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宇露戦争の行方:最良と最悪は

野口和彦氏の5/24付けアゴラ記事「道徳主義の誤謬を犯す専門家たち」へのコメントです。


人命の損傷を最小にすべしというのもある種の道徳主義ではないでしょうか。

リアリストの望むところは、ロシアの弱体化であり、核兵器が保有困難となるところまで弱体化すれば理想的と考えているのではないでしょうか。だから、ロシアの損傷を最大化するため、ウクライナに軍事援助することは大いに意味がある。和平などとんでもない、というところじゃないかな?

たしかにウクライナの地で、ウクライナ人とロシア人の命が失われることは不幸なことだし、できれば避けたい。しかし、地上に大量の核兵器が存在するという事実は、人類絶滅のリスクもはらんでいる。現にプーチンはそのような危険を冒すような言動もみせている。

ならばここは、ロシアを弱体化し、四分五裂状態として核放棄させる。次に中国と西側世界で核廃絶に向けた合意が得られれば、人類の未来は、かなり安全なものになるのですね。この方向に進むためには、多少の人命が失われることも正当化されるのではないか。これがリアリズムというものでしょう。

最悪のシナリオはプーチンロシアの勝利に終わることですが、二番目に悪いシナリオは、ロシアが妥協すること。プーチンは妥協しないにしても、プーチンに似た人物がプーチンを廃して現実的な停戦合意に持ち込むことなのですね。それでは、ロシアの核はそのままだし、失われた人命は戻ってこない。最悪に近い姿だと思われませんか?


返信がついております。

野口 和彦

コメントありがとうございます。リアリストの泰斗であるハンス・モーゲンソーは「外交のおもな目的は、絶対的勝利と絶対的敗北のどちらも回避することであり、さらには、交渉による妥協という中間領域で相手と接触することである」と言っています(『国際政治(下)』353頁)。こうした外交術が、ロシア・ウクライナ戦争には求められるのではないでしょうか。


糸山 卓

端的に言えば、ロシアの決定的敗北はリアリズム的には回避すべき事案です。

核保有国の決定的敗北は、核による暴発につながる可能性があるからです。

妥協は悪手ではなく、英知でもあるのです。


瀬尾 雄三

野口和彦さん

> 「...交渉による妥協という中間領域で相手と接触することである」...こうした外交術が、ロシア・ウクライナ戦争には求められるのではないでしょうか。

露宇戦争は、ある意味絶好の機会なのですね。20世紀後葉のソヴィエト崩壊以来、ロシアの低迷する国力と過剰な核兵器というアンバランスな状態が続いている。このアンバランスはどこかで崩れざるを得なかった。それが今、というわけです。

日本の評論家、マスメディアは、伝統的に東側世界に肩入れしており、その流れでロシアに与する言動が多いのですが、世界の潮流はロシアの衰退と事実上の消滅を狙っているのでしょう。その表れが、このエントリーに引用されている、露宇戦争が当分続くであろうという予測なのですね。

すでに弾がないとかワグネルが騒いでおりますが、戦争継続のための資源が決定的に不足しているロシアに対して、ウクライナには西側の継続的な支援がある。ならば、長期戦での絶対不利はロシア側で、戦争を続ければ続けるだけ国力が衰退する。この先に待つものは、核兵器を保持し続けることもできないロシアなのですね。

「外交のおもな目的は、絶対的勝利と絶対的敗北のどちらも回避すること」かもしれませんけど、露宇戦争はもはや外交の段階を超えた力勝負の段階。ありていに言えば殺し合いなのですね。かくなるうえは、ロシアの事実上の解体。それしかないことは、第二次大戦の終わらせ方でも良くわかっていることだと思います。

1 thoughts on “宇露戦争の行方:最良と最悪は

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