岡本裕明氏の12/29付けアゴラ記事「日本で本格的なEV化は5年後ずれか?」へのコメントです。
新しい技術なり製品なりの今後を占う際には、表に現れた製品の優劣だけではなく、技術のトレンドや、経営学、政治的な背景なども考えておかなくてはいけません。
経営学的には、生産コストの低下は累積生産量によって定まるという「経験曲線効果」を意識する必要があります。EVがいずれ自動車のメジャーになるのなら、立ち上がり時期にシェアを確保して、累積生産台数で他を引き離すことが、先々の競争を考えると圧倒的に有利になります。
特にそれが政治的に推奨され、補助金など、社会的にも有利な扱いを受ける場合、その恩恵を最大限に受けるのが先行企業ということになります。ソーラーセルの場合、日本の補助金で大いに潤ったのが中国企業であったことは、残念な話でした。同じことをEVで繰り返すのは愚かなことであるように思えます。
EVといえば、中国や欧州で先行しているイメージもありますが、その基礎となる技術は我が国も先行している。リチウム電池の技術に多大な貢献をしたのはソニーなり旭化成ですし、EVのモータの主流となりましたネオジ系磁石で先行したのは当時の住友特殊金属でした。EV用インバーターでは我が国のデンソーが世界のトップシェアです。これは、HVで先行したという歴史もあったからなのですが、このような有利なポジションを無にしてしまうことは、日本にとりまして大きな損失ではないかと思います。
我が国の自動車産業は、多数の部品メーカによって支えられており、そのあるものにとってはEV化は死活的脅威なのですね。だから自動車メーカがEV化を嫌うことはわからないでもない。でも、我が国の自動車産業が衰退してしまったら、もっと大きな損失になる。せっかく築き上げた有利なポジションをこの先もキープするのが我が国にとってはベストの選択だと思うのですね。もちろん、世界が仮にEVの方向に向かった場合にも、そうしなくちゃいけない、ということです。
がんばれ水素