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必要なのは日本企業の「強さ」

北尾吉孝氏の11/24付けアゴラ記事「グローバル化は日本会計基準の見直しから」へのコメントです。(追記あり 11/25)


日本の会計制度は、小泉竹中改革の頃にグローバルスタンダードに合わせる大変革がおこなわれ、時価会計制度もその時に導入されています。今日の日本の問題は、多くの企業・業界団体が保守的で、新しい産業分野に出て行くということをしない、我が国に投資機会が失われている、という問題でしょう。

1990年代の日本は、円高とバブル崩壊という二大ショックに襲われ、同時に発生した情報革命に背を向ける結果となりました。情報革命はホワイトカラーの生産性を数倍に高め、要員を削減することができるのですが、ただでさえ余剰人員が大量に発生したこの時期に、こんなことができるわけもない。

その後も我が国の業界は変化を嫌い、多くのあたらしい分野への進出に失敗する。一方では、円高基調で生産工場が海外逃避を続けており、国内産業は低下する。優秀な技術者、新卒者が海外や外資を目指す一方、国内企業には、キャッシュはあれど投資機会に恵まれない状況が続いているのですね。

そもそも、産業には成長曲線というものがあって、いつまでも同じことをやっていて利益が出るわけもない。常に、成長期の分野を取り込む努力をしなければ、企業は徐々に衰退する。情報革命という大変革の時代にこれに背を向けたら、衰退するのもあたり前であると言えるでしょう。

これは、我が国企業のPBRが低い理由なのですが、銀行に至っては悲惨なもので、集めたキャッシュを日銀にマイナス金利で預けている。このキャッシュは簿価を膨らませているけれど、ぜんぜん利益にはつながらない。ではどうすれば良いかといえば、結局のところ、国内に投資機会を増やすことしか解はなさそうです。まあ、円安がこれをやってくれる、とは思っているのですが。


11/25追記:時価評価に関しては上に書きました通りなのですが、我が国の会計基準には国際会計基準と異なる点が残っており、その代表的なものが「のれん」償却に関するものです。

「のれん」とは、企業の株式時価総額と会計上の実質資産(ブックバリュー)の差額で、他社を買収した際に問題となります。つまり、買収に要する資金は株式取得に要した金額である一方、買収後の帳簿に載る資産は会計上の資産であって、差額が生じてしまいます。これを「のれん」と呼びます。

国際会計基準では、のれんは資産と見なされ、毎年その価値が棄損していないことを確認する必要はありますが、ずっと帳簿に計上される。これは、株式を保有しているのと同じ扱いで、これはこれで合理的な考え方です。

一方、日本の会計基準では、のれんは20年以内の適当な期間で償却しなくてはいけない。自社の株価がブックバリューを上回っていた場合、その差額を会計帳簿に繰り入れたりしない以上、買収した企業の株価も帳簿に乗せる理由はないわけで、これも妥当な考え方といえる。でもこれは、国際会計基準とは異なる考え方になってしまうわけです。

こんな制度は国際基準に合わせてしまえばよいようにも思えますが、のれんの価値評価という難しい作業を毎年する必要があり、経理担当部署や会計事務所などがきちんと仕事をできないと、これは困難になる。そのあたりが、日本では無理という判断なのではないか、と私はひそかに思っているのですが、実態はどうなのでしょうね。いずれにせよ、この部分に違いがある。これが現状です。

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