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宇宙移住と地球に生きる同等性

松田智氏の10/8付けアゴラ記事「宇宙移住の妄想、地球環境の大切さ」へのコメントです。


あと10年もすると核融合が実用化されるとみられているのですが、現在研究の中心となっているDT反応は、放射性のT(トリチウム:福島で問題となっているやつです)を大量に扱ううえ、これを核融合炉で作るための中性子が不足し、希少元素であるベリリウムが必要になるなどの問題があるのですね。

核融合反応自体はDT反応がもっとも容易ですので、先陣争いをやる以上DTに拘らざるを得ないのですが、DTに近い容易さでより安全な反応にヘリウム3(3He)を用いるD3He反応があるのですね。

このヘリウム3、トリチウムが半減期12.3年で崩壊して生成するのですが、月面上にも大量にあるということで、中国の宇宙開発の主要目的にもなっておりました。さて、月面上のヘリウム3、中国に独占させて良いでしょうか? 普通に考えれば、「そうではない」と答えるしかないと思うのだが。

もうひとつ、地球で生きるのは簡単で、宇宙で生きるのは大変だというのは幻想にすぎない。地球も全体で見れば閉鎖系で、同様の閉鎖系は人工的にも作ることができる。フラーの「宇宙船地球号」と同様な閉鎖系である「ボトルアクアリウム」などという世界もある。エネルギーさえ供給できれば、閉ざされたボトルの中ですら生態系は維持できるのですね。まあ、人間が快適に生きるには、もう少し複雑な仕組みが必要でしょうけど、宇宙船は、地球で生きるのと、本質的にちがいはないというわけです。

宇宙開発に対する人々の異なる見方で思うのは、プラトンの洞窟の譬えです。かれは、人が洞窟の壁に映る影しか見られない状況を考える。そして、誰か一人が洞窟の外に出て外の世界を見てくる。そしてこの経験を他の人びとに語るのだが、それは誰にも理解されず、あるいは、その人を殺してしまうことだってあり得る。これは、ソクラテスのことを語ったのだとも言われています。人は己の知る世界を拡大することもできるけど、そう望まない人もいる、ということ。そして、プラトンが選んだのは前者、ソクラテスと同じ生き方であったわけです。まあ、皆さんがどう生きるかは、その人それぞれだとは思いますが。

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