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ゼロカーボンを目指す理由は?

澤田哲生氏の3/30付けアゴラ記事「ゼロカーボンはいばらの道:新たなる難題」へのコメントです。


問題は脱炭素ではなく温暖化防止のはずである。ゼロカーボンやカーボンニュートラルのように〝ゼロカーボン(ゼロ炭素)〟至上主義はそれ自体に執着すればするほど墓穴を掘るというパラドックスに陥っている。

ゼロカーボン至上主義を否定するのは当然としても、温暖化防止だって、昨今はその必要性が疑問視されています。でも、人類があえて炭酸ガス排出防止に動く必要は依然残っている。それは、エネルギー資源の枯渇という問題に備えなくてはいけない、という理由からなのですね。

最近、シェールオイルやシェールガスの利用も現実的となり、かつて30年後とも言われておりました石油や天然ガスの枯渇時期は50年後あたりまで延びております。石炭やウランは130年以上とも言います。でもいずれにしてもその枯渇時期は来る。そして、それが近づくにつれ、これらの資源のコストは上昇一途をたどるはずなのですね。

化石燃料が得られなくなりますと、一つには、太陽光や風力といった自然エネルギーが期待されております。そしてもう一方では、長い目で見れば核融合技術が期待される一方、短期的には原発という解もある。でも、これらは火力発電所とは異なり、需給バランスがとりにくいという問題があります。二次電池にも限界がある。だから、エネルギーを貯蔵可能な水素に変換することが考えられているのですね。

で、水素は液化しにくく貯蔵や輸送が大変。ならばより簡単に液化できるアンモニアに頼ろうというのは一つの解ではある。大規模なアンモニアプラントは既に存在し、その利用に技術的難易度は低い。でも、炭酸ガス排出を度外視すれば、アルコールで輸送する方が楽なのですね。まあ、簡単に合成できるメタノールは毒性がありますから、エタノール合成にチャレンジするのが良いと思いますが。(続く)


(続きです)エタノールは、天然ガスから合成することもできるのですが、石炭から作られるコークスも利用して合成することで、コストを引き下げることができるでしょう。つまり、コークス(炭素:C)と水(H2O)を反応させて水素ガス(H2)と一酸化炭素(CO)を作り、これと天然ガス(CH4;メタン)を反応させてエタノール(CH3CH2OH)にする。

この反応は、おそらくは高圧反応となりますが、アンモニア合成ほど厳しい反応条件ではないはずなのですね。で、生成したエタノールは、燃料用アルコールとして火力発電に使うこともできますし、そのままガソリン代替の自動車燃料にもなる。そして、脱水反応によりエチレンを生じ、化学合成原料ともなるのですね。

エタノールを燃やせば炭酸ガスが生じる。温暖化防止至上主義の方には、これは受け入れられないと思いますが、温暖化がさしたる問題ではないとなりますと、この点はさして問題ではない。

火力発電所で発生する炭酸ガスは、核融合発電所が夜間に生み出す余剰電力で生成した水素ガスと反応させてエタノールに戻せばよい。ごみ焼却場から出る炭酸ガスも同様にエタノール原料とすれば、トータルの炭酸ガス排出量は大幅に抑制されるはずです。

天然ガス産出国でこれを水素と炭酸ガスに分離し、炭酸ガスを埋設処理し、水素を、あるいはこれから合成したアンモニアを日本に輸送するというのは、良いアイデアのように思いますが、我が国は炭素資源も確保しなくてはいけない。この点を考えますと、長いスパンでは、水素ガス輸送やアンモニア輸送は成り立たず、短期的な意味しかないように思われます。そして、地球温暖化が長期的な問題であることを考えますと、これらの試みは、あまり重視しないのが良いのではないか。私にはそう思われます。

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