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苦境のインテルに欠けたもの

岡本裕明氏の9/6付けアゴラ記事「苦境のインテルとフォルクスワーゲン、何を間違えたか?」へのコメントです。


現在でも状況はたいして変わっておりませんが、将来のコンピュータはどうなるか、という議論が十数年前に交わされた時、三つの可能性が考えられていたのですね。一つは、多数のCPUを用いる「メニーコア」、もう一つがゲートアレイをプログラム可能にした「FPGA:フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ」、そして最後がグラフィック処理に用いられていた「GPU:グラフィック・プロセッサ・ユニット」を計算に転用する方式だったのですね。

スーパーコンピュータは多数のCPUを組合せて構成されていたことから、メニーコアは一つの本命と考えられていた。だけど、この演算器は80ビット浮動小数点数で、普通の演算には高精度すぎ、下位の桁の演算に無駄に電力とチップ面積を使っておりました。最大のパフォーマンスを得るには専用のLSIを起こせばよいのですが、これに似たことができるFPGAはメニーコアの次に出るかとの予想もありました。でも実際に出たのはGPUで、単精度浮動小数点数や半精度浮動小数点数を効率的に演算できるNVIDIAのチップがAI向けに一世を風靡したのですね。

インテルは2015年にFPGAの世界第二位アルテラを買収(第一位のザイリンクスは2023年にAMDが買収)してFPGAに乗り出したのですが、その後NVIDIAのGPUにお株を奪われる形で、パッとしない展開が続いております。

この問題を私なりに考えると、FPGAは加減算器を簡単に構成できるほか、専用の乗算器も持っているのですが、任意の数値型を設定できるなど自由度が高い半面、具体的な演算をしようとすると、恐ろしく手間がかかる。ゲートアレイの設計は専用のCADソフトを使って専門のエンジニアが行っているのですが、普通のコンピュータユーザにこれは難しいのですね。

結局のところ、FPGAがCPUやGPUにとって代わるためには、コンパイラなどの使用環境を充実させなくてはいけない。インテルのCPUだって、マイクロソフトあっての爆発的な売れ行きだったのですね。今なら、アップルやグーグルもこの手の力はありそうですが、インテル一社だけで何とかなるものではなさそうです。

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