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冷水塔で高まる原発の安全性

野北和宏氏の4/25付けアゴラ記事「ノギタ教授が覗いた九州電力の原子力発電」へのコメントです。


福島の原発事故の反省を踏まえるなら、我が国の原発に『冷水塔を義務付ける』というのも一つの解だと思います。https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2100G_R20C11A3000000/

これは、沿岸部の原発においても、冷却系統の保全のために有効でしょうけど、冷水塔を義務付ければ沿岸部に原発を立地するインセンティブが失われ、原発立地が内陸部へと移ってくれることが期待できるからです。

原発が内陸部にあれば、福島に壊滅的結果をもたらした津波被害のリスクもないであろうし、海外から攻撃を受けるリスクもそれだけ低下するのですね。

JR横須賀線は、元々、軍港横須賀への物資弾薬輸送を想定して建造されたのですが、そのルート選定に際して「沿岸部を避けよ」との要望が軍部からあったとのこと。これは、艦砲射撃による破壊を心配したが故でした。

今の時代に艦砲射撃による国土攻撃など、まずないとは思いますが、沿岸部にあればそれだけ他国からの攻撃に弱いことには何ら変わりません。「治にいて乱を忘れず。」日本国民がこの心を持ち続けることも、一つ大事なことではないかと思います。


以下、福島原発事故直後の日経新聞記事の主要部を引用しておきます。

福島第1原子力発電所での放水作業を指揮した東京消防庁の緊急消防援助隊の警防部長は「海からの取水場所を探すのに苦労した」と記者会見で明らかにした。原発施設の浜側は津波が押し上げた泥などで一面が覆われ、作業が困難だったらしい。

福島第1原発はいま、眼前にある海から切り離されてしまっている。海に依存するという日本独特の原発のありようが、今回の大事故の根っこにある構造的要因だ。

欧米の多くの原発で、外観を見てだれの目にも印象的なのは、白い蒸気を上げる巨大な冷却塔だ。1979年に炉心溶融事故を起こした米スリーマイル島原発も例外ではない。こうした原発では川からくみ上げた水で原子炉などを冷やす。温かくなった河川水をそのまま川に戻すわけにはいかないから、冷却塔で空気で冷やしてから戻す。そこには空冷の仕組みがある。

日本の原発に冷却塔はない。原発で発生した余分な熱は海水で取り除き、巨大な自然の放熱器である海に流し込む。完全な水冷方式である。だから、すべての原発は海岸に立地する。誤解のないように言い添えれば、通常は海水で直接原子炉を冷やすのではない。真水の冷却水で原子炉を冷やし、熱くなった冷却水の熱を海水で取り除く仕組みだ。

こうした構造であるから、海水を取り込めなくなると、原子炉を冷やせなくなる。福島第1で起きた電源の全喪失という事態は、冷却水を冷やす海水ポンプも動かなくなったということだ。詳しい情報が表に出ていないようだが、仮に海水の取水施設に大きな損傷があれば、所内電源が回復し冷却装置が動き出しても、冷却水を冷ます海水の確保に苦労する事態も考えられる。

福島原発事故の直接の原因は、電源の全喪失により冷却ができなくなったためなのですが、冷却に必要なものは、電源以外に、冷却水とこれを冷やす海水も必要であったのですね。福島の事故の際にこの部分がどうであったかはわからないのですが、海水の取入れ不能という事態もあり得ることから、冷水塔が安全性の向上に寄与することは確かでしょう。

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