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中国と日本の研究開発と課題

増田悦佐氏の8/8付けアゴラ記事「成田悠輔を徹底的に論破する」へのコメントです。


高齢者皆殺しの是非については別として、技術的な部分でも、いろいろと検討の余地があります。

自律走行車両で引き続き中国が研究開発に力を入れているのは、その広い国土故でしょう。3Dプリンタに関しては、タービンブレードなどの高融点金属の加工や、歯科用のクラウン、宝飾品などで引き続き注目される技術ですし、フィギュアの製造などという面白い用途もある。近年、アニメもボーカロイドも3Dモデルから絵を作っていますので、3Dプリンタを使えば立体造形もすぐにできる。

ゲノム編集はよくわかりませんが、コロナワクチンの開発状況を見ても、日本が遅れた分野であることはわかるし、中国が力を入れたい理由もなんとなくわかる。ブロックチェーンはパス。何をしたいのでしょうね。

水素貯蔵の特許は、二次電池向けの研究ではないでしょうか。ニッケル水素電池のような、水素吸蔵合金を使う二次電池が注目されていましたから。これは現在はリチウム電池が主体に考えられているし、更には固体電解質を目指している。そして、純粋な水素の貯蔵は、CFRP製ボンベで充分なはず。中国が何か特殊なことをやっているかどうかは、調べる価値があると思いますが、水を分解しての水素製造は、今後とも重要な技術課題であることは確かです。なにぶん、いずれは化石エネルギーも底をつきますので。

コンピュータ映像は、3Dこそ下火ですが、液晶から有機ELという方向はまず確実で、この先の主戦場になりそうです。中国の研究開発も、全体に遅れていることは確かでしょうが、それほど悪い選択ではなさそうです。むしろ、我が国の研究開発管理に問題がありそうですが、これについては、別稿といたします。


日本の研究開発の問題は、研究段階では我が国の研究は世界に先んじているのだが、実用化の段階で世界に大きく後れを取ってしまう、という点でしょう。

科学技術の高度化に伴い、研究開発成果が必ずしも経営的成功には結びつかない、という問題は、以前から指摘されており、経営学の内部でも「技術経営(マネージメント・オン・テクノロジー)」という独立した分野として経営技術に関する研究が進められております。

一つ有名な概念が「デスバレー」というもので、研究開発の先端と、工業的応用との間に、死の谷が広がっている、という問題なのですね。先端研究の内容がわかる人には経営がわからず、経営のわかる人には技術がわからない、というわけです。

でも、これは実際にはそれほど難しいものではない。スポーツの分野でも、野球ファンは優れたプレイがわかるし、誰が優れたプレーヤーかはわかる。優れたプレーヤーになることは大変だけど、野球をわかることはそれほど難しくはない。これを、経営者が技術に対してやればよい。

それができない理由に、優れた研究者を優れたものとして認めにくい経営者の心理に、己の地位が侵されるという危惧があるのではないかという気もします。でもこれなら、解決策は簡単、それぞれを別の扱いにすればよいのですね。優れた研究者を「フェロー」と呼んで役員待遇するとか。まあ、やりようはいくらでもありそうなのですが、なかなかそれができないのが、日本の今日の問題点ということなのでしょう。


水素吸蔵で思い出したことがありましたので、追記しておきます。

福島のトリチウム水分離に関しては、「トリチウム水タスクフォース報告書」が平成28年6月付で発表されており、トリチウム水分離プロセスの一つとしてキュリオン社のシステムが記述されております。この装置は、日本政府が10億円を支出してパイロットプラントを建造し、目論見通りの結果を得ております。

分離したトリチウムは、安全に保管しなくてはいけませんが、このための手段としてキュリオン社が提案した手法は、同文書の53ページの別紙3に、「キュリオンのシステムでは、その後、別途、同位体除去装置を用い、トリチウムが乾燥金属吸着材の中に捕獲される」と述べられております。つまり、水素吸蔵合金がトリチウム保存に使われる様子なのですね。

トリチウムの取り扱いは、DT反応に基づく核融合技術にも欠かせない技術なのですが、一つ間違えてトリチウム放出事故などを起こしますと、福島とはけた違いの大問題ともなりかねず、この部分の技術開発もきっちり行う必要があります。そして、中国も実はDT反応による核融合を一つのテーマにあげているのですね。

DT反応は我が国も狙っており、トリチウムを安全に扱う技術も必須と考えられます。福島のトリチウム水処理に関して我が国は10億円もキュリオン社に支出しているのですが、トリチウムを扱う技術はしっかり吸収したのか、その点が気になるところです。

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