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日銀の債務超過問題と景気論議

池田信夫氏の8/24付けアゴラ記事「『日銀の債務超過』で空騒ぎする人は日銀の迷惑」へのコメントです。


日銀のバランスシートを巡る問題は、いろいろと複雑で、面白い議論でもあります。以下、私の理解を簡単に述べておきます。まず、日銀が買い入れた国債は、満期保有目的債券となっておれば時価評価する必要はなく、買い入れ価額が簿価となる。実際問題として、満期まで保有すれば額面で償還されるため、日銀にロスは発生しない。含み損に関しては考慮する必要はないのですね。


一方、日銀が国債を買い入れる資金は、日銀券発行により行っておりました。日銀券発行残高は、バランスシート上は債務的性格を持つのですが、無利息で返済期限もない債務ですから、さしあたり問題はない。問題があるとすると、市中に多すぎるキャッシュが出回ることでインフレが進み過ぎ、市中のキャッシュを回収する必要に迫られた場合、日銀だけではこれが困難になる恐れはあります。

ただ、現在の問題は、市中に供給されたキャッシュのほとんどは、日銀当座預金という形で日銀に戻っております。この意味するところは、日本国内の投資機会が少ないという現実で、さらに景気を刺激する必要がある。その一つの手法は金利の低下で、さしあたりはゼロに近い金利を保つしかありません。

国内の投資機会が減ってしまった原因は、一つには円高による産業の空洞化と、わが国固有の雇用制度の弊害による技術革新の停滞と考えられます。先ずは、これらに手当てして国内の景気を回復し、産業活動を活発化し、資金需要の増大に合わせて銀行が日銀当座預金を引き出して民間企業に対する融資に充てること。こうしたサイクルを回していくしかないように思います。日銀当座預金が減れば、金利を上げても問題は生じないのですね。

さまざまな理論は理論として尊重しなくてはいけませんけど、目の前で起こっている現象に対しては、それ相応の手を打っていかなくてはいけない。行き当たりばったりに見えたキシダノミクスも、やっていることはさほど間違ってはいなかったように、私には思われる次第です。日経平均史上最高値、なんて勲章もありますしね。

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