コンテンツへスキップ

アルゼンチン通貨ドル化の疑問

白石和幸氏の12/26付けアゴラ記事「ハビエル・ミレイ大統領が描く、アルゼンチン再興の軌跡」へのコメントです。


なぜこのように高いインフレが続くのかというと、政府の歳出が歳入を常に大きく上回っているからである。そして財政の赤字分を紙幣を新たに刷って市場にばらまくことを繰り替えして来たからである。このやり方は正にインフレを招く典型的な例だとして経済のテキストになっている。それをアルゼンチン政府は長年繰り返して来たのである。

これは最悪のやり方ですね。まあ、教科書に載っているほどなのにそれをやってしまうのがどうかと思うけど。で、公務員を削減し、補助金を減額して財政赤字を減らす一方、規制を緩和して経済を再建するのは正しいやり方といえるでしょう。

しかし、通貨をドルにするというのは、インフレ抑制の特効薬ですから、緊急避難的には正しい政策であるかもしれませんけど、きわめてリスキーな政策でもあります。と言いますのは、アルゼンチンの輸出産業を破壊したのはこの結果生じた相対的な自国通貨高だったのですね。

1ペソを1ドルに固定する制度は1991年に導入した兌換法も同じでした。しかし、1997年のタイのバーツ危機に始まるアジア・ブラジル通貨危機の際に、周辺諸国の通貨が下落する一方で、アルゼンチン通貨はドルに固定されていたがゆえに通貨高となり、輸出産業が次々と崩壊してしまった。自国産業棄損の結果、国民は貧困化し、政府は補助金をばらまき公務員を増やすしかなくなる。それがこれまでのアルゼンチンの高インフレの原因でもありました。

今アルゼンチン通貨をドルに固定すれば、たしかにインフレは収まる。しかしこの先、アルゼンチン経済が米国経済に比較して悪化した場合に、国内産業は再び破壊される恐れがあります。来月登場するトランプ米政権がこの引き金を引きそうな悪い予感もするのですが、果たして大丈夫なものでしょうか。

1 thoughts on “アルゼンチン通貨ドル化の疑問

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です