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効果はあれど不十分な黒田改革

中村仁氏の5/1付けアゴラ記事「植田新総裁にはマネタリズム否認の政策検証を求めたい」へのコメントです。


異次元緩和策を始めた黒田総裁は、「通貨供給量2倍、2年、物価上昇率2%」とのスローガンを掲げました。植田氏の言うように「輸入物価を起点とする物価上昇」(資源高、円安による)だとすると、マネタリズムの効果はなかった。植田氏は「政策、時期によって濃淡はあるが、効果があった」とも発言しています。どちらが本音なのでしょうか。

普通に考えれば、2008年のリーマンショック以来、欧米の中央銀行が大規模金融緩和に踏み切ったにもかかわらず、白川前々日銀総裁はそれができなかった。すでにゼロ金利だから、それ以上はできない、というのは理屈では正しいのですが、黒田前日銀総裁が「異次元」緩和をやってのけたので、これは言い訳にはならないのですね。

黒田総裁の異次元金融緩和の効果は、ドル円に明瞭に表れている。白川時代に極端な円高に至り、日本企業の空洞化が進み、雇用が失われ、株価も低迷した。それがアベノミクスですべてが好転している。これを見れば、「効果がなかった」とは言えないのですね。

ロシアのウクライナ侵攻と、なぜか生じたドル円150円までの円安の結果、「輸入物価を起点とする物価上昇」が生じたことも事実であり、これは金融政策とは関係ない。だけどその事実がアベノミクスなり黒田氏の異次元金融緩和の成果を否定するものでもない。現実の世界は複雑だ、というしかなさそうです。

別の見方をすれば、異次元金融緩和は効果はあったが十分ではなかった、とも言えそうです。これは、アベノミクスの第三の矢、構造改革が十分ではなかったこともありますが、雇用制度その他の日本企業の抱える構造的問題にかかわり、そうそう簡単に改善できるものでもない。これは今後の課題といえるでしょう。

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