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電力の未来にインバータは必須

尾瀬原清冽氏の5/12付けアゴラ記事「イベリア半島大停電を読み解く:分散型電源時代の落とし穴」へのコメントです。


火力や水力発電は大型の回転機を使用しており、回転系の慣性が大きいため、系統周波数の変動にもある程度耐えることができます。一方、太陽光や風力発電は、インバーターを介して直流から交流に変換する仕組みのため、周波数変動に対する耐性が低く、不安定時に停止しやすいという特性があります。このことが、停電の連鎖拡大を招いた可能性があります。

この問題は、現状がそうなっているということはあるのでしょうけど、インバーターの出力波形はデジタル的に生成しているため、大型回転機器を使用した発電機と同等の特性をインバータに与えることも技術的には可能です。回転機器の慣性に相当するコンデンサや二次電池が必要になりますけど、短時間の特性を改善するだけであれば、小容量のもので対応できるでしょう。

インバータは、直流から交流を作る技術として、現在では主流と考えられております。そして、直流の利用は、ソーラーセルに限らず、二次電池を用いた電力貯蔵や燃料電池などでも小規模ながら行われております。また、海底送電や超電導送電などが一般化すれば、直流送電も広く行われるようになる。熱エネルギーや核融合で発生するプラズマのエネルギーを電磁波に変換してこれを直接直流電力に変換する技術も研究されております。インバータの技術は、将来の電力事業においても、重要な要素技術であり続けるでしょう。

回転機器の慣性の利用は、たしかに完成された安定度の高い技術ではあるのでしょうけど、アナログ的な技術であり、デジタル制御に基づくインバータに比べると、自由度が低く、発展の余地も小さい。インバータであれば、相互に通信を行い様々な最適化を行うといった方向もあり得るわけですね。

こうしたことを考えると、今日インバータの問題が明らかになったことは得難いチャンスでもあり、この問題を解決する技術を他に先駆けて開発することが、将来の電力技術で主導権を握る一つの方向であるように思われます。あまりソーラーセルを敵視しない、幅広い視野というのも大事ではないでしょうか。

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