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開戦同様:世論に負けて利上げ

中村仁氏の8/7付けアゴラ記事「株暴落はアベノミクスの清算と経済正常化への道」へのコメントです。


今回の株価の大変動は、歴史的にも特筆すべきものであり、この先も長きにわたって種々解析の対象となるでしょう。その時経済学者の言いそうなことは、「必要のない混乱」を招いたということではないかな。そしてその原因を求めるなら、それは太平洋戦争突入と同じ「世論に負けた」からとしか言いようがない。

たしかにここに至る過程で、物価が上昇し、実質賃金は低下を続けていた。以前に比べれば、生活は多少苦しくなっていたのですね。とはいえ、巷に失業者があふれるわけでもない、ウハウハの生活はできないにしても、生活が成り立たないというほどでもない。そして、企業業績は良好な結果となり、実質賃金も上向く兆候を示しておりました。

なぜそんなことが可能であったかといえば、円安が続いたため。1ドル150円を上回る為替水準が定着しつつあったのですが、これは、プラザ合意時点で適切な為替水準と考えられていたドル円の下限(これ以上の円安ドル高が適正という意味)であったのですね。しかし実際にはこれをはるかに超えた円高が進んでしまった。

40年前のこの大変化が、日本経済に大きなダメージを与え、最大の被害を受けた輸出産業が工場の海外移転により被害を低減した結果、他の国内産業や働き手や政府の税収に多大な害をもたらし、その対応として取られた円高不況対策の結果巨額の国債発行残高が積み上がっていった。これが失われた30年のメカニズムであったわけです。

これが、欧米を利するものであればまだしも、その結果巨大な利益を得たのが中国で、世界の不安定化を招いた。ならこれを修正するのが世界の利益であり、その最大の受益者は日本だったのですね。ただし、行き過ぎた円高のもう一人の受益者である日本の消費者にも、円安は多少の不利益をもたらす。だから、世論に迎合するメディア、政治家、評論家は円高にせよ、利上げせよという。この声に従った結果が今、というわけです。デジャヴがあるでしょ。

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