池田信夫氏の9/28付けアゴラ記事「企業は史上最高益なのに、なぜ賃金が上がらないのか」へのコメントです。
奇妙なのは、この時期になぜ海外収益が激増したのかということだ。そのヒントは、図2で2010年以降に貿易赤字が増えた現象にある。この時期は円高で企業の海外移転が進み、国内でつくっていた製品をアジアの海外法人で生産して半製品を輸入し、本社の利益に計上してお化粧した。
2010年以降貿易赤字が増えたのは、円高で企業の海外移転が進んだからですけど、実はそれ以前の2000年ごろから、ドル円が100円に近づきますと、日本人の給与は世界最高水準になっていたのですね。
だから、1ドル80円を切るような円高では、日本での生産は成り立たないのですが、これを海外に移転すると、プラス幅が大きい。生産拠点の海外移転で企業利益が増加するのは、もともと高すぎた人件費が圧縮されたという要因も大きいのでしょう。
そういう背景があるものだから、1ドルが100~120円程度に戻したところで、工場の国内回帰は生じない。もともと日本人のドルベース給与が高すぎたから。また、海外の拠点での生産が増えると、円安になったら利益の増えたはずの国内の輸出産業は減ってしまっているわけですから、円安のご利益はあまりないのですね。でも、円安が進めば工場が日本に戻ることは期待できる。それがない限り、日本の労働者は、救われないでしょう。
結局のところ、日本人の給与水準が、その働きに見合ったところまで戻すしかありません。高い給与が欲しければ、より高度な仕事をすること。技術を磨き、高度な製品なりビジネスを作り上げることなのですね。発展途上国も、競合のフィールドに上がってきた。彼らと戦って勝てない以上、我が国は衰退するしかありません。まあ、そういうレベルに為替水準が調整してくれるなら、これは、御の字というしかありません。
おかねくれ