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円高指向も目先重視の朝三暮四

自由主義研究所の2/18付けアゴラ記事「『富裕税』を払うのは誰?お金持ち?貧乏人?」へのコメントです。


インドの労働者は、洗練された設備がなく、しばしば家畜で耕したり事実上手作業で収穫することを余儀なくされています。アメリカの労働者は、最新の付属品を備えた強力なトラクターを利用することができます。
両者の賃金に大きな差があるのは、最新鋭のトラクターを使えば、アメリカの労働者はインドの労働者が初歩的な道具で耕す面積の100倍もの面積を耕すことができるからです。

ここは大事なところですね。一般的に言って、先進国の人々が豊かな暮らしができるのは、産業が生産性の低い農業主体から生産性の高い工業主体に移行しているからなのですね。ところがわが国では国内の工場が海外に移動する「空洞化」が生じております。

Wikipediaの「空洞化」によれば、これは4回にわたって生じ、その原因は、(1) 1980年代後半、プラザ合意による円高、(2) 1990年代中頃の円高(その原因はバブル対策としての金融引き締め)、(3) 2000年代の新興国のインフラ拡充、(4) 2010年代の円高となっており、その原因のほとんどが【円高】なのですね。

円高は、ドル建てで見たGDPを増加させますし、給与も上がる。物価も上がるけど、給与は円建てで固定である一方、物価の内の輸入品部分は円ベースで低下しますので、国民生活は豊かになる。その一方、ドル建ての生産コストが上昇し、輸出産業は苦しくなる。これが円高に伴って空洞化が発生する理由なのですね。

そして、空洞化が進むと、GDPが低下し、国内の雇用が失われ、最終的には円安が進み、国民生活が苦しくなる。最初に楽をした分、あとで苦しむことになります。過去に種々の国で発生した経済危機の多くは、その過程のいずれかの部分にこのメカニズムを含んでいるのですね。「朝三暮四」の諺がありますが、ポピュリスト政治家に騙されるサル並みの国民が多い、ということなのでしょう。

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