池田信夫氏の8/26付けアゴラ記事「『次世代革新炉』でエネルギー問題は解決するか」へのコメントです。
10~30年後に核融合が実用化するというのがこの先のエネルギー政策のメインシナリオであるとしても、この中に現在の原発をどのように組み込み、未来につなげていくかは考えておかなくてはいけません。
まず一ついえることは、すでに発生し、この先も発生し続ける高レベル放射性廃棄物の処理が必要であるということ。これを考えると、高速炉による廃棄物量の圧縮が有益であり、安全な高速炉をまず持つ必要があります。
次に、高速炉が生み出すプルトニウムは何らかの形で処理しなくてはいけない。これには、原発燃料とすることが最も効果的であり、安全な原発も一定量運転し続ける必要があるのですね。
化石燃料を用いた発電を抑制するとなりますと、夜間に発生したエネルギーを昼間に電力に変換して供給する技術が必要です。溶融塩の熱で蓄積するというやりかたは、これに使えるものなのでしょうか? これが難しいとなりますと、やはり何らかの化学エネルギーとして蓄積するしかないように思うのですが、、、
あとは、次世代エネルギーの中核をなすと思われる、核融合の技術で後れを取らないこと。何が本命になるかも今のところはよくわからず、幅広い検討をしておく必要があるでしょう。この流れにうまく乗れれば、我が国の技術は再び世界をリードできるのですが、、、
他の方のコメントに返信を入れました(8/27)。
長山 好夫
日本での核融合研究では科学技術の進歩が止まっています.ITERは核融合研究課題の一つである核燃焼の実験装置ですが,それだけは研究が全然足りません.でもITERが核融合資金を独占しています.実用化に向けた当面の課題である「プラズマの定常維持」,「中性子で損傷した壁の交換」,「プラズマからの熱流束対策」.「低コスト化」については手が付けられていません.原因は資金不足です.課題解決のアイデアはありますが,現有装置や人員の維持すらできず,新技術開発については提案すら受付られてません.
原因はITERだけではありません.旧原研が旧動燃に乗っ取られ,核融合資金と人員をもんじゅにとられ,そして核融合部門は外部に追い出されました.もんじゅ中止後も核融合部門は傷ついたままです.
一方,学術会議が核融合科学研究所のLHDを大型プロジェクトから外されました.核融合研ではヘリカルに入れ込みすぎて他の研究課題をおろそかにしたため,研究テーマがありません.
自民党の選挙公約に核融合開発が挙げられていましたが,選挙勝利後は無視のようです.
瀬尾 雄三
専門能力が期待されて高い処遇を得ている職業人は、それぞれの業務上の判断を、己自身の利益のためにではなく、組織なり社会なりに期待された問題解決なり、共同の利益のために使わなくてはいけないのですね。組織や社会の利益をないがしろにしておのれの利益追求に専念する人は、いうなれば背任行為を働いているわけで、非倫理的、非道徳的な行為であると思わなくてはいけません。
一般の先進国においては、特に専門能力を期待される職業人にはそれに応じた倫理感も要求され、本人もそれを意識しているのですが、発展途上国や非民主的国家においては、このような意識が薄い。だから、これらの国々は、いつまでも、低いレベルにとどまってしまうのですね。
翻って我が国を眺めるとき、およそ、1990年代の情報革命の頃から、一部の職業人の倫理観の低下が生じてしまった。これは、情報技術が業務の全領域に適用されるものであるにもかかわらず、事務職や官吏の多くがこれを使いこなすことができず、イノベーションに背を向ける形で、組織の利益を損ねる道を選んでしまったのですね。
それが、我が国の失われた30年(40年目に入り込んでおりますが)の原因で、アカデミズムも似たようなことになっていることは、専門能力のたこつぼ化を思えば無理もない話ではあります。どこかでリセットが必要なところではありますが、たぶん、我が国が途上国化し、優れた頭脳が外資系に行くといった形で現在は進んでいる。ちょっと寂しい話ではあります。
がんばれ水素