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現実を直視するのは難しい

自由主義研究所の3/14付けアゴラ記事「『政府支出が経済を活性化させる』は本当か?」へのコメントです。


政府の財政出動により景気が良くなるという積極財政の考え方は、ケインズ主義そのものです。


それが正しいのであれば、政府支出が非常に多い日本で、経済成長があまり見られず、実質賃金が下がり続けているのはなぜなのでしょうか?

積極財政のお手本のようなニューディール政策に関しても、評価が分かれており、ケインズ主義が正しいかどうかについても異論があるところでしょう。しかし、国内の景気が低迷し、失業者が増えているときに、公共事業の拡大により景気回復を図るというのは、ある意味自然な、教科書的な対応ではあります。だけど、さして効果のない政策を30年もやり続けたのはやっぱり問題。バーシー海峡の愚が繰り返されのですね。

我が国の90年代以降の国債の大量発行と積極的な財政出動は、当時急速に進んだ円高による不況(円高不況)対策として行われたものです。この時代、200-250円/ドルだった為替相場は100-120円/ドルと、ほとんど2倍の円高になってしまったのですね。この結果、輸出産業は業績が悪化し、国内の産業が海外逃避する。輸出がだめだから内需拡大に舵を切ったのだけど、本当の問題は、ドル建ての給与が倍に上がってしまったことによるのですね。だから、輸出産業が成り立たない。

その為替水準の急速な変動による実質賃金の急上昇に目をつぶり、その後の「実質賃金が下がり続けているのはなぜなのでしょうか?」と疑問視するのはなぜでしょう。上がりすぎたから下がっている、単純な話ではないでしょうか。

さいしょからやるべき政策は、給与水準を下げること、あるいは円安誘導だったはず。この手の不人気政策、言うは易く行うは難し。岸田総理のごとく、厚い面の皮を持ち、どんな批判もカエルの面に小便と、聞き流せるだけの器量がなくてはできないのですね。さて、これを最後までやり通せますかどうか。見ものです。