濱田康行氏の7/25付けアゴラ記事「衰弱する資本主義⑨:未来の中央銀行」へのコメントです。
円安は、それが一定期間、持続すれば、投資の減少、所得分配の変更、などを通じて日本経済の構造を変化させ、悪くすると、衰退を加速する。二人の著者は心配しているのである。
ということですが、自国通貨安政策が「近隣窮乏化政策」と呼ばれるように、円安は自国経済にはプラスの効果がある一方、他国の経済には打撃を与えます。これが、普通の経済学の教えるところです。
ところが、ここで紹介されているご意見は、全く逆となっております。ちょっと不思議にも思えますが、一国経済全体ではなく、消費者の目線で見ればそうなるのですね。すなわち、消費者にとっては、自国通貨安は所得の実質的な減少となりますので、歓迎すべきものではないのですね。
この手の国家全体の経済的消長を無視して消費者の立場に立つ論は、野党側の主張としてはまことにごもっともで、我が国の知識人が伝統的に野党的、左翼的立場を踏襲していることから、この手の議論が多いことも納得のいくところです。
しかしながら、国民の多くにとっても、一国経済が沈滞してしまっては、たとえ一時的には豊かになろうとも、先々の生活が悪化する。それが左翼の狙いだとは言いませんが、ここは、長い目で見て、日本国民の幸福を追求すべきところではないかと思います。今の円安は、日本経済の弱体化に見合ったものでもあります。円安の脱却は、社会の効率化などによる日本経済の強化によって、なされなくてはいけないのですね。
三方よしじゃないからなあ