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内部留保は資本に組み込む手も

田中奏歌氏の11/9付けアゴラ記事「続・どなたか内部留保は何が悪いのか教えてください」へのコメントです。


私はこちらも読んでおりますので、ここで議論することは何の問題もありません。議論の前提として用語の確認ですが、「内部留保」とは、企業の利益処分の一つで、「配当」、「役員賞与」の他に「内部留保」がある、という意味です。そして、内部留保は「利益剰余金」の形で貸方の資本の部に置かれるわけですね。

①(②)については、会社の成長と株主の利益にあてるための対策であり、特に①は借金が少なければ返済の心配がないという意味でリスク対策でもあり、多少過剰であっても問題が生じるものではなく、「自己資本比率の向上」として否定されるものではないし、ROA(総資産利益率)は悪化はしない。ただしこれには、自己資本比率の向上は借金という経済活動を円滑にせず、かつROEの低下は株式投資意欲を阻害する、という意見があるかもしれない

①(②)(積極的な投資)の場合は、いつまでも利益剰余金に置いておかずに無償増資の形で資本金に組み入れるのが王道です。

利益剰余金を資本金に組み入れると、一株配当が同じであれば配当金の総額が増えますし、総額一定なら一株配当が減って見栄えが悪い。株式額面の1割配が一人前、などという考えもあったのですね。さらには、損失が発生した場合に「減資」という、経営者にとっては恥ずかしいことをせざるを得ない。ならば、利益剰余金のままにしておきたい、と考えるのも分からないではないのですが、これは経営者の失敗糊塗の手段をキープするという意味で、モラルハザードになるのですね。

我が国の企業経営者は、経営判断に際しておのれの利益を優先しがちなのですが、株式を上場している以上、こうした行為は許されない。ディシジョンメイクの権限はあっても、他人のお金を預かって経営している以上、企業全体の利益を優先しなくちゃいけない。この原則から外れると、海外ファンドには奇異な印象を与え、攻撃を招くことになる。そういうことだと思います。

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