諌山裕氏の5/8付けBLOGOS記事「日本だけ『コロナ感染のグラフがおかしい』理由は…」にコメントしました。
四月の下旬以降、我が国のPCR検査の陽性率は10%を切っておりますので、検査数が感染者数の上限を与えているということはないと思います。
累積の感染者推移に関しては、これを対数グラフで表示すると、上の線と下の線では、そのレベルが大きく違うのですね。
米国の感染者は百万人を超していますし、英独仏といったヨーロッパ諸国も軒並み十数万人のレベルにあります。これに対して、我が国の累積感染者は1万5千人程度で1/10しかないのですね。
感染者数の推移は、分枝過程という数理モデルで著わされるのですが、二種類の感染者を考えております。つまり、領域内で他の感染者から移されて発生する感染者と、領域外からもたらされた感染者の二種類なのですね。
前者は、いわゆるクラスターという形で、モデルに含まれる一方、後者の代表例は海外で感染してきた人たち。これがはっきりわかるケースもあれば、海外で感染して国内の感染者としてカウントされていない人から感染するケースも、後者に含まれることになる。
で、領域外からもたらされる感染者が一定数ありますと、対数グラフの下の方にある場合には、これが強調して表示されるのですね。今回の、日本と欧米の比較で言えば、日本では10倍程度強調されてしまう。
対数グラフでこの手のデータを比較する際には、モデルが等比級数的に推移するとはっきりわかっている場合を除いて、同程度のレベルにある国と比較しなくてはいけません。
対数グラフは、大きく異なる値も一つのグラフに表示できる、便利なグラフではあるのですが、特に大きく異なるデータを比較する際に、充分注意しないと間違った結論を導き出してしまいます。