烈な円高シフトが起こったことも、中小零細製造業にとってマイナスに作用しました。

小泉政権は支持率だけは高かったのですが、やっていたことはこのように経済政策としては最悪なことばかりでした。
さすがに、政権発足から3年目になって円高対策として為替介入を始めたのですが、効果がでたのは1年後という有様でした。

それでも、それは円安シフトの効果であって、創造的破壊による創造効果ではなかった点は押さえておくべきだと思います。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<なお、小泉政権が成果を出すまでには相当の年月を要したのですが、これが普通の姿。恐ろしいばかりの無能な前政権を引き継いだ安倍内閣が特別に有利だっただけです。>

それは違いますよ。
小泉構造改革の構想の段階から明後日の方向を目指していたわけです。
エリートさんたちにとって創造的破壊はスカッとするイベントだったかもしれませんが、結局はエリートさんたちが想像していたような創造は起こりませんでした。
そして、エリートさんたちが糠喜びをしている間に、小泉政権による売国的な対米追随が進行していたわけです。

<消費増税にしたって、変な約束がなければ、さっさと見送っていたと思いますよ。現に二度目は見送ったですしね。>

自民党内の消費税増税派の存在の大きさを考えれば、その主張には無理がありますね。
遅かれ早かれ増税になることは間違いありませんし、それが自民党政権の限界なのだと思います。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

> 私が思うに、時価会計導入の狙いは米国方式に近づけるためのもので、最終的な目的は米国投資機関に対して日本投機市場に参入しやすくすることだと解釈しています。

いわゆる「グローバル・スタンダード」ですね。この時期、小泉改革が一つの目標としたのは、発展途上国の追い上げを受けて頭打ちとなる製造業に代えて、知財をベースにした産業や金融業による立国を図ろう、ということだったのですね。この産業構造の転換は、米国が先んじて行っていたもので、これ自体は先進国共通の戦略となるでしょう。そしてそのためには、グローバル・スタンダードに合わせる必要がある。

ただ金融立国という方向性はまやかしで、リーマンショックで化けの皮が剥がれました。金融工学の教えるところによれば、公正な市場で付いた価格が正当な価格であり、これを売ろうが買おうが期待される利益はゼロ、ということで、いかにうまく市場で立ち回ろうとも期待される利益はゼロなのですね。

でも、ファンドが大きな利益を上げているのは、実は、無視し得るリスクを無視する(計算から落とす)一方で、レバレッジを掛けて(リスクを極限にまで高めて)わずかな利益を極大化するという手法を取ったため。めったに起こらないリスクが、実は10年に一度程度示現し、ファンドが破綻することも計画の内。でもそれまでに得た利益でファンドの人たちが大いに潤えばよいとのもの。これがリーマンショックでばれてしまったのですね。とはいえ、我が国の銀行員は、さすがにそこまでのリスクテークをせず、結果的にリーマンショックで浮上したというわけ。

まあ、これはばかげた話なのですが、一方で簿価会計もまたどうしようもない話で、実質破綻した企業の経営陣が巨額の年俸を得るというモラルハザードも何とかしなければいけない。少なくともこちらを対処したという意味では、有意義な改革ではありました。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<ただ金融立国という方向性はまやかしで、リーマンショックで化けの皮が剥がれました。>

これは同感です。 結局、金融資産とは実体経済での裏付けがなければ信用崩壊の危険性があるのだと、私は解釈しています。
つまり、生産と製造業こそが価値の根幹だと私は考えています。
したがって、「発展途上国の追い上げを受けて頭打ちとなる製造業に代えて、知財をベースにした産業や金融業による立国を図る」ことについて、私は懐疑的な見解です。

<まあ、これはばかげた話なのですが、一方で簿価会計もまたどうしようもない話で、実質破綻した企業の経営陣が巨額の年俸を得るというモラルハザードも何とかしなければいけない。>

ここは意見が分かれますね。
私の考えでは、敢えて企業淘汰する必要はなく、銀行融資で存続できる企業があれば存続させて生産させればいいのではないでしょうか。 企業の業績が悪いのは企業が悪いのではなく景気が悪いからであり、政府が本気で景気を調整すれば良かったのです。
少なくとも創造的破壊では創造的な景気回復がみられなかったのですから、創造的破壊論には何の実績がないことになります。

<とはいえ、我が国の銀行員は、さすがにそこまでのリスクテークをせず、結果的にリーマンショックで浮上したというわけ。>

ちょっと、この部分の主旨がわかりかねます。
どういうことなのでしょうか。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

> 敢えて企業淘汰する必要はなく、銀行融資で存続できる企業があれば存続させて生産させればいいのではないでしょうか。

バブル崩壊後の不良資産は、そうそう生易しいものではなく、現金を借り入れて高値でつかんだ土地や株の価値がほとんどなくなっている。これは、30年後の今日に至るまで回復していないのですね。でも、会計原則が簿価会計だと、土地や株の値下がり分は、打って現金にしない限り、帳簿に反映しなくてよい。バブル時代の高値で評価することが許されていたのですね。

