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問題の所在を見極めなくては

中村仁氏の12/18付けアゴラ記事「米中経済の逆転阻止にはドル高・元安も効果がある」へのコメントです。


OECDのデータでは、主要国の中で日本の名目賃金だけが過去30年間も横ばいです。米英加豪などはこの間2、3倍になっています。日本だけが世界経済の孤児になっている。異次元金融緩和、財政膨張の長期化に甘えて新陳代謝のなくなった経済構造がその要因になっている。

30年前に起こったことは、1985年のプラザ合意を受けた、円の急騰(200~250円/ドル⇒100~125円/ドル)と、1990年代の情報革命への乗り遅れだったのですね。異次元金融緩和はアベノミクスの時に導入された政策です。

2008年のリーマンショックを受けた景気の落ち込みに対して、ヨーロッパ、米国等がQEIIと呼ばれる量的緩和措置に踏み切る一方、我が国の民主党政権は、金融緩和には踏み込まなかった。その結果、一時80円/ドルを割り込む急激な円高が進み、我が国の製造業が海外に逃避する空洞化が進み、貿易収支の黒字はなくなり、雇用が失われ、追い出し部屋があちこちに生まれた。安倍政権誕生後の異次元金融緩和で、ドル円は元の水準まで回復、これを「円安誘導」と呼ぶのは間違ってはいませんけど、異常な円高を訂正しただけなのですね。

30年前の急速な円高は、その結果円建ての預金や給与はドルベースで倍増、日本人は一夜にしてお金持ちになり、不動産バブルが発生、これが5年後に崩壊すると、今度は雇用の危機、就職氷河期が到来したのですね。時を同じくして情報革命が発生し、事務職の生産性を一桁高めたのですが、我が国でこれを採用するわけにはいかなかった。

急激な円高と情報革命への乗り損ないは、国内生産業の不振と新しい産業への出遅れを生じ、その結果、日本のGDPも給与総額も30年間上がらない。情報技術の利用の遅れの要因には、我が国の固定的な雇用慣行もあると指摘されており、この変革が、今後の我が国の重要なテーマとなるでしょう。円安の進行は、おそらくこの変革を後押ししてくれるはず。問題の所在は、きっちり見極めなくちゃいけません。

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