中村仁氏の7/4付けアゴラ記事「連日の日銀批判で日経紙が危機感をむき出し」へのコメントです。
1992年に英ポンドを売り浴びせ、英蘭銀行を打ち破った国際的投資家・ジョージ・ソロス氏の前例も引き合いに出されています。この勝負に負けたら、日銀は巨額の損失をこうむり、国民につけがまわってきます。
1992年のポンド危機は、英国の経済的衰退にもかかわらず、実力以上に評価されていたポンドが売り浴びせを食らったもので、最初からポンド防衛には無理がありました。
2022年の円安も同じで、100円付近のドル円は、日本の経済的実力に対して無理があった。だから失われた30年であり、諸外国をしり目に給与が上がらない。
ここで日銀が円防衛に動くことは、ポンド危機の英国と同様の誤りを犯すことになる。円相場は経済的実力に相応の水準に動くしかない。
黒田日銀総裁が考えておられることは、そういうことではないかな?
以下はブログ限定です。
この状況の難しいところは、黒田氏にせよ岸田総理にせよ、好ましい円相場を口にすることはできないという点なのですね。
万一彼らが「1ドル150くらいが適正だと思う」などと語った日には、一気に相場が動いてしまい、大混乱となります。また、岸田氏がそのようなことを語ると、政府が円安誘導に動いているのではないかという、あらぬ疑いをいだかれ、海外からは非難の対象になってしまいます。
ここは、政府、日銀サイドとしては、何も語らず、何もしない。無策の策で行くしかないところです。
一方の日経新聞のイライラも理解できないではない。一般に現状維持を良しとする「ステイタス・クオ・バイアス」という、ある種の偏見があり、正常な判断をしにくいという現実があるのですね。
経済新聞の読者のような、経済の現場の人たちにしてみれば、為替相場などというものは、そうそう動いてもらっちゃ困る。儲かることはうれしいかもしれないけれど、損が出ることなどあってはならない。平穏無事が一番なのですね。
とはいうものの、現在の日本経済は、バブルの崩壊以来、失われた30年が続いており、そろそろ40年に突入しようかというところ。1995年のインターネット元年以来、情報革命に乗り遅れた我が国はGDPも給与所得総額も全然伸びない。民主党政権時代の異常な円高で、生産工場の多くが海外に出て行ってしまった。こんな状況は、いつまでも続けておられないのですね。
そもそも1ドル100円付近の円高は、プラザ合意を受けた200-250円付近から100円付近までの円の急騰によるもので、プラザ合意の時点では、我が国の製造業は圧倒的な国際競争力を持ち、「集中豪雨的輸出」などとも呼ばれるように世界中に製品を売りまくっていた。
でもそれから30年もたってみれば、省エネでクリーンな自動車は、日本の専売特許でもなければ何でもない。家電製品に至ってはヨーロッパの後塵を拝している。おまけに情報技術の利用では完全に出遅れており、ジャパンアズナンバーワンなどと呼ばれた製造業の強さは、いまや見る影もない。それで100円直上のドル円が続くと考えるほうがおかしいのですね。
上のチャートは、これまでにも何度かお見せした、この間のドル円の推移ですけど、普通に考えれば、1ドル100円付近の水準がいつまでも続いていたのがおかしくて、おそらくは1ドル200円の直上付近にまで戻すのがこの先の流れと考えるのが自然でしょう。
まあ、まずは150円を上回った時点で、おそらくは、製造業の国内回帰が少しずつ起こるはず。これは、円安の流れに抗する要因とはなるけれど、国内回帰した製造業が圧倒的強さを持つものでもない限り、円安の流れは止まることなく、適切な水準に収れんしていくはず。そこが200円直上じゃないかな、というのがこのチャートからの私の読みです。
まあ、あたるも八卦ですから、外しても怒らないでくださいね。
黒田氏や政府首脳にしたところで、そのぐらいのことは、とうの昔に考えておられると思いますけど、それを口に出せないのがつらいところ。ここは、野党やマスコミの批判を柳に風と受け流し、ビナイン・ネグレクトに徹するしかない、そういったところでしょう。
まだあわt(りゃ