岡本裕明氏の10/23付けアゴラ記事「2つのタイプの中小企業の社長さん:業種問わず経営できるというMBAの発想」へのコメントです。
私の想像ですが、後者の積極投資型の社長スタイルがポピュラーになったのは2000年代初頭にあったMBAブームが一つの背景ではないかと思います。当時20代後半、つまり今なら50代前半ぐらいの方です。MBAを一概に括るつもりはないのですが、MBAでは経営学的に突き詰めればどんな業種でも経営できるという学問的発想があり、MBAを取得したような方は万能型になりやすいと感じています。また事業を数字で判断する教育を受けているので数字が主体であり、それを読み込み、割り切ります。その結果、継続できるもの、できないものを仕分けし、ドライな経営が主体になるようです。
経営学と日本社会の関係は、少々ねじれたものがあります。1970年代の日本企業の大躍進の分析に基づいて、1980年代に入りますと、日本式経営が見直されるとともに、これまで重視されてきた数値化可能な要因以外の、感性的要素への関心が国際的に高まりました。つまり、クオリティや顧客満足度、ブランドイメージ、企業のバリュー(社会にとっての存在価値)などが重視されるようになったのですね。
ところが一方の日本では、金融危機が発生し、従来の取得価格を帳簿に乗せる会計方式から世界で一般的な時価会計へと切り替えが行われ、「グローバルスタンダード」がもてはやされた。この時、欧米流のMBA的センスを身に着ける重要性も認識されたのでしょう。
でもそこで重視されたのが70年代までの古い経営学にとどまってしまい、感性的要素の重視は徹底されなかった、ということではないかな? 数値目標の重視などを見ておりますと、そうとしか思えない。「ハウ・ツー経営学」の弊害とでも言いましょうか。その結果、従来の日本古来からの経営の良さと対立する形になったのでしょう。
数値化、言語化を重視する理性とは異なる、それ以前の感性的要素を重視する考え方は、世界の思想界の潮流でもあり、禅などの日本古来からの思想も高く評価されております。日本人には、自らのもつ文化の価値を見直すことも大事なことではないかと思います。
類似の主張を昔のコメントでも述べております。
万能