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「新しい資本主義」に必要なもの

濱田康行氏の7/7付けアゴラ記事「『新しい資本主義』批判」へのコメントです。(ブログに追記あり)


しかし、資本の側から賃上げをする要因は 、 少なくともミクロ的には見当たらない。労働組合のかわりに、資本の側のマクロ存在である経団連が個別資本を説得するよりないが、応じるのは 、 そこでなんらかの席を得ようとする新興資本家ばかり である。

これは面白いポイントです。資本の側から賃上げをする例は、たとえばフォードの例にみられます。「小型で、丈夫で、シンプルな自動車を安価につくり、しかも、その製造にあたって高賃金を支払おうというアイデア」、ですね。https://www.webcg.net/articles/-/36790

人類の福祉を進めるものは技術革新であり、フォードの例ではT型フォードという優れた製品とコンベア生産システムがありました。同様のことは、狩猟から農耕へ、筋肉からエンジンへ、化学肥料、電気、石油など、人類の歴史にも多々あったのですね。

で、今の日本は、情報革命への対応に失敗した。それが失われた30年の一つの要因なのですが、ならばこれにキャッチアップすればよいかといえば、それだけでは不足。ここは、次のエネルギー革命(核融合、超電導、エネルギー貯蔵)をリードしなくちゃいけません。

今の日本、そのためのけっこう良いポジションに付けているのですが、それを分かっていただけないのが大問題なのですね。


(7/8、アゴラコメントに以下を追記しました。)

上のコメントに関して説明を追加しておきます。

結局のところ、給与を上げるためには労働生産性の向上が必要だけど、技術革新があると、労働生産性は爆発的に高まる、ということなのですね。

フォードの戦略は、こうして高まった生産性の果実を労働者にも手厚く配分することで、自動車という自社製品の市場を拡大しようというものでした。

そういう意味で情報革命は、一つのチャンスだったのだけど、我が国はそれが生かされず、GAFAに代表される海外企業にもっていかれた。

ならば次の技術革新でリカバリーすることを試みるべきだし、その可能性を我が国は握っている、というのが上の主張です。まだ、がんばれば、なんとかなるのですね。


7/8追記です。

結局のところ、給与を上げるには労働生産性を高める必要があるのですが、フォードの例にみられるような技術革新は、労働生産性を跳ね上げる効果があるのですね。

これは、弥生時代のコメの生産、蒸気機関の発明などによる産業革命、化学肥料による緑の革命、電気エネルギーの利用、石油化学の発達等々、これまでにも人類は何度も経験してきたのですね。

元エントリーの「『新しい資本主義』批判」には労働生産性の向上というポイントが欠けております。

金利を動かしたり、分配に手を加えたりすることは、社会に存在する価値の総量には手を加えず、これを右にやったり左にやったりしているだけなのですね。だから、資本の側から、給与を上げるという話にはならない。

技術革新による生産性の向上は、社会に存在する価値の総量を(爆発的に)増加させる。その結果、資本のサイドも利益を増大させ、労働者の側も給与の引き上げという形で利益分配に与ることとなります。

今日の日本の問題は、情報革命という技術革新に完全に乗り遅れた。さらに悪いことには、経済活動がグローバル化し、米国の情報産業が簡単に我が国で活動できてしまう。この結果、技術革新の果実は海外企業の手に渡り、日本国民に分配される割合は非常に低い。こんなことでは、給与総額の増加がほとんど見られないことも、何ら不思議なことではないわけです。

ならばこれから情報技術にキャッチアップするかというと、それだけでは不足なのですね。なにぶん、マーケットの主要部分は既に海外企業に押さえられている。これを崩して日本サイドが大きな利益を得ることは不可能に近い。もちろん、やらないよりはやったほうが良いのだけれど、それだけで十分であるとはいいがたい。

そこで次の技術革新のネタを探せば、ここにエネルギー問題という、宝の山がある。一方には地球温暖化による化石燃料への否定的見解が広がっている。これに関しては、長い目で見れば資源の枯渇という問題もあったのですが、これがより目先の問題として浮かび上がっているのですね。また、福島の事故は原子力に対する警戒心を増大させ、ロシアのウクライナ侵攻はエネルギー問題をさらに深刻化させている。

そして他方には、核融合の実用化を前倒しにする動きがあり、超電導技術も着実に進んでいる。そしてこれらの技術開発で、日本は先行集団につけている。ならば、国家戦略として、この動きを加速するという選択もあり得るのですね。

まあつまり、そういうことをやらないで、小手先の動きに終始しても、大した効果は期待できない。やるならきっちり、大きな成果が狙える戦略も、(少なくとも同時に)進めなくちゃいけないのではなかろうか、というのがこのコメントの趣旨でした。

わかっていただけますでしょうか?

1 thoughts on “「新しい資本主義」に必要なもの

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