中村仁氏の10/30付けアゴラ記事「財務官の先輩、後輩に酷評される黒田日銀総裁の破綻」へのコメントです。
批判されやすい政策ではあるとは思いますけど、黒田氏の戦略はわかりやすいように私には思われます。つまり、『デフレを脱却する』これが最優先で、エネルギー価格の上昇、米国の金利引き上げとその結果としての円安は、まさに千載一遇のチャンス。現に、我が国の物価は上がり始めております。
そして、急激な円安は、急激な物価高を招き、国民の痛みは増大いたしますし、国際間取引の実務にも支障をきたす。だから黒田氏は、為替の急激な変動には対処する旨、以前から語っておられました。日銀の二度にわたる為替介入は、まさに急激な円安の阻止であり、極めて短時間に投機筋に大きな損失を与えたはずです。しかし、これはインフレ政策をやめたわけでもなく、再び徐々に円安に向かうことは是認するはずです。
円安、インフレは、日本経済回復に特効薬的に効くのですが、短期的には国民生活が厳しくなる。これは、国内企業の業績向上と給与引き上げが伴えば、国民の生活はむしろ楽になる方向となるはずですが、これにはタイムラグがあるのですね。
30兆円近い巨額の経済対策も、円安インフレと、収入増のタイムラグを補償する目的であれば、まことに当を得ております。額の巨額さに批判があるようですが、戦力の小刻みな投入もまた批判されるところ。ここはある程度の規模で、一気に国民生活の安定を目指す方向も悪くはない。
黒田岸田ラインの経済対策、今のところは一応合格点をつけておいてよいのではないでしょうか。厳しい英国の状況に対して我が国がもつ有利さは、巨額の外貨準備高。このアドバンテージを生かして、うまく円安にソフトランディングすることができれば、日本経済もいよいよ30年間の眠りから覚め、上昇過程へと移行するのではないでしょうか。
まだ