このような企業は、実際には破綻している。銀行もそれを知っている。だけど、融資を打ち切ると実際に破綻して、融資が貸し倒れになる。それが一社や二社ではなく、軒並みそうなっている。というか、不良債権をきちんと処理すると、銀行自身が破綻してしまうような状況だったのが、小泉改革以前の金融危機であったわけです。

これでは、我が国の企業は信用されない。新たなビジネスを興すことも難しい。金融機関が、新しいビジネスに出ることもできないわけで、金融立国など夢のまた夢だったのですね。このようなバブルの負の遺産を解消する唯一の手段は、ゾンビ企業を破綻させること、その結果破綻の危機を迎えた銀行は、メガバンクに統合して巨額の政府融資を行って救済することであったわけです。

これをやったから、我が国の金融システムはちゃんと機能するようになった。それ以前は、半身不随状態だったのですね。実際問題として、小泉改革を行った結果、消滅した金融機関もいくつかあった。そうなるまでは、幹部社員は高額の報酬を得ていたわけで、実質破綻した企業で、もはや何もできない企業がこんなことをやっているような状態をいつまでも続けられないことは、誰の目にも明らかだったわけです。まあ、事情を知る人たちには、ということなのですが。ひどい話でしょ。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

<とはいえ、我が国の銀行員は、さすがにそこまでのリスクテークをせず、結果的にリーマンショックで浮上したというわけ。>

> ちょっと、この部分の主旨がわかりかねます。

金子勝著「閉塞経済」には面白い一節があります。曰く「リスクを計算するとき、100%のうちの1~2%くらいの確率でしか起きないようなパニックのようなケースは排除せざるをえません。……実際、100%のうちの1~2%くらいの確率でしか起きないような何か大きなことが起きてしまうと、みんなが同じように証券などの資産をいっせいに売るパニックになってしまいます。…… こうした想定外の事象が発生し逆回転が始まると、レバレッジを目いっぱい効かせているので、たちまちリスクはあちこちに波及してしまい、金融危機になってしまうのです。

実際には、このようなパニックは10年に一度程度の周期で発生しており、そのたびに多数のファンドが破綻しているのですね。でも、これで失職したファンドマネージャーはすぐに新たな職を見つけ、そこで大いに稼ぐ。何しろ、10年に一度のリスクを無視できるなら、これを含めればトントンの投資も、これを無視するなら利益を生むようにできる。資金に借金を重ねるレバレッジを効かせれば、わずかなプラスも大きなプラスにすることができ、10年に一度のリスクが示現しない限り、ファンドマネージャは優秀な成績を収めることができ、高い報酬を得ることができるのですね。

でもさすがに我が国の銀行員は、そこまでえげつないことをしなかった。だから、リーマンショックで世界のファンドが次々破綻しても、日本のメガバンクはさほど傷つかず、たとえば三菱UFJ銀行がモルガンスタンレーの救済に動いたりしたのですね。褒めてよいのか、馬鹿にする方が良いのか、よくわからない話ではあるのですが。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<このような企業は、実際には破綻している。銀行もそれを知っている。>

企業に問題があるわけではなく、景気が悪いだけでも「破綻している」ことになるわけですから、この主張には同意しかねますね。

<金融機関が、新しいビジネスに出ることもできないわけで、金融立国など夢のまた夢だったのですね。>

金融立国論はリーマンショックで破綻しましたよ。

<このようなバブルの負の遺産を解消する唯一の手段は、ゾンビ企業を破綻させること、その結果破綻の危機を迎えた銀行は、メガバンクに統合して巨額の政府融資を行って救済することであったわけです。>

そもそも銀行の存在意義は資本を集め企業に融資することですよ。
「銀行を救済するために企業を破綻させる」という論理は本末転倒だと思います。

<でもさすがに我が国の銀行員は、そこまでえげつないことをしなかった。だから、リーマンショックで世界のファンドが次々破綻しても、日本のメガバンクはさほど傷つかず、たとえば三菱UFJ銀行がモルガンスタンレーの救済に動いたりしたのですね。>

なるほど、そういうことでしたか。
ようやくイメージできました。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん:だいぶ元エントリーから外れてきましたのでそろそろまとめておこうと思いますが、基本的に小泉改革は、(1)バブル崩壊の負の遺産を解消するために行われたこと、(2)『当時は』発展途上国の追い上げで先行きが危ぶまれた製造業から、金融業などの知的産業へのシフトが必要と考えられたこと、の二点が大きな目標だったと思いますよ。

ゾンビ企業の問題は、実質破綻しているにもかかわらず、我が国の経営資源を押さえたまま、経営陣の手厚い処遇も続けるという、モラルハザードの問題がありました。金融立国は、たしかにそのメカニズムに大きな問題があったのですが、「製造業から知的産業へ」という「産業構造の転換が」先進国共通の課題であることには変わりない。

その行く先が「情報社会」という点を読み間違ったし、そういう変化についていけない、我が国の組織文化(年功序列とか、既得権益の尊重)があった、ということでしょう。派遣社員の問題は、雇用の流動化という意味では正解なのですが、流動化すべき正社員がそのまま保護されてしまった点は大失敗。

