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未来人材ビジョン

中国のデジタル覇権!?」と題して先日公開いたしましたブログエントリーで、経済産業省未来人材会議の第一回会議に提出された「事務局資料」について長々と説明したのですが、「未来人材会議中間とりまとめ」が5/31に開催され「未来人材ビジョン」が発表されています。本エントリーではその内容を同文書の構成に従って、簡単にご紹介します。


1.問題意識

まずは、デジタル化、AI・ロボット技術の進展により、社会に求められる人材が変化しているという点が指摘されます。そして、米国において顕著に表れている労働市場の両極化(高スキルの専門職と低スキルの対人サービス職への二分化)が我が国でも生じているとの調査結果が紹介されます。

ここで、経産省のレポートでは触れていないのですが、高スキル職の中でも管理職のニーズが低下していることは注目すべきところでしょう。しかも、米国では管理職のニーズが高まっている一方で、日本では低下している。この点に注目すべきです。おそらくこれは、文系問題として本ブログでも何度か扱った問題(ぶっちゃけて言えば、働かないおじさん問題)ではないかと思います。

つまりは、高度な技術を実用化するに際して、技術に通じたマネージャに対するニーズが高まる。それが米国の姿なのだが、技術に疎い管理職には、このような働きはできない。そういう管理職が大多数であるのが日本の姿だ、ということでしょう。

我が国の労働人口は、少子高齢化により急速に減少するのですが、高度な技能を持つ外国人が日本で働くかといえば、そうではない、むしろ日本の優秀な学生は、日本企業を嫌って外資系への就職を希望する者が増えております。日本は、優秀な人にとっては、魅力のない国であるのが現状です。

2.労働需要の推計

この節では、専門職に要求される能力の種類も変動し、コツコツまじめにやる人材から、情報技術と科学技術の知見をベースとして問題を発見し予測する人材が求められるとしております。要は、秀才タイプから天才タイプへと、求められる人材がシフトしているということでしょう。

3.雇用・人材育成

現実の雇用の場では、前回ご紹介したので今回は省略しますが、社員はやる気がないし、現職を勤め続けたいとも思わないけど、転職しようとも思わなければ、起業する気もない、問題を認識しつつも現状維持で固まってしまうというのが、国際比較で明瞭に浮かび上がる我が国の現状なのですね。

そしてこれは、企業の人材投資額や、自己啓発を行う社員の割合にも、明瞭に表れていると、下の図を掲げます。日本は、ハッキリ言って、お粗末なのですね。

なぜこんなことになるかといえば、日本の雇用環境にその一つの原因があり、人事が社内で固まっており、社外との競争にさらされないため、能力向上の必然性も感じないためでしょう。これは、このレポートにははっきりとは書いていないのですが、これらの図表を見ればそうとしかいえません。

で、今後のあるべき姿は、組織を超えた人材の流動があるべきだということ。結論部分では、私の考えとこのレポートは一致しております。根底にありますのは、働かないおじさんの問題だと、経産省も、はっきり言ってしまえばよいと思うのですが、、、

少々面白いのは、スタートアップから学べることも多いのではないか、との一言がかかれており、その意味するところは少々掴みがたいのですが、本ブログの大昔のエントリー「大企業に入ったほうが成長できるか、という問題について」とも共通するポイントであるかもしれません。ちきりんさんの慧眼には恐れ入ります。

4.教育

我が国の人材は、初等教育の間は素晴らしいのだが、高等教育に問題があるとして、様々な取り組みを紹介しております。この部分は、特効薬的な解決策があるわけではなく、様々な試みを繰り返していくしかなさそうです。

ただ、下の絵はわかりやすいまとめであるかもしれません。つまりは、新卒一括採用で終身雇用とするのではなく、高等教育とキャリアアップ(転職)を組み合わせる形で、それぞれの個人がおのれの能力を高め、より良い職についていくという形が理想であるとするわけです。

これについて、企業の側のバックアップが必要だというのですが、企業がそうするためには、税制その他の社会制度も整備して、企業にとってそうすることが利益のある形を作らなくてはいけないでしょう。

そしてもう一つは、役所が率先してこれをやることではないかと思いますよ。そもそも、この先、要らなくなるのは管理業務であり、官庁の仕事の大部分は不要になる。ミスがないことまじめさが要求される時代から、問題発見能力が要求される時代への移行に、官庁がどのように応えていくかと考えるとき、多少なりとも思考能力のある官吏であれば、愕然とするのではないでしょうか。(そう思わないお役人は、つまりは問題発見能力に欠けた人で、この先不要となる人材であるということ。このレポートはそういうことを語っている。そこまで考えなくちゃいけません。

そういう大問題が目の前にあるということを忘れちゃいけません。

なお、この後に「5.結語」が続くのですが、ここでは省略いたします。

1 thoughts on “未来人材ビジョン

  1. mitsu minomi

    >>我が国の労働人口は、少子高齢化により急速に減少するのですが、高度な技能を持つ外国人が日本で働くかといえば、そうではない、むしろ日本の優秀な学生は、日本企業を嫌って外資系への就職を希望する者が増えております。日本は、優秀な人にとっては、魅力のない国であるのが現状です。
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