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スペイン大停電と「人的問題」

白石和幸氏の5/2付けアゴラ記事「なぜスペインは電力を失ったのか:大停電の裏にあった3つの誤算」へのコメントです。


今回の大規模停電の背景には、スペインの電力の約70%を再生可能エネルギー(特に太陽光と風力)に依存しているという事情がある。再生可能エネルギーはコストが安価な反面、天候などの影響を受けやすく、安定した供給が難しい。一方で、原子力発電は採算が取れにくいため、電力会社は運転を控える傾向がある。

現在、原子力発電は全体の12%程度しか占めておらず、火力発電はわずか4%未満とされている。停電発生時には、原発3基が停止していた。再生可能エネルギーと他の発電方式のバランスを取らなければ、今回のように15ギガワットの電力がわずか5秒で失われるという事態が起こる。これは、スペイン全体の電力需要の約60%に相当する。

さらに問題なのは、再生エネルギーによって発電された電力を備蓄するシステムがスペインには存在しない点である。

電力の70%を太陽光と風力を主体とする再生可能エネルギーに依存していたというのは驚くべきことだと思います。「やればできる」ということですね。たしかに事故は起こりましたが、それまではちゃんと給電されていたわけで、あとは事故を起こさないようにできれば、人類は、自然エネルギー主体でもやっていける。これはすごいことだと思います。

今回の事故原因は、原発の稼働率が低いということよりは、調整容易な火力発電の比率が低すぎた可能性が高いのではないでしょうか。特に、電力備蓄システムがほとんどないならば、これは致命的ともなり得る。

いずれ確実に到来するはずの化石エネルギーの枯渇を考えれば、自然エネルギーを使うことは大いに結構なことなのだけど、出力が勝手に変動してしまうという問題は避けることができない。この問題に対しては、蓄電システムもきちんと準備しておくことが大事なはず。それは二次電池に限らず、水力(揚水を含む)発電や火力発電も含めてもよいのですが、いずれにせよ、能力的に問題のある人たちに任せておいてよい話ではありません。今回の失敗の原因は、その手の「人的問題」の要素も大だったのかもしれませんね。


コメントがついております。

佐竹 克彦

再エネ電源(インバータ)の比率が50%以上になると、雷のような多頻度事故で再エネ電源が一斉に脱落し、伴って火力や原子力のような基盤となる電源が脱落してブラックアウトするリスクは防げません。 【送配電網協議会】 https://www.tdgc.jp/information/docs/5bc445f2c046a78e881ec2d4dd13a619fb1285fe.pdf

ちなみに雷事故のバックアップとして機能する蓄電システム(20万円/kWh)を再エネ分電源分(将来50%,8000万kW)設置すると16兆円となり、現在の再エネ賦課金(3兆円/年)が5倍必要になります。


瀬尾 雄三

佐竹 克彦さん

> 再エネ電源(インバータ)の比率が50%以上になると、雷のような多頻度事故で再エネ電源が一斉に脱落し、伴って火力や原子力のような基盤となる電源が脱落してブラックアウトするリスクは防げません。

ご紹介されているレポートでも、モータージェネレータなどを導入すれば、このリスクは避けることができるとしておりますね。モータージェネレータは、古い技術で、コンピュータの瞬停対策などに用いられておりましたが、現在では半導体技術を用いたよりコンパクトで経済的なシステムが用いられております。

この手のシステムは、ニーズが増えれば技術も改善され、コストも低減する。いわゆる経験曲線効果というものがあります。この先も自然エネルギーという技術分野が意味を持つなら、我が国が率先して関連技術に取り組み、新しい事業分野でリーダー的立場を得ることが、業界の発展につながります。ソーラーセルの失敗を繰り返してはいけません。

蓄電に関しては、揚水発電が代表的なのですが、水力発電でダムに水をためているのも、火力発電でタンクに燃料を溜めているのも、エネルギーの蓄積という意味では同じです。さらに進めれば、余剰電力を水素などの形で燃料に変換して蓄積する技術も可能となるでしょう。

いずれ化石エネルギーは枯渇する方向で、核融合を含む原子力はフルキャパシティの連続運転が基本ですから、蓄電技術もものにしておかなくてはいけません。現状の技術を前提に考えることは、進歩を拒否する姿勢にほかならず、時代の変化を前にして米国自動車産業が衰退した原因でもあります。我が国のエネルギー政策では、同じ愚を繰り返さないようにしなくてはいけません。

1 thoughts on “スペイン大停電と「人的問題」

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