有馬純氏の7/25付けアゴラ記事「西側諸国の気候政策による『自殺』」へのコメントです。ブログに追記あり。
この問題を考えるとき、タイムスパンという面にも注目しなくてはいけません。地球温暖化は数十年という長い期間で問題になるのに対し、今日のエネルギー問題は、ここ数年の話なのですね。原発にしたところで、既に一度動かしている原発の運転を続けたところで、核のゴミがそうそう増えるわけでもなく、すぐに事故が起こるわけでもない。
要は、なし崩し的にダメな状態を続けるのではなく、問題が解決された次の世代への移行を確実な形としたうえで、その移行時期を多少先送りするという方向はあり得るわけです。
問題は、その次の世代の具体的姿なのですが、化石燃料はいずれ枯渇するということで、温暖化の問題がなくてもこれに代わるものを考える必要があります。で、その具体的手段が風力太陽などの自然エネルギーと、核融合もしくは(安全な形に改良された)原発ということになるのですが、これを使ううえで解決しておかなくてはいけない課題がある。
その一つは、エネルギーの貯蔵技術で、設備コストの高い核融合などはフル運転が前提となる一方で、自然エネルギーは出力が勝手に変動する。だから、現在火力発電で調整している需給バランスを、他の手段で行う必要がある。それが、広い意味でのエネルギー貯蔵技術ということになります。リチウム電池は高価ですから、多分、水を電解して、水素の形でエネルギーを蓄えることになるのでしょう。
そして、ベースロード電源の有力候補が核融合。国際協力で取り進めているITERは2025年の試験開始、核融合スタートアップ各社の実用化時期は2030年代と、化石燃料の置き換えに間に合うタイミングとなっている。我が国がリーダーシップを得るためには、電力貯蔵と核融合を、日本独自の技術でものにしなくちゃいけないのですが、現在けっこう良い位置につけており、ここは頑張りが必要なところです。
以下ブログ限定です。本ブログでご紹介した、核融合関連記事を以下にリストアップしておきます。
継承すべき『技術』:もんじゅ失敗で宙に浮いているようですが、高速増殖炉技術は、きっちり次世代に継承されなくてはいけません。
「新しい資本主義」に必要なもの:技術革新により生産性を向上させる。これなくして、大幅な経済発展はあり得ないし、給与の増加も期待薄なのですね。
地球温暖化はすぐに解決!:核融合技術が実用化されれば、温暖化は自動的に解決する。上の議論は大昔からわかっております。
リチウム版OPEC:リチウム資源国が結託する動きがあるのですが、リチウムは海水からも得ることができ、資源問題は発生しにくいと思われます。
TAE Technologiesの新しい核融合技術:ビーム衝突型の核融合炉で陽子とホウ素原子核を反応させるp11B反応による新しい核融合技術を、米国のスタートアップTAE Tech-nologiesがトライ中です
核融合時代に向けてやっておくべきこと:種々の核融合反応のまとめです。目指すは核融合2.0なのですね。我が国の政策がいかにあるべきかに関しては、このエントリーが主に扱っております。
日本もエネルギー戦略を!:上と同じようなお話ですが、発散気味です
核融合のインパクト:ベンチャーが30年代の実用化を目指して核融合に取り組み始めたという情報の第一報。こういうことが現実になりますと、話が大きく変わってまいります。
どうする、エネルギー:エネルギー問題に対する解の数々です。
がんばれ水素