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『預金から投資』を妨げるもの

森本紀行氏の6/3付けアゴラ記事「預金から資産形成のための資産形成へ」へのコメントです。


日本の現状において、経済の超成熟のもとで、個人部門の金融資産が預金に滞留し、法人部門の資金需要が伸びないために、経済全体として預金の構造的過剰に陥っている。この使途のない過剰な預金こそ、いわば血液の流れの滞った状況こそ、日本経済が直面する最大の難問であり、預金を媒介とした伝統的な金融の危機である。

わが国で資金が投資に向かわない理由は、我が国の産業構造が非効率的で、特に新規分野が育たない、という点にあります。つまり、資金の需要側の問題であって、供給側の問題ではないのですね。だから、無理に投資に向かわせたとしても、有利なリターンは得られない。政府の音頭に載せられた個人が大損するという道を歩むだけです。

わが国が急速に経済を拡大していた時は、資金は常に不足気味でした。こういう時も、個人資金の多くは預貯金に向かった。かつて麻生氏がいみじくも語ったように、昔は「株屋」は「不動産屋」と並んで信用できない商売人の代名詞みたいなものだったのですね。「千三屋」なんて言葉もありました。これ、千に三つしか本当のことを言わないという意味で、タレントのせんだみつおさんの芸名もここからとられたとも聞いております。

ところが昨今では、我が国には資金が余っている。余剰資金を大量に抱えた銀行は、日銀の当座預金にこれを置いている。そういう状況下で個人の資金を投資に向かわせたところで大した意味はないのですね。わが国の投資を活発にするためには、既存の産業には新しい技術を導入して高生産性、高効率化を図ること、そして新しい産業を積極的に起こすことにつきます。

幸い、我が国は情報革命へのキャッチアップに失敗し、情報技術の導入も遅れている。なぜそうなったかといえば、固定的な雇用環境故に、新しい技術を身に着けた若い技術者の活躍の場が限られている。ニーズがあって問題点も明らかなら、処方箋は誰でも思いつくでしょう。新技術に疎い経営陣に身を引いていただき、能力本位の人事制度をわが国に根付かせること。これにつきます。日本政府としてこれを進めるためには、まず、政府、官庁から実力主義に切り替えること。簡単な話であるように、私には思われる次第です。

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