中村仁氏の4/13付けアゴラ記事「トランプの情報戦(認知戦)に踊らされる日本メディア」へのコメントです。
外務省OBのインテリジェンス専門家・佐藤優氏が何日か前、「トランプは認知戦の天才だ」と指摘しているのを読みました。トランプ氏は明らかに乱暴、無謀であり、その人物を「認知戦の天才」と聞かされると、「なんなのそれ」と思います。「認知戦」とは、一般の人たちには聞きなれない用語です。
以前、制御技術の講演会で、防衛庁の方による対空ミサイルの制御について話を伺ったことがあります。ミサイルの制御系にはターゲットとなる航空機の運動を先読みする機能が備わっていると。このため、ミサイルに追われた航空機が生き残るチャンスを最大化しようと思えば、ランダムな運動をしなくてはいけない、というのですね。
この話、ノーコンピッチャーの球筋は読めない、という話と同じなのですが、上のトランプ氏の「認知戦の天才」も、単に「先を考えていない」というだけの話であるように思えてしまいます。結局のところ、思いついたことをやってみて、ランダムに生じる反応に対して別のことをやる、という連鎖なのではないでしょうか。これでは、何が起こるかを読むことは非常に難しいのですが、いくつかの法則性をそこに読み取ることはできるでしょう。
まず一つは、何かをすればリアクションが起こる。そのリアクションに対して何かをするという連鎖なので、ある種のフィードバック制御系がそこにあるのですが、やることが極端という特徴があり、制御系のゲインが高い。こういう制御系には振動現象が現れるのですが、現に激しい振動がそこに起こっている。その周期はおおむね2日というのが、トランプ制御系のダイナミズムです。
もう一つは、全体のエネルギーというか、マスバランスというか、大局的な経済法則の内で動いているということで、価値の創出と消費という枠内で、技術レベルで決まる生産性が異なる各部分が競合して生じる、経済の自己調整機能がそこにある。これに、政治的なパワーバランスが作用して非効率さが生じる。この混乱の中では、最後には効率性を手にしたものが勝つ。そういう動きになるのではないでしょうか。
認知症