岡本裕明氏の5/3付けアゴラ記事「為替介入と円安の行方:世論が『ヤバいぞ』と気がついたことは進歩だが」へのコメントです。
通貨危機は、経済的実力に不釣り合いな自国通貨高を、政策的に保とうと無理をするときに発生します。
なぜ通貨高を保とうと政府が考えるかといえば、一つには、物価高を抑制して国民の支持を得ようとするからで、つまりはポピュリズムのなせる業。もう一つは、ポンド危機時の英国や1970年代の米国のように、国家の威信にかけて自国通貨高を保とうとする。往々にして、自国の経済力の低下を政府は認めたがらないのですね。
いずれにしても、経済的実体を離れた無理な自国通貨高は、いつまでも維持することは困難であり、充分な資金を有する投機筋に狙われたら、敗北するリスクが極めて高い。このようなことは通貨当局が避けなくてはいけません。
植田日銀総裁は、学者ですから、過去に起こったさまざまな通貨危機にも十分な見識があるはずで、このあたりのことは十分に理解されているはずで、無茶なことはされないのではないかと思います。ただし、急激な為替の変動は、国際間取引に支障をきたすため、これを抑制する動きはされるでしょう。それが深みにはまり込んで、資金不足となって白旗を上げるような事態になることだけは避けなくてはいけません。
現在の日本の外貨準備は、多くが米国財務省証券で運用されており、すぐに円買いに使えないという問題があるとのことですが、このあたりは米国と事前に話を付けておけばよいだけのこと。証券を担保にドルの現金を融資してもらうなどの取り決めを事前にしておけばよいわけですね。多分そのくらいのことはしていると思うのですが、実のところがどうなっているかは、さすがにわかりません。
5/5追記:ダニエル・モス氏のブルームバーグ記事も、上とほぼ同一意見です。
がんばれ円安