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あるべき金利政策とインフレ

中村仁氏の2/24付けアゴラ記事「民主主義を支える選挙のたびに民主主義が弱体化していく皮肉」へのコメントです。


インフレが常態化しつつあり、日銀の政策金利は上昇していく。金利が上がれば、国債の金利も上がる。25年度の国債費(償還費と利払い費)は28.2兆円で、これがどんどん増えていく。過去20年、利払い費は年7-8兆円だったのが、28年度には16兆円になる見通しです。そうなると、将来、他の歳出を削減しなければならなくなります。

これは確かに由々しき事態のように見えるのですが、「インフレの常態化」⇒「政策金利の上昇」は、自然現象ではないですよ。日銀がそのようにするだけの話です。インフレ対策としての金利引き上げが有効に働くのは、景気が過熱した結果としてインフレが進行する場合であって、金利を上げれば景気が冷えてインフレも収まるとのメカニズムを期待するが故なのですね。

ところがここにきてのインフレは、好景気故のインフレではない。一つは為替の円安進行です。こちらは金利を上げれば円高にシフトして輸入品価格が下落する、インフレを抑制する効果は確かにあるのですが、そもそも1ドル150円付近の為替水準は好ましいレベルなのですね。それ以上の円高が行き過ぎであったことは、1980年代後半の、日本がまだ絶好調であった時代ですら認識されておりました。行き過ぎた円高が放置された結果、日本のGDPは長期にわたって停滞したのですね。

もう一つの昨今のインフレは、異常気象故の食料品価格の高騰と、エネルギー資源価格上昇に基づく諸物価の高騰が影響しており、これらは金利を上げたからどうこうなるものでもない。この手のインフレ対策には、供給を増加することが効果的であり、野菜が不足するならお金をかけて耕地を増やす、諸物価の高騰には情報技術を活用するなどして生産を合理化(=コストダウン)する対応が効果的です。これにはむしろ、低金利の方が好ましいのですね。

「インフレ⇒金利引き上げ」は、常識的、教科書的な話なのですが、これが常に成り立つわけではない。そのあたりはよく考える必要があります。

1 thoughts on “あるべき金利政策とインフレ

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