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「科学性も正当性も」大事です

高橋克己氏の9/1付けアゴラ記事「処理水放出、国際会議で発信すべきは『正当性』か?」へのコメントです。


海洋投棄が検討できる対象物①~⑧に「水」が含まれていない上、「付属書一」の「3.」は僅少レベルの濃度の放射性物質を含む①~⑧を「投棄の対象としてはならない」としているので、冷却水や処理水の海洋投棄はできないと読める。

ロンドン条約が対象としているのは、内海の外側の海洋における投棄であり、内海(湾内など、両側の岬の先端を結んだ線の内側)や河川などへの放出は対象外です。

今回の福島の場合も、海底トンネルなどを経由せず、海岸線に設けた排出口から直接排出すれば、ロンドン条約の対象外とみなされたはずです。そうであるにもかかわらず、海岸線から1kmも離れた沖合まで海底トンネルを掘って、そこで放出しているのはなぜか、という疑問が生じるでしょう。

それは、とりもなおさず、国内世論が納得しなかったからではないのかな? つまり、処理水は安全だと、我が国がいくら海外に説明しても、自らがしていることは、国内の不安を解消するために海岸線を遠く離れたところで放出している。

これでは、海外に対する「科学的」説明も、あまり説得力のあるものとはならないのではないか。さらには、海底トンネル経由の放出で、ロンドン条約の対象となる可能性が生じてしまったことは皮肉な結果と言わざるを得ません。この手のことは、場当たり的な対応ではなく、全体を見渡した上での戦略的対応が必要でした。この先も、ですが。


他の方のコメントに返信しました。

Hiro Yama

ロンドン条約の解釈について多少の誤解があるようですのでコメントします。ロンドン条約の規制対象は、船舶、航空機、プラットフームまたはその他人工の海上構築物からの投棄を対象としていますので(Article III 1(a))、今次日本の投機はロンドン条約の規制対象とはならないというのが一般的解釈と考えられます。


Hiro Yama

すみません、「今次日本の投棄」です。


瀬尾 雄三

Hiro Yamaさん

> 人工の海上構築物からの投棄を対象

「海上構築物」ではなくて「海洋構築物」です。英文では、“4.1"Dumping" means:.1 any deliberate disposal into the sea of wastes or other matter from vessels, aircraft, platforms or other man-made structures at sea;”となっており、“other man-made structures at sea”は「その他の海洋人工構築物」と訳すのが妥当です。

海底トンネルが「海洋構築物」に該当するかどうかが問題ですが、これを否ということは相当に難しいでしょう。また、経産省の解釈のように、海洋構築物に船舶等で廃棄物を運搬しないなら該当しないとの解釈も、プラットフォームにパイプラインで廃棄物を送ることが認められていない以上、困難だと思います。

この手の判断は、行為に先立って、きちんと国際機関などの見解を仰ぐのが普通だと思うのですが、このあたりが一体どうなっているのか、さっぱりわからないところが、私には不安なところです。

スピード違反は、それが安全であるか否かにかかわらず違法なのですね。健康被害が生じるか否かという議論とは別に、法的問題の有無もチェックするのがあるべき姿のはず。後者が忘れ去られていることは、大きな問題であるように、私には思えます。

1 thoughts on “「科学性も正当性も」大事です

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