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黒田日銀、大勝負の行方は

アゴラ編集部の6/15付けアゴラ記事「『日銀が屈するまで国債を空売りする』とヘッジファンドが宣言」へのコメントです。


何が起こるかは、神のみぞ知るですが、海外投資家の日本国債保有高と我が国の外貨準備高の比率がカギではないでしょうか。

海外投資家の日本国債保有高は180兆円弱、我が国の外貨準備高は2021年12月末時点で約1兆4,058億ドル、その比率は128.5。つまりドル円128.5円以上の円安になれば、我が国の外貨準備で、日本国債の海外保有分をすべて買い取れる計算。この点が、弱った通貨と円とがちょっと違う点なのですね。

この条件は既に成り立っております。もちろんこれは、ネーキッドショートなどという禁じ手を使わないことが前提ですけど、そんなことをした日には、日銀が本気を出したらリーマンショック再びなどということにもなりかねない。

まあ、どうするか、難しいところではあります。


本件の詳しい解説は、4/29付けの本ブログ記事をご参照ください。

まあ、これだけではなんなので、簡単に解説をしておきます。なお、以下は私の理解によるものであって、間違っている可能性があることは否定いたしません。問題点を見出された方は、ご指摘をよろしくお願いします。

まず、中央銀行による国債の買い支えですが、日銀は、保有する国債の残高に応じて紙幣を発行することができますから、国債を際限なく買い支えることができます。これをおこないますと、日銀のバランスシートの貸方に紙幣発行残高が、借方に国債という資産が積みあがっていくわけですね。

この日銀の保有する国債は、「満期保有目的債券」としておけば時価評価の必要はなく、これを購入するための資金調達手段が無利子で返済不要の「紙幣発行」であれば、会計上の問題は何も生じません。(これやられると、日銀が買い入れた国債は、二度と市場に出てこないのですが、カラ売りの買い戻し、大丈夫なのでしょうか。余計な心配かもしれませんけど。)

次に、国債を売ればその代金としての日本円を手にします。それが海外勢であれば、円を売るため円安圧力が高まります。カラ売り勢にとってみれば、清算段階で円安となっておれば為替差益を得ることができます。このメカニズムが成り立てば、ファンドは大儲けです(安値での清算が条件ですけど。)

では、ファンドの儲けは誰の損かといいますと、円安ですから、円を保有していた人が損をする。ドルベースで値が下がった国債を保有している日銀は、一見損をしたように見えるけれど、対価として支払ったのは自分が刷った日本円で、円安の結果、負債に相当する紙幣発行残高がドルベースで縮小しており、合わせれば損は生じていないのですね。

それどころか、日銀には巨額の紙幣発行残高があり、ドルベースではこの総額が縮小して巨額の利益が生じた形です。この日銀の利益に見合う損を被るのは、円のキャッシュを積み上げていた個人金融資産の持ち主や、内部留保を現預金の形で積んでいた企業ということになります。ただしこれは、ドルベースで見たときの損であって、円ベースでは損になるわけではない。インフレになって円の価値が下がれば、実質的な損にはなるのですが、これまでのデフレで余分な利益を得ていたともいえるわけで、行って来い(損得帳消しの博打用語)ではあります。

このような損が発生することは、日本経済にとって悪いことかといえばそうでもない。つまりは、一ドル百円前後の円高が異常であったと考えるなら、これまでキャッシュを積み上げていた人の資産は(ドルベースでは)実力以上に評価されてしまっていたということ。1ドル200円の時に積み上げた円預金は、1ドル100円の時代では、ドルベースで二倍の価値となっていた。円ベースでは何も変わらないのですけどね。つまり、円安になって損をしたといっても、それは円高時代の含み益が消えただけのことです。

一方で、我が国は原油などの原材料を輸入に頼るしかなく、工業製品を輸出して外貨を稼がなければなりません。輸出して外貨を稼ぐ上で、円高は大いに支障になり、民主党政権時代のような甚だしい円高は、我が国の輸出産業を壊滅に向かわせてしまう。現に、電機産業の多くは海外に出て行ってしまった。自動車は、何とか国内の工場も維持できているのですが。円安でこれら輸出産業が再び活発に活動するようになれば、日本経済には大いにプラスなのですね。

もちろん、原料は輸入に頼るわけで、円安はこれらの調達コストを上昇させます。でも、原料調達費用は製品価格の一部に過ぎませんから、差し引きの利益は増大するのですね。そしてこの利益を、株主や社員ときちんと分け合えば、輸入価格の上昇による生活費の増加は、給与の上昇でカバーされるわけです。このあたりは配分の岸田総理に頑張っていただきたいところです。

円安は、その気になれば、円買いドル売りで対応できます。そしてそれができるだけの十分な額の外貨準備が我が国にはある。実に、外貨準備高の世界ランキングで、我が国は中国に次ぐ世界第二位のポジションにある。米国やロシアのような巨大な国家よりも、あるいはドイツや北欧のような工業的に成功を収めている国々よりも、あるいは産油国や資源国よりも豊富な外貨が我が国にはある。

だから、円安が問題であると思えば、いつでも円買いドル売りの介入をおこなえばよいのですね。でもこれは、すぐにはしない方が良い。為替水準が十分な円安になるまで、放置する。ビナイン・ネグレクト。無策の策。これが我が国の為替政策においては、最上の策になるのではないかと思いますよ。

まあ、ドル円150円までは放置でよいと思いますけど、200-250円だって、それほどひどいことになるわけではない。そして、円安の副次的効果は、円ベースで見たときの外貨準備の価値が膨れ上がることです。

さしあたり過剰に供給される円紙幣が国債の海外保有残高に対応するなら、最初に述べましたように、ドル円128.5円以上の円安であれば、外貨準備を取り崩すことで国債買い支えのために過剰に海外に供給された円をすべて吸収することができます。この場合は、円安もインフレも生じないのですね。

でも、多少のインフレは好ましいことであり、円安も大いに好ましいことですから、外貨準備をすべて取り崩すようなことはしなくてもよい。要は、その他の余計なことをしない限り、このインフレはコントロール可能なのであって、ハイパーインフレなどを心配する必要はないのですね。

もちろん、行き過ぎた円安に対しては、円買いの介入を行うことになるのでしょうが、円安になって取り崩す外貨準備からは、巨額の為替評価益が発生いたします。これを利用して、円安で困窮する人々への生活支援をおこなえば、この激動の時期を日本社会は乗り切り、黄金の時代を迎えることができるというものです。

岸田さんには、このあたりの舵取りを、ぜひともお願いしたいところです。


8/2追記:アゴラの本エントリー「『日銀が屈するまで国債を空売りする』とヘッジファンドが宣言」に以下のコメントを追加しました。

勝負の結果が出ましたね。結局は日銀の勝ち。不敗伝説に一ページを追加しました。ソロスは例外、といったところでしょうか。

それにしても、4.5兆円もカラ売りして、しかも特定銘柄を集中して売ったりして、果たして簡単に買い戻せるものでしょうか。日銀がへそを曲げたら、踏み上げ、などということにもなりかねない。

まあ、ここは、穏やかな処理をしていただけるものとは思いますが、、、

1 thought on “黒田日銀、大勝負の行方は

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