本来は、固定的な社員の処遇を低くして、短期雇用の社員の処遇を篤くすべきで、当初は専門能力を持つ人材の派遣を中心に考えられたのですね。でも、正社員の既得権を重視する我が国には、官庁も企業も、この手の常識は通用しない。

結局のところ、発展途上国の追い上げは避けることのできない問題だし、先進国は国民の教育レベルの高さという優位性を生かして彼らと競合するしかない。それに失敗すれば、生活レベルが低下するだけで、日本が現実に辿っているのは、失敗の軌跡である、ということを認識しなくちゃいけません。そして、全体が衰退しても、個々には成功する人もいる。それが格差社会をつくるのだけど、成功者を引きずりおろしても、何ら問題は解決しない。この点を心しなくちゃいけません。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<本来は、固定的な社員の処遇を低くして、短期雇用の社員の処遇を篤くすべきで、当初は専門能力を持つ人材の派遣を中心に考えられたのですね。でも、正社員の既得権を重視する我が国には、官庁も企業も、この手の常識は通用しない。>

それは自前で従業員を育成するメリットを認識する企業がまだ多いからですよ。

<結局のところ、発展途上国の追い上げは避けることのできない問題だし、先進国は国民の教育レベルの高さという優位性を生かして彼らと競合するしかない。>

為替誘導が可能であることが黒田金融緩和で実証できましたから、新興工業国には円安シフトで対抗が可能です。
また、大学予算の削減などの自民党政権の教育予算削減政策は、瀬尾さんの主張とは矛盾します。

<そして、全体が衰退しても、個々には成功する人もいる。それが格差社会をつくるのだけど、成功者を引きずりおろしても、何ら問題は解決しない。>

いいえ、ブラック企業で成功した人物なら引きずりおろしても構わないでしょうし、むしろ引きずり下ろすべきでしょう。
といいますか、ブラック企業が成功する素地を作った点で、日本の企業全体がブラック経営に流れる危険性がありますからシステム設計を失敗していると言えます。

ちなみに、私は金融政策の面からも所得再分配が有利ではないかと考えています。
つまり、金融緩和を徹底すれば通貨安が進行し製造業が栄えるわけですが、通貨安の恩恵があまりない分野ではインフレ率が高くなるだけなので、これが通貨安政策を徹底することができない要因となるわけです。
しかし、所得の再分配がある程度なされれば所得格差がなくなり、通貨安政策を徹底することが可能となるのではないでしょうか。


花の ヤン

瀬尾 雄三 さん

<だいぶ元エントリーから外れてきましたのでそろそろまとめておこうと思いますが、>

それもそうですね。
ただ、私は以前から小さな政府論や終身雇用制度について瀬尾さんとじっくり議論したいと思っていました。
もしよろしければ、瀬尾さんのブログでそうした議論をやってみたいと思うのですが、いかがでしょうか。


瀬尾 雄三

花の ヤン さん

あのブログは、政治に関するじっくりした議論を行うようなものではありませんので、ご遠慮ください。

ただ、個々の問題に絡む部分で議論するのは構わないので、折に触れて議論するのは良いと思います。(このコメント欄のように、ですね)

また、誰かが適当な「お題」を出してくださるのではないかと思いますよ。期待して待つようにいたしましょう。

2 thoughts on “早川忠孝氏の7/1付けBLOGOS記事「ここに来てオリンピック開催反対を大声で叫ぶ人は、やはりセンスがないな」へのコメント

  1. 花のヤン

    瀬尾雄三さん
    <>

    自民党と旧民主党を比較しても意味がありませんよ。
    改憲論者やタカ派外交論者ばかりの松下政経塾出身者が多い旧民主党は保守系政党に分類すべきだと思います。

    また、失われた30年のほとんどで与党だった自民党の実績がそう威張れるものではありません。
    自民党には「日本経済の凋落期の政権党」という実績がありますし、その原因は円高と小泉構造改革などの間違った政治改革に帰結することは明白ですし、その片棒を担いだ点で日本新党や民主党などの改革志向野党も同罪であると私は考えています。

    いいえ、反原発は潜在的には今でも国民の多数派を占めていると思いますよ。
    「実質的には、糞の役にも立たなかった」という見解は、大スポンサーである電力会社の影響下にあるマスコミの中だけで成立しているだけではないでしょうか。
    その点では、二酸化炭素削減を名目に原発再稼働に舵を切った菅義偉内閣と自民党は、次の衆院選では反原発世論による離反が議席を減らす要因の一つになりかねません。

    まあ、反原発世論に反しているのは立憲民主党の支持母体である連合も同じですから、衆院選の際に連合がどう動くのかも楽しみな観点の一つですね。

    ちなみに、菅義偉氏も菅直人氏も内閣総理大臣としては横柄さが目立ちましたので、似た者同士という印象があります。
    とは言っても、議会答弁や質問では菅直人氏の方が上手らしいですね。

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