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円安の招くもの

本エントリーは、内藤忍氏の4/19付けエントリー「円安で日本人は益々『ひきこもり』になる」に対する論評です。これはアゴラ記事でもあるのですが、アゴラにコメントしても出て行きませんし、文字数の上限もありますので、ブログ記事といたします。


内藤氏のエントリー

内藤氏のエントリーの趣旨は、円高になれば海外旅行のコストが上がるため、気楽に海外に出かけることができない、逆に、国内のコストパフォーマンスが上がり、日本人も国内で満足するし、海外の人には日本の魅力が増す、というものです。

そして最後を次の文章で締めくくるのですね。

私が大学生だった40年近く前の為替レートは、確か1ドル=260円くらいだったと思います。「地球の歩き方」を読んで、アメリカに行き、グレイハウンドバスで西海岸から東海岸まで横断しました。その時は、20ドル以下で泊れる宿泊場所を毎日探していましたが、それでも5000円以上でした。

これからの日本は、時計の針が逆回りするように、「あの頃」に近づいていくことになりそうです。何だか寂しい気分です。

あの頃

40年近く前といえば、1980年代の初頭、バブル景気の始まったころでした。当時、我が国の輸出産業は全盛を極め、世界に日本製の自動車、家電製品が輸出され、これに伴って還流するキャッシュが不動産や株式に投じられた時代だったのですね。

で、なぜその時、ドルが260円もしたのかといえば、これは因果が逆なのであって、ドルが260円もした、円の安い時代だったから、我が国の輸出産業が極めて強い競争力を持った、少なくともその一つの要因が為替水準だった、ということなのですね。

もちろん他にも要因はあったわけで、自動車であれば、燃費が優れる小型乗用車を安価かつ高品質で製造する技術力に優れていた、ということもありました。また、通産省の音頭で始まった超LSI技術研究組合の活動期間も1976年から1980年と時期を同じくしており、これが1980年代の日本の半導体産業の興隆期をもたらした要因の一つと考えられております。

そして今後

で、この先ですけど、ドル相場が260円まで行くというのは少々考えにくいのですが、150円台付近なら十分にあり得る。これは円の価値にして、民主党政権時代の円高水準のちょうど半分の水準というレベルなのですね。

その時生じる現象は、海外から見た日本の人件費が大いに低下するということ、海外から日本への旅行や投資、日本製品の購入が有利になるということで、結局は日本の産業が興隆し、輸出が増大するということ。これらは、悪い話ではありません。

一方で問題もないわけではなく、輸入品の価格が上がる、海外旅行が高くつくなどは、日本人にしてみれば困ったことでしょう。特に、原油や天然ガスなどのエネルギーコストが上昇し、これらは物価全般に上昇圧力を与え、生活費が多く掛かることも問題です。でも、経済が活発になれば給与水準も上昇するわけで、働いている人たちにとっては差し引きプラスになる可能性が高いですし、公的年金も物価スライド制がありますので、ものすごく困ったことにはならない。

現預金の実質的な価値は低下いたしますので、小金を貯め込んだ人たちにはマイナスですが、小金を貯め込んだ人たちとはつまり豊かであるわけで、この人達の多くは不動産や株式も保有しているはずで、こちらもすぐに生活が成り立たなくなるというわけではないでしょう。一部に困る人が出てくることはあり得るけれど、これは個々に対応すればよいことです。

何をしなくちゃいけないか

こうなってまいりますと、今後なすべき方向性が見えてまいります。

まず、日本経済再生のためには、円安は受け入れるべきでしょう。確かに円高は、国民全般の実質的な所得を高め、その時点では豊かになる。でも円高が続けば、日本の産業の国際競争力にダメージを与え、長期的な日本経済の衰退につながるのですね。

円安時代の経済を円滑に進めるためには、まずは輸出産業の競争力を高めること。インバウンドの環境を整備することは、多くの人に有利な職を提供するという意味があります。また、かつての超LSI技術研究組合のように、遅れている産業分野の競争力を高める措置を取る必要があるでしょう。

これには、情報技術が第一だし、その周辺を構成する電子部品、電子機器に係る技術を高めなくてはいけない。また、自動車はEV化が必須ということで、現在の内燃機関で競争力を保っている我が国自動車産業も、この先どうなるかはわからない。EV時代の自動車技術開発も注力すべき点、ということになります。

そして、一方の弱みである、エネルギー資源の問題をカバーすべく、新しいエネルギー源の開発にも注力すべきだし、エネルギー消費を大きく減じる技術にも注力すべきでしょう。前者は、自然エネルギーというのが一つの解ですが、ここは、さらに先を見て核融合開発でリードすべきではないかと私は考えております。そして後者は超電導技術が最たるもの。超電導技術は、強力な磁場を作る技術でもあり、核融合にも欠かせない技術なのですね。

超電導技術は、現時点では医療用MRIやリニアモータカーといった限られた分野での利用にとどまっています。でもこの先、冷却器の小型軽量化を含む利用技術が進歩すると、モータの省エネ化、小型化が実現する。これは、産業分野はもちろんですが、家電やEVにも応用分野は広がりますので、そのインパクトは計り知れない。世界の夜の光景を一新させたLED照明をはるかに上回る変化が世界にもたらされるでしょう。

こういった諸点をきちんと対応していけば、円安は、我が国にとっての厄災などでは全然なく、千載一遇のチャンスでもある。ここで打つ手を間違えず、一気に国際競争力を取り戻す、そんな政策を展開しなくちゃいけない。まさにそれが今なすべきことであると思うのですが、さて、岸田政権、どうでしょうか、、、

1 thought on “円安の招くもの

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