篠田英朗氏の1/2付けアゴラ記事「高齢ミュージシャンの健在ぶりで考える日本の未来」へのコメントです。
社会問題を全体的・統計的に考えるときは、年齢別の人口構成は一つの重要なパラメータではあるのですが、個々の人を評論するとき、年齢をうんぬんすることは、人権という概念からはあまり妥当であるとは言えません。つまり、人を年齢で判断することは、人種、宗教、性別で判断するのと同じ範疇に属するのですね。
だから本来は、リタイアを年齢で切ることも問題がある。日本では定年制度は何ら問題視されていないのですが、世界の常識からはこれは問題と言わざるを得ない。米国などでは、その名も「年齢差別禁止法」などというものもあるのですが、他の先進諸国もおおむね同じ扱いです。https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/dl/s0720-6k.pdf
なぜ日本で定年制度を導入せざるを得ないかといえば、年寄りが高いポストに居座ってしまう「老害」などと呼ばれる弊害が生じるからなのでしょうが、これは、我が国が実力主義ではない、権威主義であるが故の弊害、つまり、ポストに権限が付随し、これに対する批判が許されないからなのですね。このようなありかたは、アジア諸国に多いのですが、組織の力を確実に削ぐ。我が国の長期停滞の一因でもあるのではないかと思います。
その点、ミュジシャンは(多くの場合)実力主義ですから、このあたりはうまく回るのですね。その他、スポーツなども同じなのだが、同じやり方が一般の社員にも適用する方向というのが、我が国の将来のあり方なのでしょう。
これはつまり、雇用の流動化ということで、単に金銭解雇を容易にするだけでなく、社員の側からも、自由に職を移れる、その際に不利な扱いを受けないような社会制度に移行するのではないかと思います。まあ、そうしてこそ、我が国の技術開発が促進され、経済も活性化するのではないかと思いますよ。
以下、追記しました。
ちょっと情報を追加しておきます。上で引用した資料(下にURLを再記)では、EU及び英国では定年が例外措置として認められるように読めますが、この部分は我が国とは相当に異なっております。https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/dl/s0720-6k.pdf
この部分は、きわめて複雑な議論がなされておりますが、まず、年齢によって人を差別することは、他の属性(人種、宗教、性別、思想等々)による差別と同様に禁止されてしかるべきというのが共通認識です。
その上で、定年退職に関しては、例外的に認めるという考え方もあったのですが、これを限定的に考える方向に動いている、ということですね。詳しくは、下記URLなどをご参照ください。https://www.jil.go.jp/.../2014/special/pdf/031-040.pdf
老化はしかし来るよ