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トランプ関税失敗の理由は沢山

岡本裕明氏の7/22付けアゴラ記事「なぜアメリカの関税政策は失敗するのか?:関税対策で生まれた商品に競争力はない」へのコメントです。


個人的には労働生産性の国家間比較は数値の補正をしてもほとんど無意味だしアメリカの労働生産性は低くないというのを数字から見ても何も得られないと考えています。実態としては欧米の労働生産性はアジアのそれと比べると2倍以上の差異が出ているはずです。

一人当たりのGDPで比較すると、日本の$32,500に対して米国は$85,800と倍以上あるのですが、これは情報サービス業や金融業で稼いでいるわけで、自動車や鉄鋼などラストベルトは全然ダメということでしょう。さらに、米国に稼げる業種があるということは、優れた人材はそっちに行ってしまいますし、賃金レベルも上がってしまう。国内に強い業界がありますと、そうでない業界の足を引っ張ってしまいます。

だから、自動車に輸入関税を課す。これは、米国内で輸入車が不利になりますので、米国自動車メーカにはよさそうですが、同時に、鉄鋼、アルミ、銅にも高率の関税を課すと。これらは自動車を構成する原料ですから、米国の自動車生産コストは上がってしまいます。

もちろん、米国製の原料を使えばよいのですが、これまで輸入品が選ばれていたということは、総合的に見て輸入品が優れていたから。米国の自動車メーカにしてみれば、素材への関税はマイナス要因であることに変わりありません。

もう一つの問題は、政治的に保護された業界は、進歩が止まり国際競争力を失ってしまうということ。これは、我が国のその手の業界が、みな国際競争力で後れを取っていることからも理解できるでしょう。また、関税を課せば価格が上がる。インフレを招けば金利が上がり、これも国内産業の足を引っ張ってしまいます。政策立案に際しては、表面だけでなく、その波及効果もしっかりと把握しなくてはいけません。

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