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Chikirin氏の日記「Go to キャンペーン大混乱について」についての考察追加

Chikirinの日記Go to キャンペーン大混乱について」につきましては、以前BLOGOSに転載された際にコメントしましたが、改めて考察を追加します。


このちきりん氏の指摘は、普通の人の指摘とはちょっと異なる、ビジネス目線、彼女の「マーケット感覚」を発揮しての指摘なのでしょうが、いくつかの点で奇異な感じを受けるのですね。

そりゃ、人がみな商売第一で動いているわけでもないし、商売第一で動くべきというわけでもないから、あたり前の話です。

前回のコメントでは、GoToキャンペーン自体の妥当性についてちきりん氏が触れていない点に違和感を感じる理由として、ちきりん氏の解析が、なぜかかるキャンペーンが行われたかという企業の事情を浮き彫りにするものである、ということを指摘しました。

似たようなポイントがもう一つあることに気付きましたので、以下、議論することといたします。これは次の点です。

なお、⼩池都知事は以前から「都⺠の⽅には、他県への移動を控えて」と⾔ってますが、その⼀⽅で「他県の⽅も、東京には来ないで」とは⾔いません。

地⽅の知事の中には「今は他県から来て欲しくない」と⾔ってる知事がたくさんいます。都知事だって、⽬的が「コロナの地⽅への拡散防⽌」なら、同じことを⾔うべきですよね。

でもそっちは⾔わない。

なぜだって︖

都知事の「県外に⾏かないで」発⾔の根底にあるのは「地⽅を守らなくちゃ︕」という気持ちではなく、「他県に旅⾏にいくのにお⾦を使うくらいなら、都内で遊んで消費してほしい」という、「都内の景気刺激のため」だからでしょう。

彼⼥は、今回のキャンペーンから東京が除外されたことについても、本⾳では不満に思ってないはずです。

都⺠の反発を買うのでポーズとして不満な表情は⾒せていますが、本⾳でいえば「東京の⼈に地⽅に⾏ってお⾦使ってほしい」わけではありません。

これは、⽇本全体ではなく「東京の利益をまず第⼀に考えるべき都知事の⽴場」としては、当然です。

この部分、ちきりん氏は、小池都知事が都内の観光産業のビジネス振興を目的とするがゆえに、「他県への移動を控えて」という一方で「他県の方も、東京へは来ないで」とは語らないとします。

一方、地方の知事には「今は他県から来てほしくない」という人が多く、同じことを小池氏が語らないのを訝(いぶか)っているのですね。

これ、ちきりん氏が指摘するように、小池氏のビジネス指向ゆえだと思われますか? もしそうだとすると、小池都知事はビジネス的センスに優れる一方で、他の県の知事は全然そうじゃない、ということになるのですが、本当でしょうか?

普通であれば、まず双方が賢い、と考えてその真意を推理するのが第一歩のはず。それが成り立たない場合に、賢くない人が混ざっている可能性を検討しなくてはいけません。

東京都とその他の自治体の長が異なる呼びかけを行う。この背景には、東京と地方の非対称性があると考えるのが第一の着眼点でしょう。東京から地方に行くことと、地方から東京に行く違いが何かあるか、ということですね。それもコロナに関して。

で、ちょっと考えれば、このくらいのことはすぐに気づく。つまり、コロナの感染者は東京都が圧倒的に多いのですね。

だから、東京から地方への人の移動は、コロナの感染拡大を招く恐れがある。これを防ぐために、都知事が他県への旅行を控えるよう都民に呼びかけることは妥当ということになります。

一方の地方自治体の長としては、「東京都民がわが自治体に来ることは控えてほしい」と言いたいところでしょう。でもこれを言えば角が立つ。それに、神奈川、千葉、埼玉も、東京都よりは少ないけれど、地方に比べれば感染者が多い。だから、「県外から我が県を訪問することは控えてほしい」と呼びかけることは妥当であるわけです。

もちろん、地方の人間が東京に旅行に行くことも同様に危ない。地方の知事たちがこれを警告していないということはちきりん氏の記事には触れておらず、あるいは警告がなされているのかもしれません。

でもそれがなくても、地方の人間が東京に来て、そこで感染して地方に帰ってくる可能性は、すでに感染者が多い東京の人間のだれかがたまたま感染者で、これが地方に来るという可能性よりも低そうです。何か一つを避けてもらうとするなら、「(感染者の多い)東京の人間が地方に行くこと」、これをまず自粛してもらうことが、感染拡大には最も効果的でしょう。

マーケット感覚は、確かに商売をする上では有効であろうとは私も思います。でも、新型コロナの感染という問題への対処は、商売だけでは判断できない。この手の問題に関しては、何よりもまず、国民、住民の生命・健康を考えなくてはいけない。

もちろんその際、経済を無視することはできないけれど、感染が拡大して犠牲者が多数出ている状態では、経済はもとより成り立たないのですね。

だから、経済重視のためにも、感染拡大を早期に収束させることこそまず考えなくてはいけない。そのためには、不要不急の部分をまずカットすることから始める、というのが定石であるはずなのですね。

米国では、まずバーの営業を停止させる。我が国で大問題となっているのが「夜の街」であるのとは好対照です。我が国がさっさと夜間の酒場の営業を禁止してしまえば、これほどの感染拡大は防げたはずだし、旅行も安心していけるようになっていた可能性も高い。

そして、観光もまた不要不急の活動なのですね。そりゃ、観光産業にとっては必要な活動であるにしても、その活動自体が我が国経済に必須の価値を提供するわけではない。それがなくても、観光産業以外の部分で、我が国はやっていけるのですね。

だから、本来は、不要不急部分は活動を停止して、これで困窮する業界に対しては、緊急融資なり休業中の家賃・給与に対する補助を行うなどの措置を講じるのが最善手でした。

これらの業界を救済するために、感染拡大防止に逆行するような政策をとるなどということは、全く常識を外れたこと。

もちろんこの判断が、当該の業界においては、正常なマーケット感覚のなせるわざであったのかもしれない。でもそれは、この問題に対しては、正しい解決策ではない、それが私の感想、というわけです。

1 thoughts on “Chikirin氏の日記「Go to キャンペーン大混乱について」についての考察追加

  1. mi.mino

    >>これ、ちきりん氏が指摘するように、小池氏のビジネス指向ゆえだと思われますか?
    思いません。東京は税収が十分であるからです。

    資本主義経済では、資本つまりお金がエンジンで、政治はコントロール「ハンドル、コントロール」を主に担当します。政治は法律がそのおもな力であるからです。

    故に行政の長がマーケティングに優れているというのは褒め言葉とはいいがたいものです。本来はブレーキを役割をしているものがエンジンの役割を兼ねるというのはコントロール上ふさわしくありません
    リーマンショックはこの政治がブレーキという仕事を忘れたために起きた人為的な事故です。

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