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楽あれば苦あり

池田信夫氏の9/22付けアゴラ記事「日銀はインフレ目標から『為替ターゲティング』に転換するとき」へのコメントです。


これまで円安は輸出を増やして景気をよくすると思われてきたが、最近は必ずしもそうではない。日本の貿易収支は2010年代にはほとんど赤字で、昨年は史上最大の貿易赤字だった。それに対して所得収支は史上最大で、日本は輸出ではなく海外生産で稼ぐ国になったのだ。
円安が輸出を増やす効果は明らかだが、所得収支に対する効果は一義的ではない。2009年からの円高時代には海外生産が有利になったので、アジア諸国への資本逃避が進んだが、黒田日銀で円安になっても、海外拠点は日本に戻ってこなかった。

2010年代の貿易赤字は、民主党政権下で進んだ、1ドル80円を割り込む極端な円高のため、国内製造業が海外に逃避した結果でしょう。ドル円は、安倍政権に代わって回復したものの、ひとたび海外に出てしまった工場は、ドル円が元に戻っただけでは国内に回帰しない。一旦、極端な円安時代を経るしかないでしょう。

昨今の貿易赤字は、ロシアとウクライナの戦争によるエネルギー価格の高騰という外的要因がある。日本のエネルギー価格は、輸送コストの占める割合が多く、この影響は欧州ほどにはひどくない。この戦争は遠からず終わるはずで、本格的な対応は戦争終結後とすることもできるでしょう。

貿易赤字も、海外に工場が逃げるだけなら、利益は国内に回帰して経常収支は黒字を保てる。しかしこれが可能なのは、日本企業が優れた技術を保持していたからであり、その多くは陳腐化しつつある。我が国企業は情報技術で米国に後れを取っていることは、米国GDPがGAFAに牽引されて急拡大しているのに対して我が国が停滞していることからも明らかでしょう。特に、優れた人材が、日本企業よりも海外企業を目指すという現状は、先行きに暗い影を投げかけている。

ならば何をなすべきかといえば、まず、日本の発展途上国化を阻止しなくてはいけない。これには、雇用制度の改善など、社会制度や文化を変えていかなくてはいけないのですが、一朝一夕になるものではないのですね。ならば、まずは極端な円安時代をいったん経由して、民主党政権時代に逃げた生産拠点を国内に戻す。この、日本国民にとっては苦しい時代を、一度は経験するしかないように、私には思われます。

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