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成熟したって?それ、幻影では?

岡本裕明氏の7/26付けアゴラ記事「国家が成熟するほど金利は下がる:本当に物価高を演出しているのは何か」へのコメントです。


たしかに、先進国においては、産業が成熟化して投資機会も減っていく。だから、金利も低下する方向にあることは事実なのでしょう。でも、その『成熟化』なるもの、一つ間違えれば幻想なのかもしれません。ステイタス・クオ・バイアス(現状維持バイアス)というものがあって、人は現状を最高のものと誤認しがちなのですね。

晴れた日にはGMが見える」という古い書物の中で、やがてはGMを追われるデロリアンが「1949年のオートマチック・トランスミッションとパワーステアリング以来、自動車業界でこれといった製品革新が行われていない」として、技術開発の停滞を嘆くのですが、これは技術が成熟化していたわけではない。やがて大気汚染が軽微で燃費もよい日本車に米国市場が席巻されることになるのですね。

堀江貴文氏によるニッポン放送買収が話題になっていたころ、テレビのインタビューで「地上波デジタルについてどう思うか」と質問した人がいた。堀江氏は、愚策だと切り捨てたのですが、別の人が割り込んできて別の話題に振ったのですね。これは、テレビ局にとって触れちゃいけない話題なのでしょうが、実はこれ、堀江氏が正しい。

90年代のクリントン政権の時、おそらくはゴア副大統領主導でNIIという文書がホワイトハウスから出されたのですが、その中で、放送をファイバーに移行し、空いた電波帯域を移動体通信に譲るという方針が語られておりました。我が国でもFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)なる政策が進められていたのですね。で、インターネットも爆発的に普及していた。

今、テレビのコントローラを見れば、チャンネル番号の他にカラフルなボタンがある。放送局、どうするつもりでしょう。その他の様々な部分でも、成熟化していると思っているのは幻想にすぎず、成熟化した構造が崩れつつあるのかもしれない。薬剤師の話などもその一つのような気がします。長い人生、豊かに送ろうと思えば、見えている世界が「現状維持バイアス」故の幻想であるのかないのかくらい、ちょっと考えておいた方が良いと思います。

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