池田信夫氏の1/9付けアゴラ記事「2%を超えるインフレが続いているのに日銀はなぜ金利を上げないのか?」へのコメントです。
今の日本のインフレはコストプッシュ型です。原材料やエネルギーの輸入価格上昇(円安や国際市場の影響)により、コストが増加した結果の物価上昇です。このタイプのインフレは一時的で、企業の負担が増加し、賃金の伸びが追いつかない場合、消費が冷え込むリスクがあります。
これは重要なポイントです。この点を押さえたら、次は、なぜコストが上がったかを、原因に遡及する形で問うことになります。つまり、「円安が輸入価格の上昇である」が「なぜコストが上がったか」の答えであれば、「なぜ円安になったか」を問わなくてはいけないのですね。
で、円安の理由ですけど、最大の原因は「我が国産業の国際競争力が低下した」という点に尽きるでしょう。この現れは、日本のGDPがこの30年間全然上がらないこと、この結果国内の賃金総額も上がらないことがあげられます。それでは「なぜ本邦産業の国際競争力が低下したか」が次の問いになるのですが、この理由は「行き過ぎた円高」であり、「アジア諸国(特に中国)の工業力増大」があるでしょう。そこまで行けば、有効な対策が見えてくる。つまり、過度の円高は阻止して、円を安価に保つことが、もっとも根源的な解決となります。
しかしそういたしますと、「コストプッシュインフレ」は収まらない。その結果、日本人の生活水準は低下する。しかしこれは、我が国の産業力が低下したのだからやむを得ないことであり、甘んじるしかない。生活水準を引き上げるためには、日本の産業の国際競争力を高めるしかない。これには、多少の給与ダウンはやむを得ないものとして受け入れる一方で、日本社会の効率化を進め、科学技術を振興して競争力のある産業を育てるしかない。
これを安易に、金利を上げて円高にシフトさせようなどと致しますと、日本の産業競争力を弱め、ますます事態を悪化させる。フリーランチなどどこにもない、問題解決には地道な努力が必要だということを、官も民も、心得なくてはいけません。
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