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柏崎刈羽原発が動かせない理由

尾瀬原清冽氏の7/16付アゴラ記事「柏崎刈羽原発はなぜ動かないのか:再稼働を止める構造的要因」へのコメントです。


もちろん、テロ対策施設が本当に必要かどうかについて、私自身は疑問を感じるところもあります。しかし、現行のルールのもとでは、施設を完成させなければ再稼働は認められません。このような東電の消極的な姿勢に対して、柏崎市長が不満や不信を表明するのも当然のことです。

ここが最大の問題だと思います。柏崎刈羽原発のテロ対策などの不備にかかわる経緯は、下記URLによくまとまっているのですが、要は、2021年の1-3月にかけて次々とルールの逸脱が見つかってしまったことが、この原発がかくも長きにわたって動かせない、最大の原因といえるでしょう。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA22BR60S3A221C2000000/

このようなルール逸脱がなぜ生じるかといえば、現場の担当者が、上の引用部と同様、「テロ対策施設が本当に必要かどうかについて…疑問を感じ」たからでしょう。つまり、こんなことは、やる必要ないと、現場で勝手な判断をしてしまった。

普通の人が不必要と考えるリスク対応は、その人が関与している間に問題が発生する確率が無視できる程度に小さいことでしょう。あと10年務める予定の人が事故確率を1%以下にしたいと思えば、1000年に1度より十分に小さい事故確率は無視できる。だけど、原発に要求される事故確率は10万炉年に一度という極めて低い確率で、これを基準に各種のルールが定められている。個人の勝手な判断でルールを逸脱することは許されることではありません。

このような問題を避けるためには、単にルールを守れと厳命するだけでなく、信頼性工学に関する基礎的な知識を関係者全員が習得すること、そして、事故確率の目標と、このために取られている具体的手段に関する情報を関係者が共有することが肝要です。これは、トップダウンで取り組むべき課題であり、現場が勝手にやったことなどと言ってすまされる問題ではない。傍で見ておりますと、そこが抜けているように思われる次第です。

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